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異世界で魔物使いやってます  作者:
異世界に来ました
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オールドレインこっわ



「ミーヤ!良かった!良かったああああああ!!」


「ハグ&大福のような感触リターンズ!?」



 何があったのかと言えば、鉱山から出て村長の家まで戻ると家の前でそわそわしながらベルさんが待っていた。そしてベルさんはこっちを認識した瞬間にスタートダッシュを決めて私を胸の中へホールド。待って今日の私やたらと胸に頭突っ込んでない!?何今日は私の星座胸運マックスなの!?……胸運って何だ!!

 とにかく落ち着いてという意味を込めてベルさんの背中を軽く叩く。なんかこっち来てからこの動作しまくってて慣れてきたな。どういう異世界人生を歩んでるんだ私は。将来の夢の選択肢にカウンセラーなんて書いた覚えは無いぞ。忍者になりたいって書いた覚えはある。いやこの記憶は思い出さなくて良いよね私!?まずは私が落ち着け!深呼吸を……ベルさんの胸の中でしたら色んな意味でアウト!!



「ベ、ベルさん、とりあえず落ち着いて。私の脳みそがパンクしちゃう」


「パンク!?」



 私の言葉に驚いたベルさんは抱きついてきた時と同じように凄まじいスピードで離れてくれた。いや、パンクするってのは比喩だったんだけど……。

 すると、私から離れたベルさんは扉の横に転がっている物体を蔑んだ目で見下ろし、



「これもお前のせいかこの野郎」



 と舌打ちをした。………キャラ変わってない?



「どうやらミーヤ様まで被害に遭ってしまったという事実によって枷が外れたみたいなんです」


「枷が外れるとヤンキーみたいになるのか……」



 こそっと耳打ちして教えてくれたハニーの言葉に、私は遠い目をするしかなかった。そういやクアドラードの奴に膝蹴りかましたって聞いたわ。溜まってたストレスの発散なんだろうか…。

 ……ん?



「あのー、ベルさん?」


「何?ミーヤ」



 あ、私に対しては普通なのね。変貌っぷりが怖いけど、殺意や敵意がこっちに向けられてないなら良いや。私が気になってるのはそこじゃないし。

 私はベルさんが舌打ちをした物体を指差して聞く。干からびた、乾燥した木の枝のような物について。



「……それ、何すか?」


「クアドラードよ」



 待ってどういう事だ!?

 クアドラードって、アレ、アレだよね!?銀髪アシメに緑の目をしたイケメン!中身は最悪の自己中心的過ぎる妄想型ヤンデレ野郎だったけど!他者を犠牲にするのに何の問題が?タイプの野郎だったけど!でも顔はイケメンだったはずだ!若いイケメン!

 しかし、私が指差した物体は明らかに違った。何というかこう……全体的に、ミイラっぽい。干からびてる。水分も足りて無さそうだし、見るからに老けている。筋肉も無い。眠っているのか気絶しているのか死んでいるのかすらもわからない状態だ。……あ、今サーチしたら生命反応はちょこっとだけどあった。つまりまだ生きてるのかこの人。



「誰か説明プリーズ」


「ミーヤが連れ去られて犠牲にされたって聞いて俺らがキレてたら、イースの方が本気でキレてたみたいで……」


「………オールドレイン、してた…」


「僕オールドレインなんて見るの初めてだったよ。アレ絶対創作された夢物語系のスキルだと思ってたのに」


「一瞬でした」


「駄目だわからん!」



 上から私、コン、ラミィ、アレク、ハニー、そしてまた私という順番である。駄目だ私のポンコツさではまったく理解出来ん。イースがガチギレしてオールドレインとやらを発動させてクアドラードをこんな状態にしたという事しかわからん。



「大体合ってるわぁ」


「マジで?」


「マジよぉ」



 マジか。大体合ってるのか……いやそれより一層わからないよ!?そもそもオールドレインって何!?



