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異世界で魔物使いやってます  作者:
異世界に来ました
21/276

ビックリドッキリキノコの裏側は超キモイ



「おはよぉ~ミーヤ♡大丈夫だったぁ?」


「うん、だいじょうむっぷ」


「心配してたのよぉ?」


「んぷむむむむむむむ」



 再会のハグは嬉しいんだけど、私の顔がイースのおっきいおっぱいに埋まっちゃってんだよね!もごもごとしていたらイースは離れてくれた。ほっ。



「確かエルフの老人にお世話になったのよねぇ?大丈夫だったぁ?」


「うん、凄い良い人だったよ」



 今日も朝からサラダとバロメッツの肉を野菜で包み煮込んだやつとか出してくれた。バロメッツの肉を野菜で包んだあの料理はロールキャベツにしか見えなかったけど、正式名称は何なんだろうね。

 メリーじいさんはハニーの蜜と花粉団子を入れたビンも忘れないようにってちゃんと渡してくれた。その上で、



「いくつかあった方が困らんじゃろ?捨てるのが苦手なせいで無駄にあるから持って行くと良い」



 って空き瓶を何個かくれたし。本当に良い人だ。

 もし悪い人や普通の人だったら蜂蜜も花粉団子もわざわざ渡さずに売り払うだろうからね!キラービーの蜂蜜は結構高値で売れるらしいし、花粉団子とかは貴族や王族に売れるからとんでもない値段らしい。

 でも「依頼をこなしたようなもんじゃし」ってお金を渡そうとしてくるのは断った。ご飯も宿もお世話になっておいて金を貰うわけにはいかない。依頼を受注してたならともかく、私は完全に偶然だったんだし。寧ろこっちがお金を払うべき立場だろう。



「……ふぅ~ん、本当に良いエルフだったのねぇ。ミーヤの言葉を疑ってたわけじゃないけどぉ、やっぱりエルフって勇者の隣にいるイメージが強いのよねぇ。どうしても警戒しちゃうわぁ」



 ああ、だからエルフの話題でちょっとむすってしてたのか。

 確かにかつての敵の仲間の種族って微妙な距離になるよね。



「まぁ、私の事は良いのよぉ。それでぇ?今日はどうするのぉ?」


「今日は普通に依頼を受けようかなって。ほら、これとかこれとか」


「どれどれぇ?…うん、良いと思うわぁ」


「よっし!」


「ヴヴッ!」



 イースに見せたのは、薬草を五つ摘んできて欲しいという依頼と、病気に効く病殺しという野菜を採取してきて欲しいという依頼、それと前に食べたビックリドッキリキノコがまた食べたいから採ってきて欲しいという依頼の三つ。

 依頼は一気に三つまで受けれるらしいんだよね。



「三つを完璧にこなせばFランクに上がれるはずだからぁ、丁度良さそうねぇ」


「え、三つで良いの?」


「基本はねぇ。三つともを問題なくこなせればオッケー。でも薬草と違う草を摘んできたりぃ、依頼の物を探し出せなかったりしたら依頼達成とは言えないからぁ、実は難しいのよぉ」


「ほへー」



 やっぱり勉強になるなー。

 さておき、依頼ボードからさっきの三枚の依頼を取って受付に行く。今日の受付のお姉さんは先日の人とは違って猫の獣人だった。うっわあもふもふ!触りたい!

 ……いかんいかん、確か獣人にとってブラッシングとはキスに近いもの。つまりもふもふしたいって言葉はセクハラになってしまう!!



「あのー、どうかしましたかー?」


「はっ!?すみませんお姉さんが可愛くて毛並みの良い方だったのでつい!」


「にゃ!?も、もー、お姉さんをからかっちゃ駄目ですよぉ!毛並みが良くて可愛いなんて…えへへへ♪」



 うっわこのお姉さんめちゃくちゃ可愛い。猫の獣人で柄は三毛。三毛は女の子ばっかりって言うよね。しかも目はパッチリとした綺麗な緑。あー、私猫派犬派とか無かったけど猫めっちゃ可愛い!

 ……じゃなくて、この依頼を受注しなくては!



