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異世界で魔物使いやってます  作者:
異世界に来ました
87/276

ワー、年齢とレベルが三桁ダー



「えーと、それじゃあ従魔契約するけど……契約印はどこが良い?」


「ミーヤが良いと思う場所が良い」


「また難しい事を言う…」



 何が食べたい?って聞いたら何でも良いよ並みに困る言葉だよね、これ。まあ何でも良いよと言いながら何でも良くは無いアレに比べれば、ハイドは本当に本心からどこでも良いって思ってるっぽい分良心的かな。

 さてどこに印を……と思ってハイドを見れば目に入るのは上半身。露出多過ぎてめっちゃ目に入ってくる。

 …よくよく考えると胸元開いててスカートはスリットガッバァーなイースに、水着みたいな胸当てと下半身にパレオのような布を巻いただけのラミィに、骨とはいえ裸ローブなアレク……そして新入りのハイドはチューブトップをベルトで留めてるというロック過ぎるファッション。やだ、うちのメンバー露出高過ぎ…?ハニーとコンのまともなファッションセンスの安心感が凄い。

 まあその辺は見ない振りをしつつ、やっぱ目に入るし上半身のどっかに印を刻んだ方が良いかなーと私は考える。腹も露出されてるしその辺…と思ったけどラミィが既に腰担当なんだよね。胸元もイースが既に担当してるし。手の甲もコンが既に…だから、肩とか腕とかかな?

 ……うん、決めた。

 私は手を伸ばし、膝立ちをしている為に私と同じ背丈状態になっているハイドの右肩に触れる。ベルトがある左肩とは逆の右肩。こっちならベルトが無い分見やすいかなって。



「ここに印を刻んでも良い?」


「ああ、ミーヤのモノという証明を。是非。刻んでくれ」



 目も声もガチ過ぎる。確かに命を預けるんだからそんくらいガチになるのはわかるけど、もうちょっと気楽でいて欲しい。ハニーやラミィ並みの気楽さよカムバック。

 ……今気付いたけど、うちの男共は色々と重いな?過去とかが。ラミィも売られかけてたから重いっちゃ重いけどね。イースも元魔王軍幹部だから過去は重いか?駄目だ、まともなのがハニーしか居ない。私の従魔で一番まともなのハニーなんじゃないかな。



「…ま、良っか。「従魔契約」」



 指先に魔力が集まり、それが糸となってハイドの肩に花を咲かせる。肩に合わせてか大きめの桜だ。アレクの目元の時は小さい桜だったけど、こういうのって自動的に見栄えとかを調整してくれてるのかな。使用してる魔力量は変わらない気がするし、多分自動的に見栄えが良いようにしてくれてるっぽい。凄いな従魔契約のスキル。

 ブツンと魔力の糸が切れ、ハイドの白過ぎる肩に綺麗に咲いた桜の花が一瞬強く光を放った。良し、契約完了っと。



「これでハイドは私の従魔だね」


「ああ……」



 私の言葉にハイドは立ち上がりながらぼんやりと返し、無言のまま左手で右肩に咲いている桜の契約印に触れた。黒く尖っている指で花びらをなぞり、ハイドは微笑む。さっきまで顔の血色がとても悪かったのに、今は頬の辺りの血色が良くなっていた。

 喜んでくれてるなら嬉しいね。



「あ、ステータス見ても良い?」


「ステータス?」



 私はハイドに、従魔契約をすると主である私は従魔である皆のステータスを見る事が出来るんだと説明する。勿論他の魔物使いの従魔のステータスなんかは見れないという事も。



「契約で魔力が繋がってるから、か?」


「いやその辺はよくわからないんだけど……そうなの?」



 振り返ってイースに聞くと、イースはハートが浮かんでいる赤みがかった紫の瞳を細めて笑った。



「そうよぉ。契約による魔力の繋がり。それと主だから、かしらねぇ。従魔である私達からは主であるミーヤのステータスは見れないものぉ」



 そう言い、「まぁ、鑑定スキルを所持していれば見れるけどねぇ」とイースは続けた。

 所有権が主側に移ったので、情報も主側に提示しますねーみたいな感じなのかな?よくわからん……けど、まあ別に知らなくて死ぬわけじゃないから良いや。イースはわかってるっぽいしね!元々容量少ないんだよ私の頭は!なので知識面はイースに任せます!最近はハニーとアレクも頼もしくて助かる!



