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オキュパイド・アース ~占領下の地球~ 原案  作者: 振木岳人
黙示録の4騎士編
34/77

プロジェクト・ゴーホームの呪縛




ムナカタ・カオルと美田園恭香が、ちょうど自宅についた頃。


軌道爆雷戦コースに乗り、不審船に牙を剥こうとしている、

国連軌道宇宙軍のコンステレーション級1番艦「ジェミニ」。

そのジェミニのブリッジにおいて、ノースヒル艦長以下ブリッジ要員全てが、

どよめきと驚愕に包まれていた。


返信が、届いたのだ。




ノースヒル艦長「…これが、返信内容か?」




通信士「はい、間違いなくこれが全文です」




通信士から回されたデータを、自分の端末で確認し、そして愕然とする艦長。




ノースヒル艦長「副長!」




ガルーツォ少佐「はい!」




ノースヒル艦長は自分の端末を指差しながら、




ノースヒル艦長「読んでみてくれ、声に出して構わん」




ガルーツォ少佐「了解しました」




副艦長のガルーツォ少佐は、艦長の肩越しに端末を覗き込み、

そして、そのデータ内容を声に出して読み始める。




ガルーツォ少佐「火星自治政府所属、エルコンドル二世号艦長発、

国連軌道宇宙軍所属、フリゲート艦ジェミニに告げる。

当艦は【プロジェクト・ゴーホーム】に付帯する国家間協議を終え、火星自治領への帰途にある。

戦闘軌道を解除し、本艦の速やかなる帰投に協力されたし」




ノースヒル艦長「…」




ガルーツォ少佐「…」




沈黙が続くブリッジ。


慌てて臨検を受諾するどころか、理解しかねる理由を傘に、

戦闘軌道を解除せよと「命令」して来た不審船に、

艦長も副艦長も、唖然とするほかは無かったのだ。




ノースヒル艦長「それにしても、何だ?プロジェクト・ゴーホームとは」




ガルーツォ少佐「さあ…全くもって」




目頭を押さえ、思案にふける艦長。




艦長「交渉するフリをしながら、時間の引き延ばし工作をしているとも思えん」




ガルーツォ少佐「そうですね、だからと言って、奴らが我々に応戦するだけの戦力は無い」




ノースヒル艦長「と、言う事は連中…。真面目に返信して来たのか?こんな馬鹿馬鹿しい内容を」




ガルーツォ少佐「艦長、まだタイムリミットの2時間に達していません。

再度通告して、連中の真意を探ってみては?」




副艦長の提案に頷く艦長。

しかし次の瞬間、通信士の報告で事態は一変した。




通信士「指向性通信を受信、艦隊司令部発!暗号解析開始しました」




ノースヒル艦長「うん?」




ガルーツォ少佐「艦隊司令部から?」




通信士「艦隊司令部発とは別に、2件の通信を受信!暗号フィルタ無しの平通信です!」




ノースヒル艦長「全てこちらに回せ!」




ガルーツォ少佐「何だ?何が一体、どうなっている?」




イライラを隠さない副艦長、それとは対照的に、完全に沈黙してしまった艦長。

何故艦長が沈黙したかと言えばもちろん、異常なタイミングで唐突に入電して来た、3件の通信が理由である。




ノースヒル艦長「…副艦長、読んでみたまえ」




再び副艦長に端末を覗き込ませる艦長。

先ほどとは違い、副艦長の声のトーンは低く、そして声量はほとんど無かった。




ガルーツォ少佐「国連軌道宇宙軍艦隊司令部発、哨戒艦隊ジェミニへ。

交差軌道上に存在する、火星自治政府の所属船は不審船にあらず。

速やかに戦闘体制を解除し、往還軌道へ復帰せよ」




次に副艦長が目にしたのは、平通信で送られて来た、2件の通信の内のひとつ。

火星自治政府から送られて来たメッセージだ。




ガルーツォ少佐「…火星自治政府、外交部次席政務官発…。エルコンドル二世号は、

プロジェクト・ゴーホームの秘匿会議に出席した、当方の要人が搭乗している。

如何なる理由を持ってしても、攻撃は避けられたし」




艦長「…また、プロジェクト・ゴーホームだ…」




ガルーツォ少佐「最後の一件。国連軌道宇宙軍統合幕僚本部長及び、国連月宇宙軍軍政部長連名…!

【優先事項1】発令、哨戒艦隊は武器管制を速やかに凍結、通常往還軌道に復帰せよ」




瞳の色は陰惨に満ち、渋い表情で端末を睨み付けたままの艦隊。




ガルーツォ少佐「国連軌道宇宙軍側は言及してませんが…これじゃあ」




ノースヒル艦長「そう言う事だ、このプロジェクト・ゴーホームと言う訳のわからん作戦が、

実質…地球圏と火星圏の国家レベルで、存在していると言う事だ」




ガルーツォ少佐「一体…内容は?」




ノースヒル艦長「そんなものは知らん。ただ、ただ一つ言える事は、

プロジェクト・ゴーホームとお題目を唱えれば、無茶も押し通せると言う事だ…クソッ!!!」






ジェミニ以下、哨戒艦隊は、「プロジェクト・ゴーホーム」と言う名前の呪縛にかかったまま、


静かに、…静かに


武装状況を解除し、母港への帰途についた。





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