ツギルクの町とさようなら
気付けば、このツギルクの町に来てから数日が経っていた。
…うん、まあ、Fランクの魔物討伐依頼を毎日受けて倒してクリアしてってだけの毎日だったけどね。お金稼ぎとハニー達に食べさせる魔石稼ぎの為に狩りまくった。受けてない依頼の魔物も討伐しちゃったりもしたけどそこはご愛嬌という事で。
解体が出来るイースがいるからギルドの解体サービスは受けなかったけど、魔物は時々ギルドに売った。時間経過しないアイテム袋について話すわけにはいかないから一応ね。あとお金はあっても困らないものだし。
時々アニスさんに「たまには魔石を売ってくれても良いんですよ?」と言われたが、「いざという時に持ってるとお金になりますから」と断った。実際は従魔に食べさせてるんだけど、これは極秘情報だもんね。
…極秘情報だっけ?多分、きっと、極秘情報だった気がする。
というか魔石を食べさせる時に魔力を込めたり、鞭を使う時に魔力を食われたりと結構魔力の消費が激しいな。お陰でレベルアップの時に魔力がグングン増えてるらしいけどさ。
さて、そんな感じでちょいちょいイースと買い物をしたりハニーに甘い物を買ってあげたりしつつ、魔物討伐をこなしてお金を稼いでいたある日、アニスさんは私にこう言った。
「Fランクの魔物討伐をどんどんこなしているので、もうEランクへの昇格試験も受けれますね!」
「あ、すみません。私達明日この町を出るんで受けれないです」
ほぼ反射的に口から出た言葉により、私達は明日ツギルクの町から出発する事になってしまった。…一応イースは「まぁ、一箇所にずっと居ると良く無いものねぇ。うっかり異世界人だってばれると厄介だしぃ」と言ってくれたし、ハニーも「私はミーヤ様に付いて行くだけですので、場所は特に気にしません」って感じの事を言ってくれたっぽい。良かった。
アニスさんには、
「ええ!?で、でもでもでも、依頼をこなした数で昇格試験が受けれるかどうかが決まるんですよ!?これ、違う町に行くとリセットされちゃうんですよ!?折角昇格出来るんだから、昇格してから旅立った方がお得ですよ!?」
と言われたが、昇格試験を受けたくないから旅立つんだよ…とは言えず。
次の町で依頼こなして昇格試験を受けるよーと答えをぼかした。ごめんねアニスさん。でもある程度調整しないとうっかりCランクまで行きかねないトコがあるんだよ私。Cランクから先は絶対になりたくないから最高でもDランクでのんびりしていたい。
なので昇格試験から逃げる為だけにツギルクから旅立ちます!
「ミーヤの判断は正しいと思うわよぉ。下手にランクが上がると注目度が上がっちゃうものぉ。変な事に巻き込まれる前に策を練るのは大事だと思うわぁ」
一旦宿屋に戻って荷物の確認をしていると、淫魔モードではないイースがベッドに腰掛けながらそう言ってくれた。
「あっはは…。ファンタジー小説だと皆どんどんランクが上がって大変そうだったからね。私が読んでたのでは大体美味しい魔物に釣られて狩ってたらランクが上がったって感じだったけど」
「そうねぇ。それと仲間にギルド職員とかぁ、現地の人間が混ざってるせいもあるかしらぁ」
私の魂を食べて記憶を共有してるお陰でこういった話も普通に出来るのがありがたい。説明無しで通じるって本当に助かるよね。
「幸いミーヤと最初に出会ったのはルールなんて見ない振りするのが常識の淫魔だったものねぇ」
「うん、本当にあの時イースと出会えて良かったよ。奇跡が起きてどうにか一人で町に行けたとしても、確実に誰かに異世界人だってばれただろうから。それを知った人が私を守ろうとしても、現地の人間である以上権力とかには負けるだろうし」
「そうねぇ…」
私の言葉にイースはふわりと扇情的に笑い、
「言ってなかったけどぉ、実は異世界人が見つかったら即王家へ報告するっていう義務があるのよぉ。異世界人だとわかっていながら王家に報告しなかったら反逆者扱いされたりぃ……本当に人間のルールが通用しない淫魔で良かったわねぇ」
と言った。
…待って何それ初耳なんですけど!?
