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魔物の街 52

「で、私達はどうすればいいんですか」 

 カウラの一声にサブマシンガンをポーチに入れる作業の手を休めてランが振り向く。

「所轄のお巡りさんが動いてくれないとなるとこれを使うしかねーな」 

 そう言って自分の足を叩くラン。当然彼女の足は床に届いていない。それを見て噴出しそうになる誠だが、どうにかそれは我慢できた。

「しかし広大な湾岸地区を二人で調べるなんて無理があるんじゃないですか?」 

 カウラの言葉に頷きながら誠もランを見つめる。

「組織の壊滅を目指すならそれは当然のそうなるわけだ。アタシもまったくその通りだと思うよ。だがよー、とりあえず実験施設の機能停止を目指すんなら別に人数はいらねーな。これまでは誰も口を出さないから摘発のリスクが低い状態で研究を続けられたわけだが、今度はアタシ等がそれを邪魔しに入る。さらに場合によっては同盟司法局の直接介入すら考えられる状況で同じペースでの研究をする度胸がこの組織の上層部にあるかどうかはかなり疑問だろ?」 

 そうランに言われてみれば確かにその通りだった。人権意識の高い地球諸国の後押しで法術に関する調査には何重もの規制の法律が制定され、その技術開発の管理は厳重なものになっていた。

「でもずいぶんと消極的な話じゃねえか。相手の顔色を見ながらの捜査って気に入らねえな」 

 コーヒーを飲み終えた要がつぶやく。

「しかたねーだろ。もし……と言うかほぼ確定状況だが同盟厚生局の偉い人が一枚かんでるかもしれないんだ。安城のところの非正規部隊を動かせば間違いなく厚生局の薬物捜査部が対抗処置として動くことになる」 

 そう言って頭を掻くラン。呆然と二人を見比べる誠。

「ああ、神前は知らないかも知れないが薬物捜査部と言うのは同盟厚生局の薬物対策本部の機動部隊のことだ。装備、練度、どちらも東和でも屈指のレベルだ。まあ評判はかなり悪いがな」 

 フォローのつもりのカウラの言葉に誠はさらに疑問を深める。

「分かりやすくいうと薬物捜査部ってのは薬物流通を手がけてるシンジケートに強制捜査を行うための部隊なんだ。全員が遼南レンジャーの資格持ちの猛者ばかりで構成されている部隊ということになってる。急襲作戦、要人略取、ストーキング技術。どれも東和軍のレンジャーや警察の機動部隊がうらやましがる装備と実績がある部隊だ」 

 要の口からレンジャー資格持ちと言う言葉を聞いた時点で誠もようやく話が飲み込めた。薬物流通に関しては東都戦争の頃には胡州や地球諸国が関与していたと言う噂もある。その非正規部隊とやりあってきた猛者、そしてレンジャー経験者を揃える事で生産地への奇襲をこなしてきた部隊。それが動き出せば状況が複雑になるのは間違いないことは理解できた。

「じゃあ……」 

「旗でも掲げて歩き回れば良いんじゃねえのか?『私達は法術の悪用に反対します!』とでも書いた旗持って厚生局の前をデモ行進したら悔い改めてくれるかもしれねえしな」 

「その冗談はもう先人がいるんだ。一昨日の朝刊を見とくといいぞ。まあとりあえずアタシ等は出るからな。今日行って貰う施設はオメー等の端末に送っといたから」

 そう言って立ち上がるラン。要も新聞をたたんで部屋の隅の書棚に投げ込むと立ち上がった。

「神前。早く食べろ」 

 カウラにせかされながら味噌汁を啜る誠を眺めながらランと要は食堂を後にしていった。

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