病殺しと依頼人
「本気でお姫様抱っこ…しかも凄い速さで空中移動…」
「酔わなかったでしょぉ?」
「酔わなかったけどこっちは空中移動初心者だからね!?」
現在、ギルドに依頼の品を納品してから病殺しを依頼した人の家に向かっている最中である。いまだにちょっとふらついてる体をイースとハニーに支えてもらいながら歩く。
ちなみに今のイースは女版。町中では女状態でいる事にしたらしい。え、町に入る時?姿を消して無断で入ってたよ。言って無いだけで私の従魔である事には変わり無いし多分セーフ、だと良いよね…。
地図を見ながらまだふらつく足で目的地まで歩く。…町の端っこの方だけど、ちょっと貧しい感じ?スラムって感じでは無いけど、お家の修繕が出来てない感じの貧しさだ。
「地図の通りなら…この家かな?」
「そうねぇ。…ええ、合ってるみたいよぉ。中には人間が二人。片方はベッドの上で横になって、もう片方はベッドの横の椅子に座ってるわぁ」
「イースって透視も出来るの?」
「うふふ、さぁねぇ?」
なぜはぐらかした。
とても楽しそうな笑顔だったから単純にからかってるだけなんだろうけどね。
「じゃ、声かけるか」
「ヴヴ!」
「すみませーん、ギルドの依頼で病殺し持ってきましたー。依頼人の方はご在宅ですかー?」
扉をノックして声をかける。
ご在宅なのはわかってるけど一応聞いておくのはマナーだと思うんだ。
家の中からガタゴトと物音がして、少しの間を置いてから扉が開いた。
「……ほ、本当か…?」
「本当ですよ。はい、これが病殺し。…依頼人の方、ですよね?」
「…そうだ」
出てきたのは、私と大して目線の位置が変わらない少年だった。空色の髪に黒い瞳。まだ幼さが残る大きな目の下には隈が出来ている。この歳で作るもんじゃないでしょうに。
少年に促されて私達は家の中に入る。
少年の家は、正直に言って隙間風が寒い感じの家だった。部屋の隅には少し古そうなベッドが二つ置かれており、片方のベッドの中には誰かが…恐らく妹さんが寝ているようだった。
「…悪いが、今は茶を出してやれる程の余裕は家には無い」
「いえ、お構いなく」
「あ、で、でも大丈夫だ!ちゃんと依頼の報酬の分は取ってあるから!……ただ、妹のリーンの看病で今はお金が稼げなくて…。つ、追加報酬とかは、ちょっと、出せなくて…」
「いや本当にお気遣い無く。年下の少年に追加報酬寄越せとか言う外道じゃないんで」
「……年下?」
「…ん?年下だよね?」
一瞬、私達の間に天使が通った。
「えっと、私はミーヤ。昨日冒険者になったGランクです。職業は魔物使いで17歳」
「17!?…俺はアーウェル。二年前に冒険者になった。…魔物を倒したりはしてないからFランクだけど。職業はまだ決まってなくて、13歳。…同い年くらいかと思った。ごめん」
「いや、いつも子供と間違われるから気にして無い。隣にナイスバディな女性いるからより子供に見えるよね」
「うふふふ」
にしてもこの少年、アーウェルは13歳か…。13歳なのに冒険者として先輩なのか。日本だったら中学一年くらい?隈作ってるしちょっと顔色悪くなっちゃってるし…やっぱ異世界なんだな。こんな幼い子供がこうも大変そうだなんて。
「それで、病殺しの報酬なんだけど…銅貨二枚しか出せなくて…」
「いや、依頼も報酬の所にそう書いてあったから問題無いよ?」
「ミーヤ、本当は病殺し一つで銅貨三枚くらい。それでも安いくらいなのよぉ?」
「へー…」
「う…や、やっぱり、もうちょっと報酬を足した方が良いか…?」
アーウェルは居心地が悪そうに視線を泳がすが、別に無いところからお金を毟り取る気は無い。出された銅貨二枚を受け取って言う。
「まあ社会勉強になりましたって事で良いよ。銅貨二枚、確かに受け取りました。それでこれが病殺しなんだけど、使い方ってわかる?」
「…使い方?それを食べさせれば治るんじゃないのか?」
あ、やっぱり使い方知らないのか。
「イース、説明お願いします」
「はぁ~い♡病殺しはぁ、そのままでも食べれますが加熱しない事にはその特性を発揮出来ませぇん。皮を剥いて熱を通りやすくしてぇ、スープとかにして病人に食べさせるのがベストかしらぁ?なんにせよぉ、加熱しないと病を殺すなんて出来ないわよぉ」
「……との事です」
「そ、そうだったのか…このまま食わせるところだった…」