「え、どういう事!?」
「異世界人イコール勇者orチート能力」
簡潔でわかりやすい答えに、すぐ真実がわかってしまった。
「…戦力確保?」
「それと魔王側に行かせない為かしらぁ。あと勇者の遺伝子を王家が確保出来れば強みよねぇ。他にも勇者が知っている異世界の知識とかぁ、方法とかぁ?昔は勇者がポンポン来てたけどぉ、ここ五百年程ご無沙汰だものぉ。結構廃れた知識が沢山あるのよねぇ」
「廃れたんだ…」
私の呟きに、イースは答える。
「当時から生きてる私みたいなのなら結構覚えてるんだけどぉ、人間の方は大分廃れちゃったわぁ。例えば砂糖。勇者が居た時代は勇者のお陰で調味料がたぁっくさんあったのぉ。安定した生産法も教えてたしねぇ。でもそれが面白く無いのはお金持ちでしょぉ?自分のトコで取り扱ってる物の価値が下がっちゃうのはねぇ…。だから権力とお金で土地や調味料を買収してぇ、自分のトコだけで管理し始めたのぉ」
「あー、それで皆に行き渡らなくなっちゃったとか?」
「それもあるんだけどぉ、普通に生産…育成って言うのかしらぁ?それに失敗したのよねぇ。もっと良い品種を作ってみせる!ってやった結果生産量が本来の半分以下になったわぁ」
「アホじゃねえのその金持ち」
初心者が株に手を出して通帳の丸が一つ消えた話を聞いている気分だ。
「まあ生産量が減ったって事は希少価値があるって事だからぁ、残りを貴族や王家に売るようになったのよねぇ。勇者が残したレシピって美味しいのが多いけどぉ、調味料も色々使うじゃなぁい?だから勇者の料理を知っている貴族達は金に糸目を付けなかったわぁ。……そして貴族達が金に糸目を付けず買った調味料ってぇ、数がかなり減っちゃってたりもした…意味はわかるぅ?」
「一般市民に行き渡らなくなった?」
「半分正解。ハニーはわかるぅ?」
「ヴヴ…ヴヴヴ?」
ハニーは「もしや…金額ですか?」と答えた。
何となくだけどハニーの言葉も結構わかるようになってきたな。
「ハニーせいかぁい。数が少ない物をわざわざ安い値段で一般市民に売る馬鹿は居ないわぁ。貴族達も欲しがっていてぇ、しかも高額で買い取ってくれる…貴族に売る以外の選択肢は無いわよねぇ。そんなのが数百年前からあったせいでぇ、調味料は結構高価なのよねぇ。甘い物も結構高額でしょぉ?」
「うん」
「ヴヴ」
そういえば武器屋ではレオナルドさんが砂糖入れまくったクッキーを出してくれたけど、あれは何だったんだろう。
「それはきっとかなりの高級品ねぇ。勇者が来てからは本当に美味しいお菓子が多かったんだけどぉ、今話したように砂糖とかの値段が上がっちゃって砂糖が多ければ多い程良いお菓子って広まっちゃってるのよねぇ。勇者が美味しいお菓子を広めてくれる前も似たような感じだったからぁ、これが時代は繰り返すってやつかしらぁ」
「おおう…レオナルドさん、高級品を出してくれてたのか」
「ヴヴー♡」
「ああ、砂糖たっぷりで甘いのはハニーからしたら嬉しい事だもんね」
「ヴー♡」
可愛らしいハニーを抱き締めてうりうりと撫でる。
「まあ、そういう感じでぇ、異世界人はお金になるのよねぇ。そういう理由もあって基本王家に報告が義務付けられていまぁす。戦闘能力があれば自国が強くなるしぃ、知識だけだったとしても充分国の利益にはなるわぁ。チート能力を持っていれば新しい物も作れるしでぇ、何としてでも他の国には渡したく無い存在よねぇ」
「うっわこっわ」
「うふふふふ、王家のイケメンや美女を宛がわれて子作りするくらいならかなり優しい対応と言えるくらいには怖いわよぉ?最悪の場合隷属させられてぇ、全部を奪われる事もあるわぁ。…というかぁ、昔悪い国に召喚された勇者が実際に隷属させられちゃってたっていう前例がぁ…」
「イースそれ以上は私が恐怖するだけだから止めよう!」
怪談話でノってきた語り部みたいになってるよ!