「で、えーっと…見ても良い?」


「ああ、ミーヤになら幾らでも。ミーヤが我の内臓を見たいと言えば自分で腹を捌いて内臓も全て見やすく展示してみせるくらいの覚悟はある」


「内臓見せろとは一生言わないから安心して」



 内臓を見なくちゃいけない理由があるならともかく、理由も無いのに内臓見たいとは思わないよ。一般の女子高生に何を求めてるんだ。ハイドに覚悟があっても私の方には内臓を見る覚悟なんて無いよ。



「まあ、うん……ステータス確認っと」



 ハイドの発言を深く考えると頭が痛くなりそうだから考えるのを止めよう。頭悪いのに考える癖があるから混乱するんだよね、私は。

 さて……と私は表示されたハイドのステータスを読み上げる。



 名前:ハイド(896)

 レベル:309

 種族:闇毒スパイダー

 HP:42600

 MP:79700

 スキル:毒牙、猛毒、自在の蜘蛛糸、呪い吸収、出糸、威圧、恐慌、縫い物、縫合、擬態

 称号:呪いを取り込んだ蜘蛛、巨大化け蜘蛛、嫌悪の塊、村に住み着いている邪神、人食い、寂しがりや、ヤンデレ、従魔、第五夫人、愛の加護



 …………ウン、反応に困る。わかってたけどハンパないねハイド。



「うっわー、僕のステータスと比べると桁が違い過ぎない?」


「………レベル…三桁、二人目……」


「まあ、聞いた話だとイースはもっと凄いステータスらしいし……800…っつーよりも900年生きてるんだからこれが普通……なのか…?」


「ミーヤ様をお守りする為にも、レベルが高い戦闘特化型の後輩は嬉しいですね。もう二度と今回のような事が起きないようにしなくてはいけませんし」



 上からアレク、ラミィ、コン、ハニーの順番である。

 アレクは顔を引き攣らせながら乾いた笑いを漏らし、ラミィはゆったりとした拍手をし、コンは耳を伏せながら悩むように首を傾げ、ハニーは腕を上下とも組みながらうんうんと頷いていた。

 このステータスを聞いて困惑こそしても驚いたり怯えたりしないのがうちの子だよね。もっと凄いステータス持ちが居るからだろうけど。年齢三桁でもイースより年下って…本当にイースって凄いよね。

 さて、スキルの詳細ーっと。



 猛毒

 毒のスキル。相手の体内に入れてどろどろに溶かす毒以外にも複数の毒を使用可能。致死率高め。


 自在の蜘蛛糸

 このスキルがあれば出した糸を自由自在に動かせる。指で操作しなくても糸の先を好きな形に動かせたりなどかなり自由度が高い。正直手や足よりも使い勝手は良い。


 呪い吸収

 呪いを吸収するスキル。呪いを掛けられてもトラップで呪いを踏んでも余裕で吸収し自分の糧に出来る。確実に死ぬであろう呪いも余裕。他者に掛けられている呪いを食べる事も可能。


 出糸

 蜘蛛系の魔物には糸を出す能力が必ず備わっているが、このスキルがあると出糸突起以外の場所からも自由に糸を出せる。指からも足からも出せるのでかなり生存率が上がる。ただし出し過ぎると腹が減る。タンパク質をしっかり摂取しておこう。


 威圧

 相手を威圧出来るスキル。目を合わせるだけで怯えさせる事も可能。ただしビビリ相手に使うと会話が不可能になる。


 恐慌

 相手を強制的に恐慌状態に陥らせる事が出来るスキル。精神的にタフな相手には通用しないが、それ以外には効く。相手をパニック状態に出来るので非常に便利。


 縫い物

 糸を使って破れた服を縫ったり、服を作ったりが出来るスキル。このスキルがあれば服を作る時にどうすれば良いのかがわかるので素敵な服も作成可能。しかも蜘蛛糸なのでめっちゃ頑丈。


 縫合

 このスキルがあると相手の怪我を糸で縫い合わせたりが出来る。縫い合わせ方もわかるし綺麗にくっ付く。スキルの効果で衛生面も大丈夫なので安心して縫い合わせよう。



 ……うん。



「凄いスキルしか無いね」


「そうか?」



 私の言葉にハイドは首を傾げるが、これ結構凄いスキルしか無いよね。

 それとどうやってお茶を淹れたのかって謎が解けた。自在の蜘蛛糸ってスキルで淹れたのか。あと出糸のスキルに安心した。何故って?人間の姿で尻から糸出してたら色々とアウトじゃないかなーって考えてたからだよ!蜘蛛が尻から糸出すのは普通だけど人間が尻から糸出したら絵面とか色々がアウト中のアウト過ぎる!