「ドレインはわかるわよねぇ?体力を奪って自分の体力を回復させたりぃ、魔力を奪って自分の魔力を回復させたりするスキルや魔法の事なんだけどぉ」


「それはわかる」



 私は頷く。ドレイン系はゲームでよく見たからわかる。でもオール、つまり全部って意味だよね?全部をドレインなんて聞いた事ナッシングなんだけど。

 まだ理解してない私に、イースは微笑みながら人差し指を立てた。



「つまりねぇ?体力もぉ、魔力もぉ、レベルもぉ、寿命もぉ、筋力も知能もぜぇ~んぶドレインしちゃうのぉ。今回は7割以上奪ったからぁ……そこに転がってるのはもう2割か3割しか残ってない絞りカスよぉ」


「とんでもない事やってた!?」



 こっっっっわ!体力と魔力ならともかく、レベルもまあ聞いた事無いわけじゃないからそれもともかくとしても寿命とか筋力とか知能とかまでドレインってやばくない!?そりゃ瑞々しい若者も干からびたミイラもどきになるわけだよ!納得したわ!



「え、ちょ、ベルさんこれ良いの!?これ放置で良いの!?」


「完全に死んだら粉にしてその辺に撒けば良い肥料になると思わない?」


「あっ駄目だベルさん今までの鬱憤が溜まり過ぎてて殺意しか無い!」



 声には殺意しか無かったのに、表情だけは凄く晴れやかで綺麗な笑顔なのが怖い!

 いやでもこれ駄目だよね!?アウトだよね!?そう思って周りを見渡すけど私の味方が見当たらない!イースはこれをやった張本人だし、ハニーとラミィとアレクとハイドは興味無さげだし、唯一残ったコンは顔を顰めて鼻を押さえてる状態だから多分臭いが嫌なだけだと思われる。駄目だクアドラード死亡フラグオンリー!

 殺されかけたとはいえ見殺すのはちょっと…と思い、どうにか私と同意見の人はいらっしゃいませんかと心の中で呼びかけていると、



「ベル?それと……お客さんかい?」


「父さん!」



 ベルさんのお父さん…この村の村長さんが帰宅した。

 ベルさんとソックリな薄いピンクの髪を一つに結んでいる穏やかそうな村長さんに、かくかくしかじかと一部始終を話す。お願い村長さんクアドラードの味方をしてあげて!最悪な野郎だったけど、だからといって肥料エンドは惨すぎると思うんだ!

 そして全てを聞き終わった村長さんは、



「よっしゃあああああ!これで憂い一個減ったぞおおおおお!!説教したり追い出すぞって言うと毎回毎回ベルを性的に襲うぞ宣言しやがってこのクソ野郎が!だがもうお前の息子も役立たんだろうなザマァ!!」



 と叫んだ。駄目だこの親子はクアドラードへの鬱憤オンリーだ!つーか父親に娘の貞操を人質に取るとかクソな事してんなクアドラード!



「父さん!?ま、まさか今までこの野郎に強く言えてなかったのって……父さんがこの野郎を拾ってきちゃったからじゃなくて……」


「……ああ、ベルに手を出しても良いのか?と言われていてね。私が二人の仲を引き裂こうと言うなら云々と面倒な言葉を並べていたが、要約すると大体そんな感じで……そのせいでベルの味方をする事が出来なくて、悪かった…!」


「父さん……!!」



 ベルさんと村長さんは、親子の愛を確認するかのようにひしっと抱き締め合った。そして抱き締め合いながらも村長さんはさり気ない動きで地面に転がっているクアドラードだった物体を蹴っていた。やる事がエグい。でもそれだけの恨みつらみがあるんだね……もうクアドラードの命は諦めても良いんじゃないかって気がして来た。

 犯罪者って奴は犯罪を繰り返すからねー…。出来るだけ命は助けてあげたいけど、日本のストーカー事件とかが脳裏をぎる。

 ああいう奴等は妄想世界の住人だから、警察に捕まろうが妄想を止めない。寧ろ妄想をより事実だと強く思い込む危険性がある。そして事実を事実だと受け止めた場合も、それはそれで今までの病んだ愛が殺意に変換される恐れがあるという地獄みたいな悪循環。

 そういえば、お姉ちゃんと一緒に同人誌作ってたお友達さんに悪質なストーカーが粘着して警察沙汰になったって話を聞いた覚えが……駄目だクアドラードを助けるとまたベルさんに被害が行く可能性しか無いよ!?