「うふふ、だからこそ一箇所に居付かずに旅をするのは良い事だわぁ。昇格試験を避けたのも正解。中には勇者だって事を国からも隠して冒険者をやってた異世界人も居たけどぉ、強い魔物を倒せるからって倒しちゃったのよねぇ。それで短期間でランク上げすぎて勇者ってばれたのよぉ」
「少なくとも私は勇者じゃないんだよねー…」
「勇者じゃなくても異世界人なのは事実でしょぉ?可能な限り人里では長居しない方が良さそうよねぇ」
「そうだねー」
私が読んでたファンタジー小説なんかではお風呂問題とかトイレ問題の為に積極的に人里に行く人が多かったけど……魔法でどうにか出来るからなー。
「あ、そういえば説明してなかったけどぉ、汚れを浄化して綺麗な状態にするクリーンっていう魔法もあるのよぉ。体にその魔法を使えば汚れが消えるからぁ、お風呂に入らなくても良いのよねぇ」
「え、そうなの?」
「そうよぉ。光魔法だから私は使えないけどぉ、ミーヤなら使えるわぁ。…ただしぃ、日本人であるミーヤには馴染まないと思うけどぉ」
どういう事?
「実際使ってみればわかるわよぉ」
「んー、じゃあやってみようかな。クリーン!」
そう言い光魔法を放つと私の体が光に包まれた。光はすぐに消えたが、確認してみると髪のベタつきが消えていた。服の効果でわかりにくいけど確かに綺麗になっている。
……けど、これって…。
「わかったぁ?」
「うん…」
「ヴヴ?」
期待と違って少し落ち込むと、ハニーが首を傾げてどうかしたのかと聞いてきたから答える。
「うーんとね、綺麗にはなるしサッパリもするんだけど、お風呂に入った後の爽快感は無いっていうか…。一区切り付いたぞ!って感じが一切無い」
「お風呂が好きな勇者達には不評だったのよねぇ、この魔法」
「だろうねー…」
お風呂を知っている人間からしたら、この魔法はとても物足りない。
他に手が無いからと仕方なくこれで済ませた勇者達はさぞ不満だったことだろう。
「それでぇ?明日出発なのは良いけどぉ、何かこの町でしておく事はあるぅ?」
「うーん、特には……。あ、メリーじいさんに一応お別れしとこうかな」
「他の人への挨拶はしないのぉ?」
「武器屋のブラウンさん達は一回きりの冒険者なんてよくある事だろうし。アーウェル達は…今会いに行くのは、ちょっと、色々とねー…。アニスさんは今日話した時点でもうお別れを言った気分だから良いかな。下手に会いに行って昇格試験進められても困るし」
「…じゃあ、私もそのエルフに顔を見せないとねぇ?」
……何か雰囲気が怖かったので、喧嘩は売らないでねとだけ言っておいた。
「おお、ミーヤか!どうかしたのかね?」
「メリーじいさんお久しぶりです。いえ、明日この町を出るので挨拶に、と。色々お世話になったし」
「そうかそうか、律儀で良い子じゃなあ。お小遣いをやろうか?」
「いらんです」
噴水の近くの花壇に水遣りをしているメリーじいさんに話しかけたら相変わらずだった。だから何故そうお小遣いをあげたがるんだ。
にっこにこな笑顔のメリーじいさんに頭を撫でられていたが、イースを紹介しなくてはという事を思い出し後ろに居たイースを腕を組むように引っ張ってメリーじいさんに紹介する。
「メリーじいさん!そういえばこないだは居なかったんだけど、この人が私の保護者みたいな従魔!」
「おお、お前さんが…む?」
イースを見たメリーじいさんは何故か目を少し細める。
「…お主、魔族か」
「ええ、そうよぉ」
む、何やら不穏な空気。
そういえばエルフは勇者側でイースは魔王側だったんだっけ。
感覚的には天敵に近いのかもしれない。
「えーっとメリーじいさん、イースは確かに魔族だけど、凄い良い人だよ。困ってる私を色々と助けてくれて、従魔にまでなってくれたんだよ」
私がそう言うとメリーじいさんは少し警戒を解いたが、やはり心配そうに言う。
「じゃがな、ミーヤ。魔族は人を裏切る事が多いのじゃ。……もし、こやつがミーヤを騙しておるのであれば…」
そう言いつつメリーじいさんが魔力を練っているのを感じる。
え、何コレ修羅場!?修羅場ってる!?
