第二十四章 ぼくらが廃村に招かれた話 6.廃村探検~逆柱~
~Side 真凜~
優樹の提案で廃村の中を見てまわる事にしたけど……潰れた家とかがあちこちにあるわね。素材として取り込めるんじゃないのかしら?
「ダメだよ真凛ちゃん。今や廃墟や廃村はブームなんだよ? 多いとは言わないまでも、見に来る物好きも結構いるみたいだし、そういう人たちってほぼ例外なく写真をブログとかにアップしてるから、下手をすると怪談騒ぎになっちゃうよ?」
「それはまずいわね……」
「ま、気付かれない程度になら大丈夫かもしれないけどね」
――とか言ってるくせに、瓦とか木材とかをチマチマ取り込んでいく辺り、優樹も中々したたかよね。
そんな優樹が立ち止まったのは……
「……どうしたのよ? 優樹」
「真凛ちゃん……あの電柱……」
「電柱?」
生月市では電線の地下埋設化が進んでいて、電柱を見る事も減ってるけど、この廃村にはまだ電柱が残っていた。電気は当然来てないんだろうけど。
「へぇ……木の電柱なのね」
あたしが見た事のある電柱は全部コンクリート製だけど、昔の電柱は木でできていた――って、お祖父ちゃんたちからもから聞いている。今までは知識としてしか知らなかったんだけど……本当に木でできてるのね。
「うん……その電柱なんだけどね……妖怪化しかけてる……」
「……はぁ?」
……ちょっと待ちなさいよ、優樹。電柱の妖怪なんて、聞いた事も読んだ事もないわよ? ……確かに……他の電柱は大半が腐りかけて倒れてるのに、あの電柱だけは変に元気……って言うのもおかしいわね? 優樹に言われて【魔力探知】を使ってみたら、弱いけど魔力も帯びてるみたいだし。……ともかく、腐りもせずに残ってるわけだけど……だからって……あれ……待って?
「……ひょっとしてアレ? 狸か何かが電柱に化けてる――ってオチ?」
昔、SLに化けた狸がいたそうだけど……
「じゃ、なくて……真凛ちゃん、逆柱って知ってる?」
「逆柱?」
「うん、逆柱」
確か……材木の上下を反対にして立てた柱の事よね? 縁起が悪いって嫌がられるんじゃなかったかしら?
「うん、それ」
……電柱にも逆柱って……あるんだ?
「さぁ? ただ、この電柱は逆柱にされて怒ってるみたいだよ? それは事実」
――そう言って優樹が話してくれたのは、どうにもコメントに困るような話だった。
「……つまり……その電柱一本だけがどういうわけか逆柱に立てられて、それが不満で妖怪化した……って事?」
「うん。電柱なんかにされちゃったせいで、祟る相手がいなくてフラストレーションが溜まっているんだって。そのせいなのか食材性昆虫も木材腐朽菌も寄って来なくって、朽ちもせず現在に至る――って事らしいよ。廃村になってからはますます祟る相手がいなくなって、ウップンの持って行き場がないんだって」
「はぁ……」
「たまに立ち寄る見物人に軽く祟っても、だれも逆柱のせいだなんて思ってくれなくて、ますます不満がつのってたんだって」
「はぁ……」
話してくれた内容も大概だけど……【素材鑑定】って、そんな事までわかるの?
「え~と……【素材鑑定】の効果もあるんだろうけど……ぼくが【鑑定】をかけたのに気付いて、向こうからコンタクトしてきたんだよ。ここでこのままくすぶってるより、マヨヒガの素材になった方がマシだからって……」
「……はぁっ!?」
いや――あたしじゃなくても驚くわよね?
「ぼくが【素材鑑定】を使った時に気付いたみたい」
「いえ……驚いてるポイントはそこじゃないんだけど……あぁ……もういいわ、何だか。……で、どうするつもりよ、優樹」
「うん。真凛ちゃんさえよければ、リクルートしたいかな――って」
「……既に色々お迎えしてるんだから、今更よね。いいわ、取り込んじゃいなさい」
あたしがOKすると、優樹は嬉しそうに「逆柱」を取り込んだ。逆柱は音もなく消えた。最初からそこには何もなかったみたいに。……けど……
「電柱が一本消えて、ちょっとだけ景色が変わったけど、それくらいなら目立たないよね♪」
……あぁ……優樹は気付いてないんだ……
「……あ、あのね優樹……言いにくいんだけど……」
「……何?」
「うん、周りを見てくれる? 何か気付かない?」
「周り?」
不思議そうに辺りを見まわしていた優樹の顔が、何かに気付いたみたいに引きつって……
「……わかった? 優樹が取り込んだのはさっきの逆柱だけじゃなくって、この辺りの木製電柱全部だったみたいよ?」
「………………」
「マヨヒガが欲張ったのか、逆柱が気を利かせたのかはしらないけどね」
「………………」
「ま、気付かれてもせいぜい怪談が一つ増えるだけで、あたしたちには関係ないわよ。だから――そう気にしなくてもいいと思うわよ?」




