第十二章 ぼくらが怪異を調べ始めた日 5.調査の方針
~Side 優樹~
真凜が――少しジト目で――言うのには、この町に「迷い家」が現れた以上、他の怪異も活性化している……っていうのがラノベの定番らしい。それを確認するための第一歩として、この「日本の怪異・妖怪展」を見に来たと思ってた……って言うんだけど……うん、弁解の余地はないよね。きれいさっぱり忘れてたもん。
けど――真凜の言う事にも一理あるんだよね。
ぼくらはそれぞれマヨヒガと魔法を得たわけだけど、実はそれ以外に、〝「迷い家」が現れた〟――っていう情報も得たわけだ。この情報を無視して動きまわると、ろくな事にならないような気も確かにする。
百年以上の間を経て、この地に「迷い家」が現れた意味。そして、東北と関東の一部でしか報告がなかった「迷い家」が、ここ生月市に現れた事の意味。
前者からは〝怪異が再び動き出した〟という結論が、後者からは〝怪異の活動範囲が広がっている〟という解釈が導かれるんだけど……「迷い家」の活動記録なんてどこにもないわけだから、時間的な変化なんて、確認のしようがないよね。
後ろ向きの追跡調査ができない現状では、他の怪異の状況を調べるべきという真凛の指摘も、あながち間違ってはいないわけだ。本当に真凛ってば、歴史というか時代劇に関わる事になると熱が入るよね。
ただ、問題は……
「他の怪異の状況を調べようにも、今のぼくらにできる事は少ないんじゃない?」
大体、怪異とか妖怪とかっていうのは夜に動くものと相場が決まってるけど、
ぼくたちは小学生なんだから、夜中に抜け出す事なんかできないからね。
「それはそうかもしれないけど……でも、指をくわえて見てるだけ――っていうわけにもいかないわよね?」
確かに、それはそうだけど……
「う~ん……怪異の現象そのものじゃなくって、怪異が起こる場所を調べる事ならできるかも……」
「……どういう事? 優樹」
「ほら、怪異とか妖怪とかって、出る場所とかが決まってるじゃない。そこを昼のうちに調査する事ならできるかも。夜に怪異が起きる場所なら、昼に行っても何か手がかりくらいあるんじゃないかな」
ぼくがそう言うと真凛は、
「……そうね。あたしの探知魔法に優樹の鑑定もあるし。できなくはないかもね」
「……真凛ちゃん、ぼくの【鑑定】でわかるのは、素材としての適性だけだよ?」
「それだって、何もないよりはマシじゃない」
そうかなぁ……
けど、そうだとしても、他にも問題があるよね?
「調べると言っても真凛ちゃん、どこを調べるつもりなの? 真凛ちゃんのお祖父さんによると――」
御式場山の祠は無くなってるそうだし、
称明寺とそのお墓は別の場所に移転している。
巳之助淵も蛇の迫も山の奥だし、
入道池に至っては山のてっぺんにある。
とても小学生だけでは行かせてもらえないよ?
足音の怪は夜にしか出ないそうだし、こっちも小学生は出してもらえないよ。
首掛けずの松は伐られて無くなってるそうだし、
塞の原は、自転車でなら行けなくはないけど……少し遠いよ?
「調べる事ができそうなのは、称明寺の跡地ぐらいかぁ……」
あとは、古くから伝わってる怪異じゃなくて、都市伝説とかの新しい怪異を調べるくらいだよね。
今回の更新はこれにて終幕です。実地調査については次章以降で。




