第十三章 ぼくらがお寺の跡地に行った時の事~石神~ 1.お寺の跡とお墓の跡
お久しぶりのマヨヒガです。今回は二話で、明日も同じくらいの時刻に更新する予定です。
~Side 優樹~
ぼくたちは今、称明寺の跡地にやって来ている。「迷い家」が現れた理由を解き明かすためにも、この近くの怪異について調べるべきだっていう真凛も言ってたしね。ただ……実際にぼくたちが調べに行ける場所っていうと、称明寺跡ぐらいしかなかったんだよね。
この場所から移転した現・称明寺とか、同じように分かれて移転した神社とかに話を聴きに行くっていうのもあったんだけど……そっちには何の怪異も起きてないみたいだし、勝三さん――真凛のお祖父ちゃん――の話以上のものが聞けるかどうかもわからなかったからね。何でそんな事を訊くのかって言われたら、説明するのも面倒だし。まずは跡地の方を調べてからにしようって、二人の意見が一致したんだ。
で、来てみたのはいいんだけど……
「みごとに何にも残ってないわね」
「だね」
鳥居は地震で倒れたから片付けて、今は破片が残ってるだけ――って、勝三さんは言ってたけど、本当にそれらしい石が道の脇に寄せてあるだけだ。この鳥居が歩きまわったのかと思うと感慨深いけど、今はただの石が残ってるだけだ。石材としては取り込めるかもしれないけど――
「そっちは後にして、今は先に進みましょう」
「そうだね」
ここに来たのは素材調達のためじゃなくって、怪異の状況を確かめるためだ。優先順位を間違えたらいけないよね、うん。
「石段はちゃんと残ってるわね……優樹、これも取り込めるんじゃないの?」
「できなくはないと思うけど、石段が消えたりしたらさすがに怪しまれるんじゃないかな」
真凛の土魔法で跡を消して、ついでに木魔法で草とかを茂らせてやれば、ひょっとしたら誤魔化せるかもしれないけど、危ない橋は渡らない方が良いよね。それより……
「道の部分は草刈りとかしてるみたいだけど……端っこの方はまだ草が茂ってるね」
これって……バッタとかコオロギとかキリギリスとかがいるんじゃないかな? 今日は網とか持って来てないけど、いつか採集に来てもいいかもしれないな。けど、真凛は嫌がりそうだから、その時は一人で来るか。
「……何考えてるの? 優樹」
「ん~ん、別に? それより、石段を登ってみようよ」
「……そう?」
疑わしげな真凛を急き立てて石段を登り詰めてみると、
「……何にもないわね」
「……だね」
ここも草刈りとかされてるけど、広い敷地内にはところどころに礎石っぽいのが残るだけで、建物とかは跡形もなかった。……解体して新しいお寺の材料にしたのかな?
「……優樹、何か怪しいものとかないの?」
「一応見てはいるけど……そもそもぼくにわかるのって、マヨヒガの素材としての価値とか適性とかだからね。ラノベに出てくる【鑑定】と同じ事を期待しないでよ」
どっちかというと、真凛の探索系魔法に期待したいんだけど、
「実体のあるものならともかく、そうでないものを察知するのは無理よ」
――と返された。まぁもっとも……
「……そもそも称明寺の怪異って、鳥居と鐘と和尚さんの正体なんだよね? 鳥居はああで、鐘もお寺もろともなくなってて、和尚さんは多分死んでるだろうって考えたら……」
「……怪異の主はいないわけよね……」
「あとは、猫が踊ったっていうお墓だけど……」
「それも移転してるはずなのよね……」
ともあれ、せっかくここまで来たんだから、裏にあるという墓場の跡も見ておこうという話になって、ぼくと真凛は境内跡の奥へと進んだんだけど……
「やっぱりここも何にもないわね……」
こっちはあんまり草刈りとかもやってないみたいで、結構雑草が茂ってる。隅に墓石らしいものが幾つかまとめられているくらいで、それを除くと墓場だった事を示すものは何もない。
墓石らしいのもすべて自然石で、現代の墓石のように整形されてはいない。ただ、注意して見ると、何か文字のようなものが彫られていた痕跡がある。そういうのがいくつか苔生して、雑草に埋もれているんだよね。
「どうする優樹。いくつか取り込んで帰る?」
「さすがにお墓の石はまずいんじゃないかなぁ……」
「……そうよね」
……このまま残しておいたら、虫とかトカゲとかのすみかになる……なんて、考えなかったよ? うん。