慌てて止めないとと思った瞬間、後ろからイースに抱き締められた。おっぱいが!おっきいおっぱいが背中に!イースの腕という安全レバーが無かったら弾力で前方にボーンしてたよ!
「そうねぇ…確かに前だったら、裏切りまでが入ったセットだったでしょうねぇ」
耳にかかる吐息が色っぽくて心臓がバックンバックンする。人前だぞ落ち着け私のハート!
「でも、今は違うわぁ。ミーヤは私を受け入れてくれた。…魔族の中でも信頼される事の無い種族の私を。種族を明かせば途端に嫌われる私の種族を知っても、ミーヤは驚くだけで拒絶はしなかった。……そんなミーヤを、私が裏切れるわけ無いでしょお?」
私を抱き締めるイースの腕に力が込められる。よりおっぱいが背中に押し付けられて内心がカーニバル状態でとても大変であります。以上現場からでした。
なんておふざけは置いといて、イースの言葉が私にはよくわからなかった。え、淫魔ってそんなに嫌われる種族なの?寧ろモテる種族じゃないの?だって淫魔だよ?日本のオタクがどれだけ淫魔に夢見てると思ってんのさ。
モンスター系のエロゲで淫魔は常連だと私は知っている。プレイはした事無いけどお姉ちゃんの持ってるエロゲのパッケージで知っている。つまりそれだけ淫魔が人気って事だと思うんだけど、こっちじゃそうじゃないのかな?
私が呑気にそう考えていると、メリーじいさんは真面目な顔で一度頷いてから私に問いかけた。
「ミーヤ、ミーヤはこの魔族が信頼に足ると、心から思っているかね?」
「そりゃ勿論」
即答。
これ以外の答えは無いんだから即答でも問題は無いだろう。
だって普通に最初はイースしか頼れる人居なかったし、今はハニーも居るけどやっぱりイースを頼りにしちゃうし。何よりイースは誤魔化す事はあったり言わない事もあったりするけど、嘘は吐いて無いもん。
…私が気付いて無いだけかも知れないけどそれは考えないでおく。
「……そうか。まあ、従魔である以上はミーヤの領分じゃしな。部外者である儂が何か言う筋合いも無いか。…イースと言ったか?キツい言い方をして悪かったな」
「いいえぇ。疑われるのは慣れてるしぃ、貴方の場合はミーヤを心配しての言動でしょうから気にして無いわぁ。…ミーヤをそこまで心配してくれるなら、私も貴方を信用出来るしねぇ」
あ、イースの腕の力が少し緩んだ。少しピリピリしてた空気も元に戻ったし、これは良い感じって事かな?あービックリした。いきなりバトルが始まっちゃうかと思ったよ。
同じ様にホッとしているハニーを撫でてもふもふを堪能する。あー落ち着く。
「ああ、ミーヤも驚かせてしまってすまんのお。エルフは勇者と共に魔族と戦う事が多かったから、つい魔族の気配に反応して…」
「あ、ううん、大丈夫。よくわかんないけど丸く収まったみたいだし」
「…ああ、そうじゃな」
優しく微笑んだメリーじいさんに頭を撫でられる。流石はエルフ。輝くお顔だ。美形の笑顔が眩しすぎて目が潰れそう。これでおじいさんなんだよ?やばいよねエルフ。
そんな事を考えていたら、メリーじいさんは何かを思い出したように声を上げた。
「おっと、そういえば明日ミーヤが旅立つという話じゃったな」
