第31話 彼女のその後 2
「それで? それが私と何の関係が?」
私はよく分からなくて、やっぱり首を傾げた。
その神が世界を失って、それが私に何の関係があるのだろう。
「こんなに詳しく話しても気が付かないなんて、君は思ったより察しが悪いんだな」
呆れたような態度に、しばらく忘れていたいら立ちを感じて思わずにらみつける。
あ、そうだこの人神様だったって思ったけれど、仕方がない。
「……君の本質はそれか……ずいぶん長い間心を抑えていたんだな。まあ……それも俺のせいだな」
男はそうがっくりとうなだれ、それから大きく息を吐き、意を決したように顔を上げた。
「簡単に話せば、俺が弱ってそのまま消えるはずだった隣の世界にちょっかいをかけたせいで、隣の世界の神は間違った方法で世界の延命をした。そしてそこで生まれた唯一残った魂と喧嘩をした」
「喧嘩?」
「そう……いや、喧嘩にもならなかったかもしれない。ただ感情をぶつけあった……って感じだな」
「神様と魂が?」
神様に文句を言うなんて……と思ったけれど、自分ももう神を信じていない事を思い出して、顔をしかめた。
男は私の気持ちを読んだのか気まずそうに笑う。
「その神の世界には、神の概念はあったが、崇拝する習慣はなかったようなんだ。神は自分たちの世界を創ったものではあったが、いずれ越えるものであり、壊すものだった」
「超える? 壊す?」
「世界は、その世界を作った神の思考と言うか、嗜好と言うか、本性と言うか、まあ生まれる前から持っている気性や気質が基軸になる。優しい神もいれば、厳しい神や可笑しな神、優柔不断な奴に愛ばかりの神もいる」
神様の生まれる前があるというのが想像できない。
しこうにほんしょうは、どんな意味を当てはめればいいのだろう。
「隣の世界の神が創った世界の本質は、欲望だった。奴は世界を創り、神を超えるという希望を与えて、それを奪うことで奴は自分の何かを満たしていたんだろう。
だから奴の世界は、他人が持っているものすべて、自分以外の何もかもを求めていた。もっと、もっと、もっとと、自分の欲望を満たすため、愛しているものさえ犠牲にする世界になった。
そんな神が急にそうじゃないものを求めてきたんだ。奪うばかりで与えられたことのない魂が理解できないのも無理はないだろう? 理解できなくて魂は癇癪を起こした。
奴の方は良かれと思って与えたのに、拒絶されて混乱して力のままにその魂を追い詰めた。
魂はその力に反発して、弱っていて隙があった世界を壊して逃げ出したんだ。
たまたま隣にあった世界に」
ここまで話せばわかるだろう、という意味ありげな視線にさらに苛ついたが言いたいことは理解した。
もしかして……もしかしなくとも。
「その魂が、あの女?」
自分でもびっくりするくらい低い声が出た。