「にゃっ!え、えっと、それで何の御用でしょうか?」



 あ、良かったお姉さんも今は仕事中だって思い出してくれたみたい。



「あの、この依頼を受注したいんですが」


「はぁい。えっとー…はい!薬草摘みと病殺し採取とビックリドッキリキノコ採りですね!受理します!」


「お願いします。…これでもうゲットしに行けば良いんでしょうか?」


「はい!あ、えっとですね、依頼はそれぞれ違いがありまして。この薬草摘みとビックリドッキリキノコ採りの方はギルドの方に渡して下さればそれで依頼達成となり報酬が渡されます。依頼の品もギルドの方から依頼人にお渡しします。そしてこちらの病殺し採取の依頼ですが、上の所に判子が押されてますよね?」


「押されてますね」


「こういった印が付いている依頼ですと、依頼人の所まで依頼の品をお届けする事になっております。理由としては色々ありますが、この依頼の場合は依頼人の妹さんが病に罹っていて看病をしなくてはならず、あまり目を離せないという理由が御座いますね」


「おおう…」



 病殺し採取の依頼、確実に成功させなくてはならんやつじゃないか。



「病殺しは大きな木の上の方に生る実なので、本来はFランクの依頼です。しかし依頼人の方の報酬が少ないのでGランクの依頼にされています。問題は……無さそうですね」


「はい、高い所でも頼りになる従魔がいますから」


「ヴヴヴヴー!」



 それにイースもいるしね。今は羽とか隠してただの付き添いみたいになってるけど。



「病殺し採取の依頼をされた方の家は…地図などはお持ちでしょうか?」


「あ、はい。町の地図なら買いました」


「ではお借りしてもよろしいでしょうか?そこに印を付けますので」


「ありがとうございます」


「いえいえ、これも受付嬢の仕事ですから♪あ、それとビックリドッキリキノコですが、一つでも採ってきてくれれば依頼達成です。複数のビックリドッキリキノコの場合は、数に合わせて報酬が増えますので見つけたらゲット!の方向がおすすめですよ!」


「わかりました!助言ありがとうございますお姉さん!私新米冒険者のミーヤです!以後お見知りおきを!」


「私はこのツギルクの町の冒険者ギルドで受付嬢をやっている猫獣人のアニスです!何かあった時に私を指名してくれると私のお給料が増えるのでよろしくお願いしますね!」


「わあ受付嬢の事情を隠す気が一切無くていっそ清々しい!」



 その後、アニスさんからこの世界の地図を買った。ちょっと高かったが仕方ない。

 ツギルクの町がここで、私が最初に居たクブリエの森はツギルクの町から見て東側。北側には山があって、西の方は草原になっている。そして薬草とか病殺しとかビックリドッキリキノコは南側のカヤドという名の森にあるらしい。

 カヤドの森はゴブリンのような魔物もいるから気をつけるようにと言われたが、まあイース達いるから大丈夫…だと思う。でも出来るだけ逃げた方が良いんだろうか。



「ミーヤも魔法が使えるから余裕よねぇ」


「あ、そういや私も戦闘手段あったね」


「そうよぉ。随分と良い出来の鞭も買えたみたいだしぃ、問題は無いと思うわぁ」



 現在、カヤドの森を散策中。

 イースも人目が無いからかいつも通りに角や羽を出した淫魔モード。

 …淫魔モードって何だ。

 さておき、薬草は辺りに結構生えていて採り放題みたいな状態だった。



「普通は採取しても余分な薬草は腐っちゃうのよねぇ。でも私のアイテム袋なら腐らないしぃ、摘んでいきましょうかぁ♡」


「そうだね、五つだけ私の方のアイテム袋に入れて、残りはイースの方に入れよう」


「ああ、任せとけよぉ♡」


「うっおビックリした!え、何でいきなり男になったの!?」


「人里じゃあミーヤの隣には女の俺がいるって印象が付いただろうからなぁ。人里では男の姿になれねぇって事だ。なら慣れてもらう為にも、こういう時に男になろうかってなぁ?」



 良い声で耳元で囁くの止めてくんないかな!?あと男のイースに対してあばばばってなるのはイースの見た目が好みだからだよね!だって町のイケメンにはここまでじゃなかったもん!