「本題を忘れないでおじいちゃん」
「おじいちゃん?…うむ、おじいちゃんという呼び方もまた良いものじゃなあ」
何か凄い嬉しそうだけどそういう意味のおじいちゃんじゃない。おじいちゃん大丈夫ですかー?のノリの方のおじいちゃん呼びだ。孫が祖父に言うタイプの方では無い。
メリーじいさんはとても嬉しそうに何度もうんうんと頷いていたが、思い出したように懐に手を入れ、何かを取り出した。
「うむ、古い品じゃが魔力はちゃんと通るな。ミーヤ、少し後ろを向いておくれ。あとイースもミーヤから離れてくれんか?」
「……それってぇ」
「ほう、わかるか?」
「わかるわよぉ。私は見た目程若く無いものぉ。…ミーヤ、後ろ…こっちを向いてくれるぅ?怖いものじゃないから大丈夫よぉ」
「え、あ、うん」
よくわからないままにイースの方へと体の向きを変える。
何だろうと脳内をハテナマークで埋めていると、首の辺りにメリーじいさんの手が見えた。同時に、シャラリと細い金属の音も聞こえた。
「よし、もう良いぞ」
言われるがままにメリーじいさんの方に振り向き、首の所を確認する。
首には、とても細やかな装飾が施されたネックレスが下げられていた。
「うわ、綺麗。メリーじいさん、これは?」
「うむ、それはエルフから他の種族へと渡す親愛の証じゃな。その装飾は術式となっていて、エルフが魔力を込めると他のエルフにその魔力で気持ちを伝える事が出来るのじゃ。わかりやすく言うと、そうじゃのう……手紙に近い。その時込めた魔力しか相手に伝わらんしの」
「でもその首飾りはぁ、信頼出来る他の種族に出会った時に渡す物、よねぇ?」
イースの言葉にメリーじいさんは頷く。
「うむ。儂は今この首飾りに「ミーヤはとても良い子じゃから信頼に足る」という念を込めて魔力を入れた。じゃから他のエルフに会った時、この首飾りから出る魔力でそれが伝わる。エルフに認められた人間となれば、他の堅物なエルフも多少は警戒心を解くじゃろうて」
「え、それ凄いやつじゃないんですか?良いんですか?貰っちゃっても」
「ああ、良いぞ。是非貰ってくれ。それがあれば他のエルフも素で接しやすいじゃろうしの」
ん?素?
「えっと、素って?」
「エルフはな、「エルフこそが優れた種!」と主張する者が多いんじゃよ。そして人間に対しては「大した寿命も生きていない者が出張るな」と言ったりする…んじゃが、それは人間が好きだから言うんじゃよなあ」
「んん?」
「ええとな、エルフ至上主義を語る者は多いんじゃが、本気でその主張をしとるのはほんの僅かなんじゃよ。大体は「エルフからしたら赤子の年齢の子が前線に!?心配!」みたいな気持ちでそう言っておるだけなんじゃ。素直じゃないんじゃよなあ、皆」
ツンデレかよ。
「確か昔、勇者様はそういった者達に対して「ツンデレかよ」と言っておったな。意味はツンツンと突き放すような言動なのに、内心は大事に思っているがゆえの言動……じゃったかの」
勇者!勇者本当にあちこちで爪跡残してるな!特に当時を知ってるエルフが居るからよりしっかりとした情報が残ってるんだなエルフには!人間なんてどんどん廃れてるのにね!
