第二十二章 ぼくらが化石を掘りに行った話 2.叔父さんという人
~Side 真凛~
三連休の初日の土曜日、あたしたちは優樹の叔父さんという人の車で、化石採集の現場である目洞へと向かっていた。
……それにしても優樹の叔父さんって、一体何をしてる人なのかしら。車は国産だけど新車っぽいし、着ている服もラフだけど上等なものみたいだし……
優樹のお母さんの弟だって言ってたわよね、確か。でも、優樹のお母さんの実家って、お寺だって聞いた気がするんだけど……お坊さんって、そんなにもうかるのかしら?
(「あ、違うよ真凛ちゃん。叔父さんは僧籍にはないんだよ」)
ソウセキ……あぁ、僧籍ね。
(「お寺とは別の仕事をしてるの?」)
なぜか優樹がヒソヒソ声なんで、あたしもつられて小声になった。
(「うん、マネーゲームって言うのかな? それであぶく銭を稼いでる」)
――マネーゲーム!?
(「……株とか投機とか、そういうやつ?」)
(「うん。お母さんに言わせると、才能はあるけど適性はないんだって」)
……優樹の話によれば叔父さんという人は、そっち方面に天性の才能を持つ反面で、細かなところにまでは注意が行き届かない大ざっぱな性格をしているんだって。ケーヤク書なんかもしっかり読まないものだから、そのせいで毎回ひどい目にあっているらしい。……なのに、すぐにお金を稼いで損失分を取り戻せるものだから、こりるという事をおぼえないんだそうだ。
ついでに女性関係にもルーズ……と言うか、無とんちゃくで大ざっぱなところがあって、優樹のお母さんから――教育に悪いという理由で――鳥遊家への出入り禁止を言い渡されているらしい。
(「……それって……ある意味で最悪じゃない……」)
(「人柄は好いんだけどね。ちなみに、お母さんに言わせると、ぼくにもその血が流れてるんだって」)
(「それって――」)
〝困ったもんだ〟と言おうとしたところで、叔父さんが前の席から声をかけた。
「――聞こえてるぞ二人とも。運転手、兼・保護者に少しは気を遣いなさい」
あたしは思わず首をすくめたんだけど、優樹ったら……
「ごめんなさい。でも、何があっても叔父さんのまねだけはするな――って、お母さんにしょっちゅう言われてるから」
「……姉貴も少しは弟の事を労ってくれんかな……」
今回優樹の叔父さん――興蔵定盟さんというそうだ――があたしたちの引率を引き受ける事になったのも、優樹のお母さんの言いつけらしい。優樹のお父さんとうちの両親を休ませるためにって、姉の強権で命令された――って、定盟さんはぼやいていた。何でも優樹のお母さんは、兄弟姉妹三人――もう一人お兄さんがいるそうだ――の中で最強なんだって。
……その点には同情するけど……あたしの方を妙な目で見て、〝優樹、お前も気をつけろ〟――って言うのはどういう意味なのかしら?
・・・・・・・・
……まぁ、そんなたあいもない会話はあったけど、あたしたちは昼過ぎに目的地の「目洞自然史博物館」へと到着した。この後は博物館の見学と、夕方に簡単な採集会のレクチャーを受けて、近くの旅館に一泊する事になる。
博物館には今までにここで発掘された化石なんかも展示してあるそうだし……楽しみよね。




