船作成
「うおおおおおおお! 行けぇ! 我が戦艦ノアルト号よ、進めぇ!」
大海原を大きな木造の船が進む。
「そうだ! いいぞ! もっとスピードを――」
「も、もう無理ですよ王子様! これ以上速度を上げると帆か船かのどちらかが壊れちゃいます!」
「構わん! 俺の作った船が信じられないのか!? もっとスピードを上げろぉぉぉ!」
「ど、どうなっても知りませんからね!」
「うおおお早い! あ、スカイオクトパス出て来た!」
なぜ俺が船に乗っているのかと言うと、話は結構前に遡る――。
仮説...スカイオクトパスが船などが通る際の振動に反応して出現するのかを確かめるべく、船が必要になった。
船がありそうな港に行き、適当な商人に船を貸してくれるよう頼んでみる。
しかし...。
「物凄いスピードを出せる船!? ただでさえ人や物の運送で足りない船をそんな荒く使えとは、いくら王子様のご希望とあっても不可能ですよ!?」
「いや、スピードって言ってもこんな感じだから、こう、今俺が飛んでるくらいの速さ程度で良いんだ」
「尚更無理です! そんなスピード...船で出せる訳がありません!」
スピードを出さないと振動が起きないだろ!
まあ、王子一人に船を貸して壊されたりしたら色々と損害まみれになるし...仕方がないと言ってしまえばそうか。
じゃあどうしようか...。
もう最終手段だったが魔法をブチ込んで荒探しか...。
「...そんなに船が欲しいのなら自分で作ってみてはいかがでしょうか?」
「...それだ!」
近場の森林の木を幾つも切り倒す。
船にするなら木製の方が軽く、スピードが出るだろうと踏んで木を狩りに来た。
適当に購入した斧で何十メートルもの木がスイスイと倒れて行くのはブーストで強化した身体能力のお蔭だろう。
「お、おい、見ろよ...そんじょそこらで木が倒れて行くぞ?」
「あれは...ノアルト王子? 俺達のように冒険者活動をなされていると言うが...一体なんであんなことを...?」
「もしかするとご乱心なのかもしれない...気づかれないうちに通り過ぎよう」
森林付近の道を通っていく冒険者からそんな声が聞こえる。
おい、俺は乱心なんてしてないからな? 間違ってもそんな噂流すなよ...?
「いや、王子様一人で作れと言った訳ではなくて...」
あ、工場とかに頼めば良かったのか?
改めて港に行き、作った船を水辺にアイテムボックスから放り込む。
本来アイテムボックスと言えどこれほどの大きさをした物は格納出来ないが...ブーストで空間魔法を強化し、容量を強化すれば船は普通に中に入った。
「まあともかく、この船ならスピードは出せそうか?」
近場の貴族や船に携わってそうな人に意見を聞いてみる。
「まあ...木材製にこの小ささなら...しかし、人が乗ってくれますかねぇ...?」
まあ見た目だけなら木の塊みたいな貧弱そうな船なのだが...。
「無論、自作と言えどなるべく最高の物を作った。これには古代魔法の多少の攻撃なら跳ね返せる反射魔法や硬度を底上げするような物等、様々な古代魔法が付与されている」
「な!? 古代魔法を付与!?」
「そんな船なら下手に硬い性質の素材で作った戦艦よりもよっぽど強靭ですよ!?」
「こんな感じで...ブリザードランス!」
数本の氷の槍を生成、自作の船に向かった放つ。
しかしそれらは向きだけを変え、時間が巻き戻るかのように逆方向へ飛んで行った。
「す、凄い! 私の船にも是非この古代魔法を付与して頂きたい!」
「お、俺らの漁船も...!」
「あー...気が向いたらな...それで、この船なんだが...俺一人で運用するのは諸事情あってどうしても無理なんだ。誰か船で運転の手伝いをして欲しいんだが...」
「ならば俺の所の乗組員を何人か手配しましょう。その代わりに俺達の漁船にさっきの古代魔法を掛けてくれれば...」
名乗りを上げたのは船乗りらしい帽子を被った男。
「それだけで良いなら何人か船の運用が出来るヤツを見繕って欲しい」
「い、良いんですか!?」
「勿論」
「喜んで! すぐに何人か呼んで参ります!」
そういうなりその男はどこかへ走って行ってしまった。
そしてその男が連れて来た数人の乗組員と共に俺は大海原に出たのであった。
この世界の船員は大体が水魔法か風魔法を使える者だ。
水の流れを変え、帆を風で押し船を自由自在に進める。
更には船員達の息の合わせ方が非常に上手い。
魔術師レベルの魔法の火力が無くとも船を高速で動かせるのは、船員が全員で協力した結果、魔術師をもしのぐような効果の魔法が出せるからだろう。
俺が一人で船は動かせない、と言ったのは船が動いている時にスカイオクトパスが出てきたらそれを狩って回収しなくてはいけないからだ。
いきなりデカいイカのモンスターでも出てきて船を水中に引きずり込まれたら笑い事じゃ済まされなくなるからな。だってスカイオクトパスの死骸は船に置くつもりだし。
まずそんなデカいイカが居るか! って話なんだが、この世界の海はかなりの魔境だ。
でかいイカの一匹や二匹は結構出て来るし、海龍なんて奴がちょこちょこいるくらいだからな。
と言う訳で、船が襲われた時に勝手に逃げてくれるよう人の乗船が必要だったのだ。
何かあったとしても、たった数秒でいいから時間を稼いでくれれば俺がすぐ助けにいけるからな。
「うおおおおおおお! 行けぇ! 我が戦艦ノアルト号よ、進めぇ!」
と言う訳で冒頭に戻る。
かなりの時間船を動かしてみて分かったが、船が通るとスカイオクトパスはそこそこ出てきてくれる。
やはり振動等を感知して水上に上がって来るらしいな。
ちなみにノアルト号は古代魔法を付与しているので非常に頑丈で、普通の船では出せない速度にも見事耐えました。
木製なのになかなかやるな...俺も船も古代魔法も。




