第5話 幕間 1
この国には王子が三人いる。
一番年上の第一王子は、第二妃の。
その一歳年下の第二王子は、第三妃の。
そしてさらに一歳年下の第三王子が、正妃の子だ。
同じような年齢のため、まだ誰が王太子になるかは決まっていない。
正妃の子である第三王子が王太子にふさわしい。
この国の重鎮たちは、そう口をそろえる。
確かに、容姿と、才能だけなら、間違いがない。
だが少し後ろ盾が足りなかった。
正妃がこの国に嫁入りした時は、まだ正妃の母国は栄華を誇っていた。
それに陰りが出たのは、正妃に子が出来ず、側室として第二妃と第三妃が選ばれたころだった。
正妃の母国で原因不明の病が蔓延し、王族の殆どが死んでしまったのだ。
国母にもなれず、大きな後ろ盾もなくした正妃がようやく子を成した時には、母国は我が国によって手を入れられた後だった。
それでも国王は正妃を愛していた。
第二妃、第三妃を蔑ろにはしなかったが、心を預けていたのは正妃だった。
愛する正妃を守るため、国王はこの国の筆頭侯爵家の一人娘を第三王子の婚約者とし、後ろ盾になるよう求めた。
侯爵は何度も断ったが、友人でもあった王の願いにしぶしぶうなずいた。
ただ、結婚する二人がお互いに望まぬようなら婚約は解消することが出来るよう、二人が納得して解消するならば侯爵家は王子の後ろ盾となると言い添えて。
運よく二人の相性は良かった。
二人は、半年ほど生まれ月は離れているが、学年は同じだった。
お互いを大切にする様子も見られ、未来は安泰だと思われた。
あと一年、学園を卒業すれば、二人は結婚するはずだった。
あと少し、もう少し。
第二妃も第三妃も、学園で正妃の後輩で、正妃を姉と慕い、正妃のために第二妃、第三妃を引き受けた。
もし正妃にこのまま王子が生まれなければ……そのためだけの嫁入りだった。
二人が一人ずつ男子を生んだことで二人の役目は終わり、正妃に王子が生まれた時点で彼女たちは生家へ戻ることを決めていた。
上二人の王子も、第三王子の結婚と共に、継承権を放棄し婚約者の家に婿入りすることになっていたのだ。
そうして、皆が幸せになる筈だった。
幸せになる筈だったのに、妙な噂が聞こえてきたのはその年の半分が過ぎたころだった。
一人の女学生と第三王子が懇意にしている、と。
第三王子は友人の一人であると言い、婚約者である侯爵令嬢に尋ねれば、友人だとしか聞いてないと言うばかり。
件の女は確かに誰とも深い付き合いはしていない。
学園の男子を周囲に侍らせて、穏やかに話しているだけ。
問題があるとすれば、その男子達すべてに婚約者がいて、みな婚約者を蔑ろにしている事だった。
しかしそれは悪ではなかった。
身を持ち崩すほどに贈り物をしているわけでもなく、学外でパーティーへ連れ出す事もない。
学園の一角で女一人に男が群がり話しているだけなのだ。
決定的に排除すべき事由がなく、手をこまねく間に、噂は広がり手をつけられなくなっていた。
そして、卒業パーティーの日、この国最大の悲劇は起こった。
第三王子が、侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡したのだ。




