第9話 女 2
その物語を知ったのは偶然だった。
病が癒えてベッドから自由になった私は、薬を調達してくれた命の恩人である商人とともに町を転々とし、やがて王都までやってきた。
商人は不勉強な私に、いろいろな事を教えてくれた。
そして、懇意にしているというたくさんの人たちにも紹介してくれた。
王都では、裕福な男爵令息を紹介された。
例に漏れず私に夢中になった男爵令息は、私をいろいろな場所へ連れて行った。
その中でも一番気にいったのは、劇場だった。
美しい衣装に、情熱的な歌。
見事な舞台装置も、そこに集まる素晴らしい人々さえも、私を否応なく刺激した。
何よりも、その舞台で演じられた物語は、私の心を虜にした。
一人の恵まれない少女が、素敵な男性に見初められ、誰より高い地位まで上り詰める。
なんて素敵な物語だろうと、何度も何度も足を運んだ。
そこで見つけた一人の男性。
見るからに高貴なその人の事を男爵令息に尋ねると彼はこの国の王子様の一人だという。
私と同じ年で、男爵令息と同じ学園に通っているのだそうだ。
なんという偶然なんだろう!
決して会う事のないような高貴な存在に、誰からも愛されているのに不幸だった私。
まるで、目の前で繰り広げられている物語のようではないか。
私はすぐにお願いした。
だって、願えばなんだって叶うのだから。
私は学園の最終学年へと編入し、王子様を目指した。
王子様の隣には、婚約者だという美しい侯爵令嬢がいた。
王子が侯爵令嬢をどう思っているのか、分からないわけではなかった。
侯爵令嬢の気持ちも、手に取るように分かった。
だけど、私は神様から選ばれた女だ。
微笑み、そっと手に触れ、優しい言葉をかけ、最後に涙を見せれば、物語は私の思うように進んでいった。
そうして私は、すべてを手に入れた。