恐らくなけなしの金であろう銅貨二枚を支払ったのに、それを無駄にしちゃうのはね…。危なかった。病殺しを渡す前に使い方を知ってるかどうか聞いといて本当に良かった。
「それじゃあ病殺しのスープを……私は作れないな。アーウェルは作れる?」
「…料理は基本、リーンがやってたから…。焼くだけなら、出来るけど」
「じゃあ私と同じで戦力外だね。イース、お願い出来る?」
「あらぁ?私が作って良いのぉ?ミーヤと契約してるとはいえ私は魔族よぉ?」
何で今更そんな事を言うのかなーと思ったけど、そうか。アーウェルの反応を確認しないとだもんね。私はイースの料理が美味しいって知ってるけど、知らない人からしたら魔族の手料理になるのか。しかも病気の妹に食わせる料理だし。
アーウェルは驚いたように少し視線を彷徨わせてから、覚悟を決めたように言う。
「…教えてもらわなかったら、俺は折角の病殺しを無駄にしてただろうから…。知ってても、作り方を教わっても出来るかどうかわからないし…。だから、その、作ってもらえると、助かります」
「……はぁい、わかったわぁ。病殺しのスープだから見た目は血の色だけどぉ、だからって何か仕込むわけじゃないから安心してねぇ」
何故不安を煽るような言い方をする。笑顔なのに目がちょっと怖いし。
「うふふ、注意はしておいた方が良いでしょぉ?それとぉ、私はミーヤの評判が悪くなって欲しく無いからちゃんとした物を作るけどぉ、他の魔族はどうだか知らないから簡単に任せたりしないようにねぇ~」
そう言い、イースは調理場の方に移動した。成る程、今回の件で魔族イコール良い人ってイメージが付いて他の魔族に騙されたりしない為の策なのか。
そういえば描写を忘れてたけど、アーウェルの家は平屋のワンルーム。入り口から見て奥の左側にベッド、奥の右側に荷物とか色々、入り口近くの左側に調理場、右側にテーブルなどが置いてある。
「あ、そうだわぁ。ハニーもちょっと来てくれるぅ?病気で弱ってるでしょうからぁ、HP回復の蜂蜜を入れた生姜湯でも作っちゃいましょう」
「ヴヴ!ヴヴヴヴヴ」
「うん、行ってらっしゃい」
「ヴヴヴ!」
イースに呼ばれてハニーも調理場の方へ飛んで行った。蜂蜜持ってるのはイースだよね?って思ったけど、イースが病殺しのスープを作ってる横でハニーが生姜湯を作り始めたから作業分担か。
……別に仲間はずれにされて悲しくなんてなってないよ。料理に関しては戦力外な私だ。
「…アーウェルの妹の名前、リーンちゃんだっけ?」
「あ、ああ」
「リーンちゃん、何歳?」
「…今年で8歳」
「8歳かー。…13歳と8歳で二人暮らし?」
「ああ。お袋は他所に男を作ってリーンが産まれてすぐに出て行った。親父はCランクの冒険者だったけど、数年前にドラゴン退治の為に召集されて死んだ」
「思ったより大変だった。無神経に聞いてごめんなさい」
「いや、あまり気にして無いから平気だ」
私も両親死んでるけど、アーウェルの過去は思ったよりキツイ過去だった。
Cランクからは緊急の討伐依頼とかに絶対行かないと駄目って決まりがあるらしいから、親父さんはそれで死んだのかな?うーむ、やっぱりドラゴンって強いんだな。
「ミーヤは?」
「ん?」
「ミーヤは何で旅に出たんだ?」
「いや?別に出る気は無かったんだけど気付いたら森の真ん中で気を失っててさ。やっべ死ぬって思ったらイースが助けてくれて、色々教えてくれて、どうにか今も生きてるって感じ」
「…ごめん」
「私も気にして無いから大丈夫だよ」
でもいきなりそんなん聞いたら驚くよね。年下の少年を落ち込ませてしまった。
今度からはもうちょっと設定を詰めるか優しい言い方にするか考えておこう。
「…親、家族は?心配とか…」
「私も両親既に死んでるからねー。お姉ちゃんは居たけど…どうなんだろ?家事の殆どはお姉ちゃんがやってたし、多分大丈夫じゃないかな。私の故郷には神隠しって伝説もあったし」
「神隠し?」
「神様に気に入られると神様の世界に連れて行かれるって現象。悪い妖怪…魔物が連れ去ったりもしてたらしいけどね」
「……変わった伝説だな」
「凄い田舎だから変な伝説がいっぱいあるんだ。山の神様のような魔物のような存在に神隠しをされた時は「あの子直前に青魚食ってたぞ!」って言えば返してもらえるとか」
「何で?」
「その山の神様みたいな存在、青魚が嫌いらしいんだよね」
「っぷ、ははは…!本当に変な伝説だな」
「でしょ?」
ちなみにこの話は天狗のお話だ。天狗は鯖とかが嫌いらしいので、「鯖食った○○やーい」って呼びかけながら探すと帰ってくるとか何とか。ちなみに天狗はショタ好きで育成好きである事も有名。かの牛若丸とか幼少期に天狗に育てられたらしいからね。
……昔っからパンチの強い存在は居るもんなんだね。
そんな事を考えつつアーウェルと話していたら、どうやらスープが完成したらしい。
「はぁい、病殺しのスープかんせぇい。これを飲ませて休ませればすぐ治るわよぉ」
「おお、良い匂いする」
「ありがとうございます…!」
お盆に載せられたスープを受け取り、アーウェルはベッドの方へ移動した。
私達はテーブルの方から様子を窺う。
「リーン、リーン起きろ」
「……ん…、おにい…こほっ」
「ああ、ほら無理に喋るな」
「ん…」
「はい、これ飲んで。病殺しのスープ。これ飲んで寝ればすぐに治るからな」
「…うん」
ベッドの上で上半身を起こし、スープを受け取ったのはまだ幼い少女。空色…というより、どちらかというと白いように見える髪にアーウェルと同じ黒い瞳の子供だった。
リーンちゃんはアーウェルからスプーンを受け取り食べ始める。一口食べると美味しかったのか、すぐにパクパク食べ始めた。
「ねえイース、リーンちゃんって何の病気だったのかな?」
「単純に衰弱ねぇ。栄養が足りてなかったのよぉ。体力が落ちて弱ってたせいで内臓も弱って…って感じねぇ、あれは。まあ病殺しは栄養豊富だからぁ、問題無く健康体に戻るわよぉ」
「そっか。作ってくれてありがとね、イース」
「…うふふ、ミーヤのお願いだものねぇ」
話していたらリーンちゃんはあっという間にスープを飲み干したらしい。さっきまで顔色が悪かったのに、今はスープのお陰か健康的な顔色だ。
食べ終わったのを確認してか、ハニーが生姜湯を載せたお盆を持ってアーウェル達の方へと飛んで行った。
「ヴヴヴ」
「きゃっ!?」
「っ!あ、ああ、キラービーか…」
「ヴヴッ」
「「こちらの生姜湯もどうぞ」っですってぇ。体力回復の蜂蜜も入ってるから飲んだ方が良いわよぉ」
イースの言葉に生姜湯もあった事を思い出したのか、アーウェルがハニーにぎこちなくお礼を言って生姜湯を受け取った。うん、うちの子にお礼を言うとはアーウェルは良い子だ。
一方リーンちゃんの方は、たった今家の中に知らない人が居た事に気付いたらしい。不思議そうな顔で隣にいるアーウェルに質問する。
「お兄ちゃん、あの人達は…?」
「あの人達は病殺しを採ってきてくれた冒険者だよ。黒髪の子…お姉さんが魔物使いで、もう一人と一匹はあの人の従魔なんだってさ」
「そうなんだ…」
……うん、今私の事を黒髪の子って言おうとした事に突っ込んだりはしない。
それはおいといて、リーンちゃんはアーウェルに渡された生姜湯を一口飲んで、
「…!美味しい!」
歳相応の可愛らしい笑みを見せた。
「そりゃキラービーの蜂蜜入りだものねぇ。今回はサービスだけど普通は高級品よぉ?」
くすくすと笑いながらのイースの言葉にアーウェルは驚いたようだったが、リーンちゃんは生姜湯が相当美味しかったのかゴクゴクと飲んであっという間に飲み干した。早い。
リーンちゃんは一息ついてからこっちに向き直り、さっきまでとは全然違うはっきりした声で言う。
「…あ、えっと、病殺しとか色々、ありがとうございました!」
「あ、いえいえ。私は病殺しの依頼を受けただけなんで。お礼は依頼を出したアーウェルと病殺しを採ってくれたハニーと病殺しの使い方を知ってて料理もしてくれたイースにお願いします」
私がそう言うと、リーンちゃんは素直にアーウェルやイース達を見てから頭を下げた。
「お、お兄ちゃんも皆さんも、本当にありがとうございました!」
「リーン…」
「うふふ、私はミーヤに言われたからやっただけよぉ。ねぇ?」
「ヴヴヴッ」
リーンちゃんのお礼の言葉に、アーウェルは涙を滲ませていた。イースとハニーもそう言いながら嬉しそうなのは隠せていない。
…実際、私は依頼を受けただけなんだよね。他の全部イースとハニーのお陰だもん。私はただアーウェルくんと会話してただけである。え、やだ私って役立たず…?
