ほんとにご案内
「 いやいや、おれはラフィーとちがって、ラーラになんの『ひとこと』もないよ。ほら、ふたりともさっきガットにいわれただろ?こんなとこからもめるのよそううよ。 あ、そういえば、 ―― アイツは?おれと並んで吐いてたはずだけど・・・」
リミザが、きゅうになにか思い出したようにからだのあちこちをたたきはじめる。
「ああ、わたしの『聖書』と《ヒモ付け》してあるので、海におちても回収できてしまいました」
ラフィーがつまらなさそうにいうのに、リミザは「よかったー」と大きくいきをつく。
「やっぱ、ラフィーにまかせて正解だったよ。 ほんとはもう、アイツのこと、かわいくてなってきてるんだろ?」
「アレが?いいえ、まったく」
期待を込めた問いに、無感情なこたえがかえる。
「はあーい、《勇者一行》さまー」旗をもつ女がいつのまにか先に進んでいた森の中から、よく通る声をひびかせた。
「もお、いいですかー?先にいきますよー」
旗をふって集合をかける。
よばれた《勇者一行》は、まとまりもなく、だらだらとした足取りで振られている旗へとむかう。
ふみこんだ森は、すぐに白い砂浜から土へと変わり、シダ類や、さきほど島ネズミがゆらせてみせた、いやに葉が大きな植物などが腰の高さほどにしげり、道らしいものはない。木々は細いが上へ上へとのび、はるか頭上で枝や蔦をからませあい、それほど密集して生えているわけでもないのに、熱い日差しは下までとどかない。
旗をもつ女は道もないのに、わかっているように進んでゆく。
「思ってたほど、湿気がねえな」
ガットがあたりにしげる植物をにらむようにして感想をくちにする。
「はい。《湿った熱い土地》とはちがいますからねー。島にいる動物もちがいますしー、だいいち島の森には魔物はほとんどいませんよー」
「え?ほんと?」
「たしかに、いまんとこ気配はしねえが」
「ここ海域から独特だもんねえ」
「たしかに、近づくにつれてはっきり感じました」
口々にしゃべりだした《勇者一行》へ旗をもつ女がきゅうにふりかえり、立ち止まる。
なにか言うのかとおもったが、なにもいわずにただ微笑んだ。
あらためてみると、こんなに陽射しがつよい島なのに、女の肌はすけるように白い。
その白い両腕を二の腕までがさらされほど高くあげ、頭の上で手をあわせると《勇者一行》の顔をみた。
「 それではー、ほんとにー、島のなかへ、ごあんなぁーい 」
パンっ
両手をたたき合わせる音がひびき、耳がつまるような感覚とともに、
――― 森がゆがんだ。
「っな、なんだ!?」
「ちょっ、あんた魔法族?」
「まさか、こんな術式みたこともっ、」
「 ・・・また、吐きそう・・・ 」
《勇者一行》のどれがだれともわからない声がかさなり、島ネズミが葉っぱの影から顔をつきだし、あたりの匂いをたしかめるよう鼻をうごかしたときには、 もう、森に人間はいなかった。