 好みのイケメンに背後から抱き締められてりゃ誰だって慌てるわ!



「…ふーん?へーえ?そりゃあ嬉しいなぁ?」


「うわああああ筋肉が!ガッシリとした硬い筋肉なのに弾力もあってこの手が勝手に動きそう!」


「男の俺も女の俺も、ミーヤのモノなんだから好きにしてくれて良いんだぜ?」


「ヴヴッ!ヴヴヴヴヴッ!」


「そ、そうだねハニー!今はビックリドッキリキノコと病殺しを確保するのが先だよね!」


「ヴヴヴヴヴ」


「なんと…」



 「それにそういう事は夜の方が良いと思います。全て終わってから好きにするのがよろしいかと。あ、それと私も好きにしてくれて問題ありません」という強い意志を感じた…。意外と内容が長い。



「ははは、確かに夜の方がじっくりたぁっぷり時間があるもんなぁ?」


「おーう…お手柔らかに頼みます」


「そんなに硬くならなくても添い寝くらいしかしねぇよぉ。エッチな方じゃなくて横で寝るってだけの方なぁ」


「お気遣いにマジで感謝」


「んじゃ、軽く説明なぁ。ビックリドッキリキノコはちょっと見つけにくいキノコなんだ。でも一つ見つければ三つ四つ見つかるし、運が良ければすぐ見つかる。ミーヤのラッキーガールの称号と俺のラッキーガールとラッキーボーイの称号があれば余裕だろうなぁ」



 あ、私には見れなかった称号の中にラッキーボーイって称号もあったのか。男にもなれるんならそりゃ持ってるよね。



「あと病殺しだが、見た目はトマトだ。というか味もトマト」


「トマトなの!?」


「ああ。まあこっちの世界じゃ生で食うのがトマト、煮る用のトマトが病殺し呼びって感じだなぁ」


「へぇー…」


「病殺しはそのままでも食えない事は無いが皮を剥いて加熱する事で本領発揮するからぁ、軽い病気なら治せるぜ。医者に行けず、光魔法で治してもらう事も出来ない貧乏人は大体病殺しで病気を治すんだ。まあ、加熱しないと効果を発揮しないって事を知らない奴も多いからそこが問題なんだけどなぁ」



 「トマトと病殺しは生用か煮る用かの違いしかねぇからなぁ」とイースは溜め息を吐いた。




「依頼人が知らなそうなら教えないとだね。妹さんの為にも」


「…ああ、そうだな」


「ヴヴー♪」



 何で二人とも機嫌が良くなった?

 …よくわかんないけど、とりあえず病殺しの木を探し



「あ、ミーヤ足元ぉ」


「っっぶね!あっぶな転ぶところだったよありがとうイース!」


「…ああ、うん、いやそうじゃなくてぇ、足元の木ぃ」


「木?」



 足元、私が転びそうになった付近を見てみると薄紫色で傘が大きいキノコが生えていた。

 しかも四つくらい。



「…イースさんや」


「なんだぁ?」


「これ、ビックリドッキリキノコだったりする?」


「するなぁ。裏返すとカラフルな斑点模様があるだろぉ?これがビックリドッキリキノコの特徴」



 言われた通りにキノコを採って裏返すと、とても鮮やかな斑点模様が……。



「きっしょ!?」


「あ、投げたら駄目だろぉ。傷ついたりしたら報酬減るぜ」


「ごめんナイスキャッチありがとう…。じゃなくて!それかなり見た目がキツいよ!?」


「調理の仕方で味も食感も変わる食通が好むキノコなんだぞ?」


「私食通じゃないし!どう見ても毒キノコにしか見えない!」


「……仕方ねぇなぁ。じゃあここにあるビックリドッキリキノコは俺が袋に詰めてやるからぁ。袋越しならアイテム袋に入れても大丈夫だろぉ?ミーヤが受けた依頼なんだから、ミーヤが自分の袋から出して渡さないとなぁ」


「ううう…お手数かけます」


「ヴヴヴ」



 ハニーに「どんまい」とでも言うように肩をポンされた。

 でも日本の人なら絶対引くってアレ!キノコを裏返したら「デコった?」って感じにカラフルなんだもん!しかも斑点模様っていうか、小さい粒々が付いてるって感じなんだもん!全身がぞみぞみしたんだよ!



