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魔物の街 14

「でも、百歩譲ってそれが遼州人の法術の力だとして、なんで今までばれなかったの?まあこの部屋を覗いて不死身っていえる存在があるのは分かったけど、こんな人間があっちこっち歩き回っているならいろいろと問題が出てくるはずでしょ?」 

 落ち着いたアイシャの声に誠も要も、そしてカウラも気がついた。

「情報統制ってわけでもねえよ。アタシも非正規部隊にいたころには噂はあったが実物がこういう風に囲われてるっていう話は聞いたことねえぞ」 

 要の言葉に誠も頷く。東和軍の士官候補生養成過程でも聞かなかった『仙』の存在。

「ぶっちゃけて言うとだな。まず数がすげー少ないんだ。数兆分の一。ほとんどいないと言っても過言ではねー割合だ」 

「じゃあ、何か?その数兆分の一がごろごろ東和に転がっているわけか?しかも、どうせこの化け物も湾岸地区でみつかったって落ちだろ?明らかに誰かの作為がある、そう茜が思っていなきゃアタシ等はここには連れてこられなかったんだろ?」 

 そう言って皮肉めいた笑顔で茜を見つめる要がいた。

「正解。お姉さま、さすがですわね。このかつて人間だった方は租界の元自治警察の警察官をされていた方ですの。その人が四ヶ月前に勤めていた警備会社の寮から消えて、先月大川掘の堤で発見されたときにはこうなっていた」

 茜の言葉に再び誠は鉛の壁の中の覗き穴に目をやった。

「これも僕のせいなんですか?」 

 足が震える、声も震えている。誠はそのまますがるような目つきで茜を見た。

「いつかは表に出る話だった、そう思いましょうよ、神前さん。力があってもそれを引き出す人がいなければ眠っていた。確かにそうですけど今となってはどこの政府、非政府の組織も十分に法術の運用を行うに足る情報を掴んでしまった。そのことは神前さんの力が表に出たときにわかっていたことですわ」 

 そう言って茜は誠の手に握られた剣を触る。

「そして、やはりこの剣に神前さんの力が注がれた。多分この中の方のわずかな理性もその剣で終わりがほしいと願っているはずですわ。だからそれで……」 

「力?確かに手が熱くなったのは事実ですけど」 

 誠はじっと手にしている剣を見る。地球で鍛えられた名刀『鳥毛一文字』。その名は渡されたときに保安隊隊長嵯峨惟基に知らされていた。

「法術は単に本人の能力だけで発動するものではありませんの。発動する場所、それを増幅するシステム、他にも触媒になるものがあればさらに効果的に発現しますわ」 

 そう言ってラーナの手にした端末のモニターを全員に見せる。

「叔父貴の腰の人斬り包丁か」 

 要の言うとおりそこには嵯峨の帯剣『長船兼光』が映っていた。そして切り替わった画面には茜が持ち歩く『伊勢村正』が映される。

「でもなんでだ?遼南の力なんだろ?法術は。それが地球の刀を触媒に……」 

「要さん」 

 文句を言おうとした要を茜が生暖かい視線で見つめている。

「地球人がこの星に入植を開始したころには、遼州の文明は衰退して鉄すら作ることが出来ない文明に退化してましたのよ。今でも信仰されている遼南精霊信仰では文明を悪と捉えていることはご存知ですわよね」 

 まるでなだめすかすように茜は丁寧に言葉を選んで話す。自然と要はうなづいていた。

「当然、法術の力がいかに危険かと言うことも私達遼州人の祖先は知っていて、それを使わない生き方を選んだと私は思いますの。その結果、力の有無は忘れられていくことになった。士官をなされているなら少し法術に関する書物をお読みになるべきですわね」 

 茜の皮肉に要はタレ目を引きつらせる。

「つまり誰かがこの馬鹿の活躍を耳にしてそれまでの基礎研究段階だった法術の発現に関する人体実験でも行っている。そう言いたい訳か」 

 カウラの言葉に茜は大きく頷いた。

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