「威圧と恐慌は何となくわかる」



 最初にそれやられたと思うし。威圧感凄いわ怖いわで正気を保つの大変だったもん。詳細説明には精神がタフならって書いてあるし、こっちの生活でメンタルが鍛えられてたお陰でセーフだったのかな?もしアウトだったら他の人達と同じようにデッドエンドだったんだろうなと考えて一瞬身震い。あっぶねえ橋渡ってるな私。



「で、この縫い物と縫合ってのは?」


「縫い物は…暇な時間が多かったから、糸で色々と試していた時に覚えたんだと思う」



 確かにずぅーーーーーっと鉱山の中じゃ暇な時間しか無いよね。……色々と試すって何してたんだろう。私だったらあやとりかなって思うけどここ日本じゃないからね。…ま、良いか。



「縫合は、我を討伐しに来た冒険者に斬られた時なんかにやっていた。斬られた部分を糸で縫ったりしてな。多分それで覚えたスキルだと思うぞ」


「……なんかごめんね」


「?我を殺しに来たのはミーヤとは違う冒険者だ。最初に我と話し、幸せな時間をくれた冒険者も我を殺そうとした冒険者達とは違うと我は知ってる。だからミーヤが悲しむ必要は無い」


「ハイド…」



 こういうのって結構同じ存在だって嫌うものだけど、ハイドはその辺ちゃんとわかってるんだね。冒険者全員を嫌ってるわけでは無いとわかって安心した。

 そう思い、ふぅ、と息を吐いた瞬間。



「…まあ」



 ハイドは歪んだ笑みで、



「我に敵意を向けるなら我も本気の殺意で返すがな」



 と言った。



「やめてあげて」



 普通の人間相手にハイドの本気を見せたらショック死しちゃうから。万が一ギルド内とかだったら大変な事になってしまう。最早テロじゃん。

 ……まあ、最悪私が止めれば良いか。言えば止まってくれる…と思うし。

 ええい怖い未来の可能性は考えない!考えるのはその時が来てからだ!さあ称号の詳細を見るぞ!



 呪いを取り込んだ蜘蛛

 掛けられた呪いを取り込んで自分の力にした蜘蛛に贈られる称号。この称号を所持していると呪いへの耐性がMAX。むしろ呪いが食事ですレベル。


 巨大化け蜘蛛

 巨大過ぎて恐れられ、化け物扱いを受けた蜘蛛に贈られる称号。この称号があると人間に恐れられる。本能的な恐怖に近いので、本能的な恐怖を捩じ伏せる事が出来る実力者か本能を忘れた平和ボケ人間くらいしかまともにやり取り出来る相手は居ない。


 嫌悪の塊

 強過ぎる生理的嫌悪感を抱かれた者に贈られる称号。この称号を所持していると生理的嫌悪感を抱かれやすい。擬態姿の時は嫌悪感が95パーセントカットされている。


 村に住み着いている邪神

 その名の通りな条件を達成した者に贈られる称号。この称号を所持していると邪神扱いなので貢物や生け贄を贈られる。村から出れば邪神扱いは消滅する。


 寂しがりや

 寂しがりやな者に贈られる称号。この称号を所持していると一人を嫌うので、一人にはさせないように。誰かと共に、特に好きな相手と共に居ると実力以上の力を発揮出来る。ただし一人ぼっち期間が長いと変な風に拗らせる危険性あり。


 ヤンデレ

 病んだ愛の持ち主に贈られる称号。この場合は強い執着と依存型。愛を受け止めてもらい、そして愛を貰える状況であれば精神は安定する。危険度も下がる。ただし愛を拒絶されたり、好きな相手に嫌われたりすると危険度は天井知らずに上がっていくので気をつけよう。


 第五夫人

 五番目の嫁。



 詳細を読み上げ、私はフッと乾いた笑いを漏らす。そしてハイドに向き直り、



「平等に愛するから私の第五夫人になってください」



 頭を下げた。



「ミーヤ様!?」


「…!?」


「いつもはあんなにも必死で見ない振りをするのに…!?」


「どうしたのミーヤ!」



 上からハニー、ラミィ、コン、アレクの順で即座にツッコミが来た。

 …いや、うん、見ない振りしたいのは山々なんだけどさ…。



「なんかもう今更だし、従魔ハーレム受け入れてるし、嫁可愛いし、嫌じゃないし、最近は夫として頑張ろうって思い始めてるし、嫁可愛いし、私からお願いしますって言うんじゃなくて相手からのオッケー待ちっていい加減どうよって思ってたし、嫁可愛いし、夫として私からプロポーズした方が良いよねって思ったし、嫁可愛いし、嫁可愛いし……」



 私は言い訳がましく理由をつらつらと重ねる。やっぱり恥ずかしいは恥ずかしいんだよ!