「一応手が無いわけじゃないのよぉ?」


「マジで!?」


「マジよぉ」



 クアドラードをミイラにした張本人だけど、その分イースの言葉には信憑性がある。クアドラードに適切な罰を与えつつも生かす方法は!?

 イースはくすくすと笑いながら言う。



「犬に姿を変えさせてぇ、犬に合った分だけドレインしたモノを返還。この場合は番犬コースねぇ」


「元がクアドラードだと思うだけで虐待しそうなので却下で」


「ええ、うっかり犬鍋にしちゃうかもしれないわ」



 イースの案はベルさんと村長さんにより却下された。

 クアドラード、お前今因果応報による戒めを受けてるぞ…。マジで因果応報だぞコレ……せめてちょっとでも良い人の振りとかしておけばこんな結末にはならなかったのに…。



「なら若返らせたうえで記憶を消す?それなら何もわからない少年になるからまともな人間に育て上げる事が出来ると思うわぁ」



 そしてイースは「肉体に合った分だけドレインしたモノは返すしぃ、何なら見た目も変えるわよぉ。村人が減るよりは戦力になる人間を作る方が良いと思わなぁい?」とベルさんと村長さんに言った。

 ……つまりほぼ別人にするって事だよね。でも確かに子供、かつ記憶無しならまともな人生を歩めるかもしれない。ハイドがあの鉱山を出たからこれからこの村は人員を必要とするだろうし。

 ベルさんと村長さんは少し話し合い、結論を出したらしい。



「…それでお願いします」


「はぁい。見た目は変えるぅ?」


「髪色と目の色だけ変えてもらえるかしら。その二つがもう大っ嫌いで……!」



 ギリ、と歯を食い縛ってそう言うベルさんに、イースは微笑みながら「わかったわぁ」と答えた。そっか、確かに嫌だよね……。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。ベルさんにとっては銀髪と緑の目が嫌悪の象徴になっちゃってるんだろう。

 イースはクアドラードの近くでしゃがみ、クアドラードに触れ………ようとして、ふと気付いたようにこっちを見た。



「皆はもう家の中に入ってた方が良いわよぉ。ここで姿が変わるのを見ちゃったらぁ、別人だと思えなくなるかもしれないものぉ」


「あー…」



 言われてみると確かに。芋虫と蝶を別々に見たら別物にしか見えないけど、芋虫が蝶になるまでを見てたらイコールで繋がっちゃうもんね。



「……それにぃ、肉体を逆戻りさせるから生理的嫌悪感が湧くかもしれないしぃ…」


「よっしゃベルさん中入りましょう中」



 地獄耳な私の耳はイースの呟きを完璧に捕らえてしまった。確かに生命の色々のアレやコレに関係する系は生理的嫌悪感を覚えかねない。変なトラウマを抱く前にいざ退散。

 同じくイースの呟きが聞こえたらしいコンと力を合わせてベルさんを家の中へと誘導する。



「あー、ホラ、イースの言う事ももっともだし!」


「色々あって私お腹空いちゃったなー。それにベルさんと色々お話したいなー!」


「え、あ、そ、そうね!」



 私に手を引かれ、コンに背中を押されたベルさんは無事流されてくれた。イース以外全員が家の中へ退散である。イースに任せておけば大丈夫だよ、多分。

 とりあえずベルさんを椅子に座らせようとするが、ベルさんは私の発言を気にしたのか、



「休む前にご飯作っちゃうわね」



 と言った。お腹空いたって言った私が言うのも何だけど、こんなに色々あった日にいつも通りの行動を取ろうとするって凄いなベルさん。結構メンタル強……くは無いか。SAN値ピンチだったもんね。枷が壊れて吹っ切れた状態に近いんだろうか。