……頑張らねば。
「さぁて、とぉ。それじゃあ私達は帰るわねぇ。お嬢ちゃんも休んだ方が良いでしょうしぃ」
「あ、はい、ありがとうございます!」
「うん、元気になってね」
リーンちゃんにそう言って、家の外に…出た瞬間にイースの言葉を思い出した。
「アーウェル、ちょっと良い?」
「?何だ?」
「ちょいこっち。かむかむ」
「?」
手招きするとアーウェルは素直に家の外、私の近くまで来た。
背丈があまり変わらないから背伸びは特にせず、耳元で囁く。
「リーンちゃんは栄養不足で弱ってただけみたい。心当たりってある?」
私がそう言うと、アーウェルも同じ様に小声で返事をした。
「…肉は高いから、いつも森で取れる野菜を…」
「それが原因でしょうねぇ」
「うわっ!?」
小声で会話してたのにイースが会話に乱入。イースは心も読めるから私はもう慣れたけど、それを知らないアーウェルは背後から急に話し掛けられて驚いたようだ。
「驚かせてごめんなさいねぇ?でも、森で取れる野菜ってあまり種類が変わらないでしょぉ?育ち盛りの子が同じ野菜ばかりじゃ体の栄養バランスが崩れちゃうのも当然だわぁ」
「う…」
確かに…。せめて肉とか食べれれば…うん?
その時、私の頭に電流が走った!
「ね、ね、アーウェルってさ、解体は出来るの?」
「か、解体?解体は出来るけど…。リーンが元気な時は解体の仕事を手伝って、肉を現物支給してもらってたし…」
「じゃあさ、草原の方に居るっていうバロメッツは?逃げないらしいから狩れるんじゃない?…あ、もしかしてバロメッツだと野菜だから野菜の栄養しかない?」
うっかり大事な部分を忘れてたからイースの方を見て確認すると、イースはにっこりと笑う。
「いいえぇ。バロメッツなら野菜だけどぉ、肉に含まれる栄養も備わってるわぁ。確かにあの魔物なら植物だから逃げないしぃ、攻撃もしてこないわぁ。解体も出来るなら問題無いと思うわよぉ」
「よっしゃ!アーウェル!これからは草原の方に行ってバロメッツ狩ればオッケーだよ!確か毛がふわふわだから人気高くて売れるらしいし!」
「そ、そうなのか…?…わかった、これからはとりあえずバロメッツを狩って肉と金を貯めて…。あと、ちゃんと普通の魔物とも戦えるようにもなるよ。そうすれば安定してお金を稼げるようになるし」
リーンちゃんが元気になったからか、アーウェルはそう言ってニッと笑った。
うん、13歳らしい笑顔でとても良い。
「うん、新米の私が言える事じゃないけど、頑張れ!」
「そうねぇ。魔物の討伐が出来れば薬草摘みよりは収入が多いしぃ、生活も安定すると思うわぁ。…じゃあここでぇ、私からのアドバイス♡武器は武器屋に行けば一日貸してもらえるからぁ、借りて自分に合った武器を見つけ出すと良いわよぉ。詳しくは武器屋で聞くと良いわぁ。あとどうやら貴方は文字が読めないし書けないみたいだけどぉ、それじゃあ不便だろうから図書館で覚えなさいねぇ。ギルドカードがあれば本を借りれるんだからぁ、妹ちゃんと一緒に文字の読み書きを勉強しなさぁい。その方が便利よぉ♡」
おおう、イースから怒涛のアドバイス。私は頑張れとしか言えなかったのにイースが本当に頼もしくて助かる。凄く具体的なアドバイスだし。
…アーウェル、文字の読み書き出来なかったのか。気付かなかった。この世界だと文字の読み書きが出来ない子も普通にいるんだな…。
イースのアドバイスを頷きながら聞いていたアーウェルは、バッと勢い良く頭を下げた。
「…教えてくれてありがとう。武器の事とか、文字の事とか」
そう言い、アーウェルは頭を上げてこっちを見た。
…最初に見た疲れた目とは違い、生きる気力に溢れた目だ。
「今日を生き延びれれば良いと思ってたけど、もうちょっと高望みしてみる事にする」
「そうねぇ、それが良いわぁ」
「だから、もし俺が強くなって、もっと大人になって、ちゃんと稼げるようになったら」
ぎゅっ、とアーウェルに手を掴まれた。結構力が強くて痛い。
……え、待って何で私今手を掴まれたの?私の両手をアーウェルの両手がホールドしてんだけど?私の混乱を他所に、アーウェルは続ける。
「そしたら、リーンのお姉ちゃんに…俺のお嫁さんになってくれ」
アーウェルはとても真剣な瞳で私を見ながら、私の手を掴み、私にそう告白した。
……ほわっつ?え、何で私?
