魔物の街 68
「正人……」
サラが濡れた視線で島田を見つめる。いつもなら薄ら笑いを浮かべて黙りこんでいる島田の強気な姿勢に、要もカウラも黙って彼を見つめていた。
「島田准尉。これは上層部の決定だ。もう君達は上層部の信用を失っている」
「上の連中の言葉に従えって言うわけですか?またまた冗談言われちゃ困りますよ」
ライラの言葉を斬って捨てた島田は平然とランを差し置いてライラと向かい合う席に腰を下ろした。
「法術系研究施設への取り締まりは保安隊と法術特捜にのみ許された事項のはずですよ。一同盟加盟国の司令官の掌中に収めていい事件ではないはずですが?」
そう言って詰め寄る島田を黙ってライラは見つめていた。
「それに今回は多くの東和国の国民が被害にあっているわけだからその事項は無効のはず……」
「それは同盟加盟国一国の都合だ。我々の関知するところではない」
ライラは明らかにいらだっているように島田を見つめていた。島田はため息をつくと誠を見つめた。
「そう言えばコイツの護衛を頼んだときは同盟の上層部はだんまりでしたね」
そんな島田の言葉を聞くとようやく振り返って部下に指示をしていたライラが振り向いた。
「それは近藤中佐の決起が予想以上の早さだった為にこちらの準備が整わなかった事情がある」
「そんな言い訳聞きたいわけじゃないですよ。だったらなぜ今回動くんですか?隊長からの出動要請は前回もあったはずだ。それを今回は動いて前回は無視。何か上層部で……」
「黙りたまえ!」
島田の言葉にようやく反応したライラ。だがそれを見てこの捜査の責任者である茜が立ち上がった。少しばかり青い顔で黙っていた茜はようやく状況が頭の中で整理できたというように凛として立ち上がる。
「ライラお姉さま。同盟からの指示が何かは私は存じ上げませんわ。そちらの捜査はご自由にお続けください。ですが私達も捜査は続行します。たとえ同盟司法局が捜査停止を指示してきても私達は動かせていただきますわ」
茜は立ち上がるとそのまま指揮室を出た。
「アイツは見ていると心配だからな。アタシも従うつもりだ」
要の宣言にカウラ、アイシャはライラを一瞥して立ち上がる。茜とラーナもそそくさと立ち上がりライラに敬礼して出て行った。
「神前曹長。あなたはどうされるおつもりですか?」
腹を立てていてもおかしくない状況だがライラは朗らかな笑みを浮かべていた。
「僕もこの事件は最後までつき合わせてもらうつもりです!」
そう言い切る誠に満足げな表情でライラは頷く。そしてそれを後にして誠も指揮車を飛び出した。
「なんだよ、神前。アタシ等に付き合う必要なんて無いんだぜ」
出口で笑みを浮かべる要。カウラはすでに端末を開いて遼南軍の情勢を探っていた。
「遼南山岳レンジャー部隊。どれほどの実力か見せてもらえるのはありがたいな」
不敵に笑うカウラを見てアイシャは肩をすくめて誠を見つめていた。