「ええと、確かハニーが甘い物しか食べられなくて、ラミィとコンが肉好きで、ミーヤとイースとアレクは何でも良くて……」



 指折り数えつつ私達の好みに合った献立を考えてくれているらしいベルさんは、ふと私の後ろを見た。



「…ごめんなさい、貴方の名前を聞いたはずなんだけど……」



 申し訳無さそうにそう謝るベルさんに、



「いや、気にするな」



 ハイドはそう答えた。

 そのままハイドはベルさんに自己紹介をし、ベルさんは「ああ、そうだったわね!」と頷いてキッチンへ走って行った。村長さんも「人数が多いから」とベルさんの手伝いをしにキッチンへ……あ、ハニーもキッチン行った。働くの好きだもんね、ハニー。

 さてここで皆様のクエスチョンにお答えしましょう。

 ええ、皆の疑問はわかってますとも。何でハイドが居るのにベルさん達まったく反応してないの?って事でしょう?はっはっは、まあ簡潔に答えだけ言うとイースの魔法ですいえーい。

 どういう事かと言えば、最初にハイドをどうしよう?ってなったんだよね。ホラ、鉱山から帰ってきたら従魔が一人増えてるわけじゃん?しかも蜘蛛の巣柄ファッションじゃん?明らかに関係性あり寄りのありじゃん?ありまくりじゃん?つまり誤魔化せないじゃん?じゃんじゃんうるさいけどまあそういう事で、どないすっぺとなったわけでやんす。

 ハイドを一時的に村の外で待機させて後で合流…っていうのは確実にハイドの精神を病ませかねなかったので、案が浮かんだ瞬間に脳内ゴミ箱にボッシュート。だがしかし良い言い訳も思いつかないポンコツ脳みそだし、とイースにヘルプしたらあっさりと魔法でどうにかしてくれた。

 そう、そしてこれこそがイースの凄まじい魔法、認識阻害である!

 いや…うん、正確にはちょっと違うらしいんだけどね。人間の脳に認識されなくなる認識阻害とは違って、まるで最初から居ましたよ?というような……要するにぬらりひょんみたいな感じの魔法である。家の人かってくらい当たり前に家の中に居て、当然のように飯食ってく妖怪。しかも違和感を感じさせないというあの妖怪。あんな感じで、違和感ゼロで最初から居ましたよ?という錯覚を起こさせる魔法……らしい。

 よくわかんないけどイース凄いよね!人間の脳を弄くってる気がするけど気のせいだ!今現在村長さんの家の前で人間を一人改造してるけど考えるな私!地球の常識は捨てろ!



「本当に違和感を抱かないんだね」


「ね」


「……ん、凄い…」



 アレクの言葉に私とラミィは頷く。

 すると、アレクは少し引き攣った笑顔になり、骨の指で自分を指差した。



「…僕、イースにこういう魔法も片手間で出来るようになれって言われてるんだけど、出来ると思う………?」


「四桁生きれば出来るんじゃないかな」


「うっわー、やっぱめちゃくちゃ大変って事じゃない?」



 そう言いながらもアレクはケラケラ笑い、



「…ま、ミーヤの為に頑張るけど」



 と呟いた。続けて「だから上手に出来たら褒めてね♡」って言わなければ最高に格好良かったよアレク。付け足した結果格好良いより可愛いになったけど。そう思ってほんわりしていると、



「……………やっぱ、オールドレイン教わろうかな。あれが出来れば色々な事をかなり短縮出来るし……」



 アレクは目を鋭く光らせ、蚊の鳴くような声でそう独り言のように呟いた。

 …とりあえず私は料理が出来るまでの間、アレクにそれは止めろと説得する事にしよう。ミイラ製造機にでもなる気かお前は。



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