「はいはい、わかったってぇ。ホラ、普通の袋に四つ全部入れたからぁ、アイテム袋ん中に入れとけよぉ」


「ありがとうイース…。愛してるぜ」


「嬉しいけどもっとロマンチックな時に言ってほしい言葉だなぁ」



 うん、それは私も思った。ごめん。

 さておき、ビックリドッキリキノコが入った袋をアイテム袋の中に入れる。元の世界みたいな透明のビニール袋だったらちょっと嫌だけど、こっちの世界は中身が見えない布の袋が主流だから凄い助かった。ありがとう布。



「ちなみにぃ、ビックリドッキリキノコは見た目が女子受け悪い事でも有名でぇす。見つけにくい上に見た目もそれだからぁ、依頼を受けてもらい難かったりしまぁす」


「早く言ってよ!?」


「あはははは!多分あの猫獣人も、依頼を達成してほしいのは事実だから言わなかったんだろうなぁ」


「アニスさん…」



 少し落ち込んだけど、ハニーのふわふわな毛に顔を埋めて深呼吸。



「よっし回復した!主にメンタルが!」


「ヴヴヴヴ♡」


「「いつでも抱き締めてくださって構いませんよ♡」だってさぁ。でも人前では止めとけよぉ。顔を埋めるだけならともかく深呼吸はセクハラだからぁ」


「うっおマジか」


「マジだぜ」



 これからは気をつけなくては…。従魔にセクハラしてた魔物使いとして逮捕はちょっと勘弁してほしいからね!

 病殺しが生っている木を探しつつ森を歩く。

 途中でゴブリンとかスライムとかが出てきたけど、サックリ倒して魔石だけもらって残りは燃やした。証拠隠滅?何のことでございましょう。



「あ、あった。ミーヤ、あれが病殺しの木だぜ」


「え?あー、本当にトマトだ…」



 イースの指差した先を見ると、確かにちょっと背が高い木の上の方に赤い実が生っているのが見える。人間だと木登りをしないと駄目だし、子供だと少し危険があるもんね。だから本来はFランクなのかな?



「病殺しって一つで良いんだよね?」


「うーん、一つで充分だと思うが俺達用に何個か採っておきたいなぁ。ハニーは一つ採ってミーヤに渡してやってくれ。俺は何個か勝手に採るからぁ」


「ヴヴヴ!」



 そう言うとイースはふわっと浮かんで煮る用トマトこと病殺しをホイホイもいでアイテム袋に入れていく。イースに続くように飛んで病殺しを一つもいだハニーはすぐに戻ってきて、私に病殺しを渡してくれた。



「ヴヴー」


「うん、ありがとハニー。助かった」


「ヴ!」



 病殺しを片手で受け取って、お礼を言いつつもう片方の手でハニーを撫でる。

 そしてうっかり潰さないように病殺しをアイテム袋に入れて、っと。



「よし、結構良いのが採れたぜ~」


「あ、イースもオッケー?」


「ああ。で、今昼くらいだけどどうするぅ?飯にするかぁ?」


「うーん、そうしたいけど病殺しを依頼した依頼人さんに早く渡してあげたいから町に直行かな。アニスさんの説明が本当なら妹さんが病気で苦しんでるみたいだし」


「…おう、了解」



 何故そんな微笑ましいものを見る目?

 色気を含んでるのに微笑ましいものを見る目って器用だなイース。



「そんじゃあ帰りはどうするぅ?俺が抱えて森の入り口辺りまで運んでやろうかぁ?」


「え、本当?それなら早いね。お願いします」


「……従魔相手とはいえ淫魔に油断し過ぎなのでぇ、お姫様抱っこで運びまぁす♡」


「ほわっつ!?」



 …森の入り口近くまで、本当にお姫様抱っこで運ばれました。



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