 でも称号が嫁って言ってるのに旦那の私がそれを否定するって何か嫌じゃん!嫁から拒絶出来るようにって思って今までは見ない振りしてきたけど、それって嫁の面子潰してるわけじゃん!?だったらもう夫として嫁に来てくださいって言う!それなら拒絶されても私が振られたってだけで終わるし!



「えーと、それでハイド……嫁は平等に順番関係無く愛するつもりだけど…五番目の嫁になってくれる?」



 我ながらもうちょっと良い言い方は無いものかと思いながらハイドに手を差し伸べると、



「当然だ!」


「ぐえっ」



 手は取ってくれなかったけどハグされた。ハイドは私を締め上げる勢いでハグしつつ、嬉しそうな声色で言う。



「……蜘蛛は交尾するだけで結婚なんてしない…。そんな我でもミーヤと夫婦になる事が出来るなら、何番目でも構わない。メスであるミーヤが主導権を握るのも当然の事だしな」


「そういや虫系はメスの方が主導権握るんだっけ…」



 虫に限らず、人間以外の生き物って結構メスの方が強いんだよね。人間だけだよオスの方が偉いって扱いなのは。いや細かい事言うと人間だけとは断言出来ないけどさ。

 ……というか、さっきからハイドに締め上げられてて苦しい。背が高低差ありまくりなお陰で腕に力を入れ難いのかギブギブギブ!って叫ぶほどでは無いけど、普通に苦しいは苦しい。目の前胸だし。細マッチョだから硬めの胸板だし。というか私が少しでもしゃがんだらもうハイドの露出した腹とこんにちは状態だし。どないせいっちゅうの。

 とりあえず、ハイドを抱き締め返す。ぎゅっとね。あ、良し動揺したのかハイドの腕の力緩まった!



「ハイド、一旦放して」


「あ、ああ」



 私の言葉に、ハイドは動揺しながらも応じてくれた。背中に回されていたハイドの両腕が下がっていく。……ふむ…ふむ。あ、いや何でも無いですよ。ハグし返すのってセクハラにならないかしらと心配であんまり出来てなかったんだけど、結構満たされるし頻繁にハグしたいなーとか思ったりなんてしてなしてないですことのよ!?

 …脳内なのにうっかり噛んじゃったよ。してなしてないですことのよって日本語不自由にも程があるだろ私。まあ、うん、まだハグは恥ずかしさが残ってるんだな私は。

 ハニーやコンを抱き締めるのは出来るんだけどねー…。ラミィの下半身も平気。多分人間と同じ姿だとセクハラになるのでは!?みたいな気持ちになっちゃうんだと思う。反射的に。

 ハニーはキラービー姿の時からよく抱き締めてたし、コンはもふもふだからハードルが低いんだけど……うん、頑張ろう。頑張るっていうか普通にハグしたいからハグするだけなんだけど……こう、自分の羞恥心や理性とのバトルを頑張ろうっていう、アレだよ。アレなんだよ。

 ああもうさっきから言い訳がうるさいな私!(パニック)



「はぁーいミーヤ、落ち着いてぇ」


「むおっ」



 パニック状態に陥っていたら、背後からイースに抱き締められた。私の後頭部がイースの豊満なるおっきいおっぱいにバウンドした。低反発枕ならす高反発おっぱい……鎮まれ私の中の欲望とかその他よ!



「んん……面白いしぃ、出来ればもうちょっとミーヤの暴走を眺めてたいんだけどぉ」



 待ってイースさん。暴走は眺めずに止めて。



「でも結構時間も経っちゃったしぃ、そろそろ鉱山を出た方が良いと思うのよねぇ」



 イースの言葉に、私はふと思い出した。



「…………あ、ベルさんに無事ですよって報告しないと」



 そういや私、クアドラードの奴に代わりの生け贄にされてたんだったわ。早く報告しに戻らないとベルさんのSAN値がピンチ!


 

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