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ぼくたちのマヨヒガ  作者: 唖鳴蝉
第三部 五年生 二学期
93/118

第二十四章 ぼくらが廃村に招かれた話 7.廃村探検~収蔵品補修~

 ~Side 優樹~


 まさか(さか)(ばしら)が、この辺りの電柱をみんな引き連れて参加してくれる――なんて思ってもみなかったから、予想外のやっちゃった案件に少し引いてたけど……()(りん)の言うとおり、ぼくたちが疑われる心配はほぼないんだし、マヨヒガの建設にとってプラスになるのは間違いないしね。凹むのはやめにした。物事は何でも前向きに考えなきゃね、うん。


 気を取り直したぼくたちは、足の向くままに廃屋を訪れて、何か取り込めそうなものはないかと探してたんだけど……


「……()(りん)ちゃん、ほら、あれ」

「大きな(かめ)ねぇ。割れちゃってるけど。植木鉢?」

「じゃなくて、()(ばち)みたいだね」

()(ばち)? あれが? ……一メートルぐらいありそうよ? 差し渡し」

「うん。大家族用だったんだろうね。割れてるから捨てていかれたみたい」

「……取り込むつもり? 割れてるけど……あ、素材?」

「ううん。……あのね……【収蔵品補修】ってスキルが生えたみたい。……【取り込み】のオプション扱いなのかな?」

「はぁっ!?」


 うん、()(りん)は驚いてるけど……正直、ぼくも同じなんだよね。



《対象物の品質は以下の通りです。

 【火鉢】 品質:下 貢献度:小 状態:破損 補修:可能(易)

 マヨヒガの備品もしくは収蔵品として取り込みますか? はい/いいえ》



 まさか、壊れたものを取り込んでから直す……なんて事ができるなんてね。

 収蔵物をどこから調達するか悩んでたけど、壊れたものを補修できるんなら、難度は一気に下がるよね。エコだよエコ。


「壊れてるのを直したら、品質とかも変わるのかしら?」

「……確かめておいた方が良いよね」


 それが確認できるまでは、手当たり次第に取り込むのはやめた方がいいかな。格の低い収蔵品ばかり集めても、役立たずの場所ふさぎって事になりそうだし。……キャパとかあったらまずいよね。


「直したものを売ったりするのは……難しいかしら?」

()(りん)ちゃん……小学生のうちから転バイヤーの道に踏み込むのは、どうかって思うんだけど」

「あら、でも、確かめるだけは確かめておいた方が良いんじゃない? 売り物になるレベルで補修できるのかどうかぐらいは」

「……どうやってそれを確かめるつもりなのか、ぼくとしてはそっちの方が気になるんだけど……」

「フリマか何かでいいんじゃない? こっそりまぎれ込ませておけば」


 ……結構考えてるんだな。


「だったら、何か使えそうなものを探してみようか」


 気合いも新たに見まわりを再開したんだけど……


「どうしたのよ? (ゆう)()

「うん……あそこ、()(しげ)った草に隠されてるけど……わかる?」

「わかる――って……あ、石?」

「うん。(くつ)()ぎ石ってやつだと思う」


 縁側から裏庭に降りるところに、大きな石が置いてあった。あれだけ大きな石は、ちょっと見つけるのも難しそうだしね。外構えになるみたいだし、ここは取り込む一手だろう。

 取り込んだ跡は()(りん)の魔法で消してもらえば、ほら、最初からそんなものはなかったみたいだよね。


 そんな感じにあちこち見てまわって、石臼(いしうす)とか(きね)とか錆びた(くわ)の先っぽとかは手に入ったんだけど――


「……()(りん)ちゃん……一応確認しておくけど……(まよ)()のトイレがどんなだったか憶えてる?」

「……いきなり何よ? 憶えてない……って言うか、見てないと思うけど?」

「うん……そうだよね……」

(ゆう)()……何が言いたいのよ?」

「うん……あのさ()(りん)ちゃん……便器とか、取り込んどく?」

「……はぁっ!?」


 いや……信じられないって顔してるけど……大事な事だと思うんだよね。建築中のマヨヒガのトイレがどうなるのかわからないけど、古式ゆかしいボットン便所の可能性が高いと思うし。だとしたら――水洗便器なんて、他の場所では手に入らないよ? まさかぼくらが買いに行くわけにもいかないし。


「――イ・ヤ・よ! 誰が使ったかわからない中古の便器なんて、絶対にイヤ!」

「だったらトイレは……」

「外で……いえ、そういう意味じゃなくって……こっちの世界で(・・・・・・・)済ませておけばいいわ」

「うん……()(りん)ちゃんがそれでいいなら……」


 ――これ以上この問題を掘り下げない方が良いと思ったから、ぼくはスマートにこの問題をスルーして、そのまま廃屋を後にした。

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