「じゃが、少なくともその首飾りがあれば他のエルフが心を開いたという証明でもある。エルフのプライドよりもエルフが認めた大事な友人に対しての礼儀を優先するはずじゃ。素直に「心配だから後ろに居て欲しい」と言えるじゃろう」
「……つまり、今後私が出会うかもしれないエルフが心にも無い事を言わないように?」
「そうじゃな。それに儂も孫のように可愛らしいミーヤと己の種族であるエルフがぎこちない距離になってしもうたらショックじゃしのう」
うーむ、でもメリーじいさんの言葉が本当ならこの首飾り本当に凄いのでは…。ミサンガが反応してないから本当の事なんだな。
というかよくよく考えたら首飾りが凄いというか、エルフのプライドが高いだけなのか?
まあとにかく、この首飾りがあればエルフの身内認識みたいな感じになって、エルフのプライドによるツンデレ台詞にはなりませんよって事だよね!オッケー理解した!
「あ、それとその首飾りはエルフの里への通行チケットみたいなもんじゃから、持っておれば隠蔽魔法に弾かれずエルフの里に入れるぞ」
「それめちゃくちゃ凄いものじゃないんですか!?本当に渡して良いやつなんですか!?」
「ははは、良い良い。中々エルフと仲良くなれる他種族がおらんくてな、皆客人に飢えておるんじゃよ。エルフと冒険者パーティを組んだ者でも中々集落までは来れんし、その首飾りはそういう仲間とかでは無い者に贈る品じゃ。ほら、もし仲間じゃったら別に渡さんでも一緒に集落まで行けば良い話じゃろ?」
「確かに」
「旅に同行しとる仲間では無い、というのに、同じ種族であるエルフが認めた者。それだけで集落は喜んで宴会するじゃろうな。儂が知っとる限りでもここ数十年エルフの里には客が来ておらんし」
何やらフラグが立った気がするが気のせいという事で見ない振りをしておこう。
ん?というか、他にも渡した人は居るんだよね?
「あの、渡した相手の人が亡くなって子孫の方が首飾りを受け取ったらどうなるんですか?そうじゃなくても、強奪されたりとか」
「ああ、エルフが直々に渡した相手で無いと首飾りは反応せんのじゃよ。渡す相手を思って魔力を込めるからのう。一致せん相手じゃと不満げな魔力を放つから一目瞭然じゃ」
「不満げなんだ…」
エルフからしたら一目瞭然なら安心かな…と思ったが、エルフ以外の種族からしたら装飾が綺麗なネックレスでしか無い。エルフに詳しい専門家ならこのネックレスの価値もわかるかもしれないが、そこまで詳しく無い盗賊とかに目を付けられたら厄介だ。
一応隠しとこう。
魔力で察するという事なので、隠して居ても大丈夫だろうと判断してネックレスを服の中に隠す。首から下げてる事には変わり無いけど、これならパッと見わかんないよね!
「うむ、確かにポケットの中に入っていてもエルフならわかるしの。隠しておくのは良い事だと思うぞ」
「そうねぇ。意外と盗賊は出るものだしぃ、警戒は大事だと思うわぁ」
「ヴヴヴ!」
あ、やっぱり危険性があったのね。
「出発は明日でも、儂とは今日でお別れじゃろうしな…。別れの挨拶をしにきてくれてありがとう。エルフは長命ゆえに気付けば相手が老衰で亡くなっている事も多い。じゃから、こうやって別れの挨拶をちゃんとしてくれると嬉しいのじゃよ」
本当に嬉しそうな笑顔で、メリーじいさんは私の頭を撫でる。
……メリーじいさん、頭を撫でるのが好きなのかな。
「私もメリーじいさんにはハニーの事とかご飯とか宿とか、色々とお世話になったからちゃんとお別れを言っておきたくて。色々と、ありがとうございました!」
ペコリとメリーじいさんにお辞儀をする。
数日とはいえ思ったよりツギルクの町に長居をしてしまったが、明日でこの町とはさよならだ。
実はこの話、後半を書き直しました。
最初の段階ではメリーじいさんがめちゃくちゃイースを警戒して、それに反応してイースもめっちゃ喧嘩腰だったので。
別れは綺麗な方が良いですよね。