思わずおろおろしていたら、その考えが伝わったらしい。アーウェルが答えてくれた。
「ミーヤは依頼を受けただけって言ってたけど、依頼を受けてくれなかったら何も好転しなかった。…本当はもうちょっと報酬が多くないといけない依頼だったから、誰も受けてくれないんじゃないかって思ってた。だから、嬉しかった。報酬を上乗せしろって言われる事も考えてたけど、ミーヤはそんな事言わなかったから。色々と話した時にも、年下の俺相手に普通に謝ったり…そんな所が、良いなって思ったんだ」
「気持ちはわかるわぁ」
「ヴヴヴ」
小声だったがイースとハニーの言葉が普通に聞こえた。納得しないで。
というかこの展開だったら色々やってくれてアドバイスをしてくれたイースの方に告白じゃないんかい。何故に私?私普通の事しかしてなくね?
どう断ったものかと考えていたら、アーウェルは私の顔を覗き込んできた。
「……やっぱり、駄目か?」
「えーっと…」
「そんなに本気で受け取らなくても良いんだ。そういえばそうだったな、くらいに覚えててくれれば良いんだ。俺が勝手にミーヤを追いかけて、ミーヤに好きって言いたいだけだから。…だから、ミーヤを好きでいる事を許して欲しい…」
そんなん許可を求められても困りますがな!あああそんなすがるような目で見ないで!まるで私が悪人みたいじゃないか!こんな展開少女漫画で見た事ある気がする!(パニック)
…いや、うん、そうだね。相手は日本ならば中学一年とはいえ冒険者としては先輩だ。対等な相手としてきちんとはっきり………ここまで言われてバッサリお断りすんのはちょっとなあ…。日本人は優柔不断な国民です。
………よし!
「…わかった。好きでいる事はアーウェルの自由だから任せた。好きになるも嫌いになるもご自由に、だ。だから他に好きな子が出来たり、私への思いが薄れたら無理にその思いを維持しようとしなくて良いからね。スパッと私を切り捨てる方向で」
「…!それってつまり、良いって事だよな!?」
「ああ、うん、まあ、そうなんだけど」
…やっぱり遠まわしでも、断った方が良いかな。微妙に伝わって無いみたいだし。
「今はアーウェルを恋愛対象としては見れないけど…アーウェルが大人になっても私を好きだと言えるなら、その時にはアーウェルを恋愛対象として認識すると約束しよう」
「本当か!?」
「うん。大人になっても私が好きで、私の従魔より強かったらね」
「…わかった!頑張って強くなる!」
…アーウェルはとても素直に頑張ると言ったが、私の言葉の意味をわかっているイースは必死に笑いを堪えていた。うん、ごめんねアーウェル。私は万が一が起きないように酷な条件を付けた。
だって、私の従魔より強いという事はレベル三桁のイースより強くないといけないという事だ。目標があれば強くなる。強くなればモテるだろうから、強くなって他の可愛い子と仲良くなってくれアーウェルよ。
アーウェルの恋心を否定する気は無いが、初恋ってのはこういう扱いをされるものだと私は思う。別に子供の時に初恋の先生に同じ様な事を言われたのを思い出してしょっぱい気持ちになんてなっていない。
……告白した当日に先生は既婚者である事を知って夢を見る事すら出来ず初恋が一日で終わった酸っぱい思い出を思い出してしまった。




