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ちょっと視点変更が多いです
(;´д`)
砂漠のど真ん中に突如として現れる石造りの荘厳な建造物と重厚で一際神々しい大神殿。
それらが建てられたそこはローウェン教が聖地ペンドラゴン。
ローウェン教の聖地とされ、毎年多くの信徒が訪れる事でも有名な土地である。
しかし、そんな聖地は今人の姿がほとんどなく、またそこかしこに魔法の術式が刻み込まれかつての威厳に満ちた姿を失い魔都とでも言うべき存在に成り果てていた。
「始まったわね」
「おい、そんなの見てないでこっちを手伝ってくれ」
聖地には今、聖地を改変した張本人であるレンヤとマリーの姿があった。
「嫌よ。今始まったばかりで良いところなんだから」
大神殿の一室ではマリーが遠見の魔導具でカズヤと和也の戦いを眺め、レンヤは忙しなく部屋の中を動き回り魔法の術式に魔力を流し込んでいた。
「あら、もう押されだしたわね」
使用する武器の性能の差はあれど神の手によって幾千万の同じ戦闘を繰り返し、それ故に未来予測も出来る和也の攻勢にカズヤは押され、劣勢を強いられていた。
「はぁ〜おいしそう……」
和也の放つ弾丸がカズヤの皮膚にかすり傷をつけ、血が滲むのを見て幸悦とした表情でマリーはごくりとヨダレを飲み込む。
「……ああなったらもう役には立たんな。はぁ、1人でやるか」
レンヤはそう言うと頭をガシガシと掻きながら部屋を後にし、大神殿の神の間と呼ばれる特別な部屋に向かった。
「皆ご苦労。ではこれより術式を起動する」
そして神の間に入ったレンヤはそこにいた大神殿に仕える神官達に声を掛けると、神の間の中心にある神の座に――誰も座る事を許されていないそこにおもむろに腰を下ろした。
しかし誰もその事については異を唱える事無く、それどころかレンヤが座るべきと言わんばかりの態度であった。
「総員掛かれ」
レンヤの号令と共に神官達が魔法の術式に魔力を流し込む。
「術式起動」
「魔力量80、90、95、96、97、98、99、100パーセント」
「レンヤ様」
「よし、魔導兵器『ノアの方舟』起動!!」
神官に促されたレンヤが最後に膨大な魔力を術式に流し込むと、途端に地響きが辺りを襲った。
「起動成功だな」
その地響きを聞きながらレンヤが窓の外を眺めると砂漠のど真ん中にあったはずの聖地が新緑に覆われ、更には聖地全体が空中へと浮かび上がっていた。
「おぉ!!」
「成功だ!!」
「これぞ神の御業!!」
その光景を見て歓声を上げる神官達。
「さてと。これで俺様の野望の第一歩――聖地の復活は成し遂げたな。まぁ、人一倍聖地の復活に拘っていた皇帝には悪い事をしたが……何はともあれ、いざ行かん新大陸!!」
レンヤは人身御供として帝都の主殿に置き去りにしてきた皇帝の事を思い出しながら黒い笑みを浮かべてそう気勢を上げるのであった。
一方その頃。
かつてはエルザス魔法帝国の政に使用されていた玉座の間。
幾億万の人間の運命を決してきたその玉座の間は今は2人の男の決闘の場として銃弾の飛び交う戦場と化していた。
「俺は生きていてはいけないんだ!!どうして理解しない!!死ねば千歳達が助かるんだぞ!!」
「例え自分だろうと敵の話なんか信じるかよ!!それにこんな所で死んでたまるか!!」
千歳達の為に死ねという和也に対し、千歳達の為だからこそ生きる道を選んだカズヤの戦いは終始和也が優勢であった。
クソ、やることなすこと全部先読みされる。どうすりゃ勝てる?
玉座の間の柱の影に隠れながらFN Five-seveNとコルトガバメントのマガジンを交換しつつカズヤはどうすれば和也に勝てるのかと思案していた。
「ここでの決着は2つだけ。俺がお前を殺すか、俺がお前に殺されるか。さぁ、今回はどっちかな」
「っ!?」
隠れていた柱の影にダイナマイトを投げ込まれたカズヤは慌てて柱の影から飛び出す。
「そこ!!」
その瞬間、和也が握っていたピースメーカー――M1873回転式拳銃の弾丸を2発カズヤの胸に叩き込む。
「ぐっ!?」
それを着込んでいた防弾チョッキで防いだものの着弾の衝撃で息が詰まってしまい回避行動に齟齬が発生し体勢を崩したカズヤはダイナマイトの爆発に巻き込まれ、数メートル吹き飛ばされる事となった。
「これでお仕舞いだ!!」
体勢を崩し蹲って咳き込むカズヤに和也が放った弾丸が跳弾しつつ迫る。
どこの山猫部隊の隊長だよ!?
「まだだ!!」
跳弾しつつ四方八方から迫っていた弾丸を魔力障壁の発生装置で防ぐカズヤ。
「だったら!!」
だが、魔力障壁で弾丸を防いだために完全に動きを止めてしまったカズヤに対しピースメーカーを放り投げ日本刀を召喚した和也が斬りかかる。
それに対しカズヤはFive-seveNとガバメントの2丁を乱射し接近を阻むが全弾が避けられるか弾かれるかして接近を阻む事が出来なかった。
そのため自身も軍刀を咄嗟に召喚し振り下ろされた刃を防ぐ事となった。
「死ね、死ねッ、死ねぇッ!!」
「クソッ、ッ!?」
しかし、和也が繰り出す連撃にカズヤは耐えきる事が出来ず、握っていた軍刀を弾き飛ばされてしまう。
慌てて軍刀をもう一度召喚しようとするカズヤだが、それよりも早く和也が動いた。
「これでお仕舞いだ」
「不味いッ!?」
日本刀を振りかぶった和也のその声の直後、白銀の刃が“かずや”の肉体を貫いた。