勇者
「これなんてどうかしら?」
「あー、エルが良いと思うモノを選んだら良いと思うんだが...」
「そういう物じゃないの!」
いざこざから少し経ち、エルのしたかった買い物とは...服である。
俺は服を選んだりするのが好きではないし、そもそも服なんて必要ないと思っている...と言うのは全くの嘘で、単純に洋服に対する美的センスが全くない為、何を選ぼうにも「え? コレ選ぶの...?」みたいな顔をされる。
レオの為に旅先で買ってきたお土産...ゴブリンの砂時計を渡した時の顔は今でも忘れられない。
つまり自分で良かれと思ったモノは大体外れだ。
「俺はあんまり服とか分からないんだって、エルなら分かってるだろ?」
「でもノアに決めて欲しいのよ!」
だが、エルがどうしてもと言うのならば...圧倒的美的センスの無さを逆に活かすのだ。
俺が直感で選んだモノは絶対外れる、と言う謎の法則を持っているが、これがミソになる。
つまり――。
エルが手にしているのは、白色のワンピースと赤色のワンピース。
白色は目立った装飾のないシンプルな出来だが、赤色の方にはフリルや柄がこれでもか、と言うくらいに装飾が施されている。
俺の直感は――赤色の方を強く推している...が。
赤に視線を向けた瞬間、エルの顔がほんの僅か――。一センチにも満たない程であるが動いた。
これは――どっちだ?
心読魔法が使えれば話は早いのだろうが、あいにく心読はほんの少しでも魔力の才に秀でたものであれば弾かれる。
それくらい心読は難しいし威力も無い。
普通に使えば、弾かれるか読めたとしても2~3つの単語だろう。
国王は武術はそこそこだったが、魔術はてんでダメだった為、ブーストを使うことで容易く、そして鮮明に読めたがエルは違う。
ブーストを使っても弾く所か魔法使用を感知してくるだろう。
だから使えない。
が、今問題はそこではない。
この二択をどう切り抜けるか。
そう、俺の直感がハズレなら...。
「こっちの白い方がいいんじゃないか?」
直感とは違う方が当たりだ。
因みにこの方法は選択肢が三つ以上だと効力を成さなくなる。
「やっぱり? あたしも派手なのはあんまり好きじゃないからこっちにするわ!」
お、当たりか。よかったよかった。
「今日は楽しかったわ!」
夕暮れの勇格。
はにかみながらそう言うエル。
「ああ。これからまたお互いやることをしっかり頑張ろうな」
「任せて! ノアが留守の間は王都付近の安全は保障するわ!」
エル...もとい勇者の役目は、人民の保護、救出に尽きる。
基本的に少ない騎士達と共に王都周りを守り、冒険者では太刀打ちできない強力な魔物を倒す。
とにかく平和を守る事。役目はそれだけなのだ。
只、この国にはあまりにも騎士が少なすぎる。
勇者に依存した国。
勇者が居れば騎士は要らない、それは全く違う。
エルだって女の子。疲れることもあれば苦しむこともある。
それにエルは一人だ。仮に二匹の強力な魔物が現れたら片方を相手している間、もう片方は放置だ。
たった一人に国ほぼ全てを背負わせるのは――間違っている。
「エル...色々すまない。だが俺が王になった時には...」
「あたしはその気持ちだけで十分よ、ありがとう、ノア」
目を細めて笑いかけるエル。
風に吹かれて桃色の髪の毛が宙を舞う。
エルの姿は、山の向こうに沈む夕日なんかよりも、ずっと美しかった。
すっかり忘れてたブクマ感想誘導 是非是非
私事ではありますが、三か月やってたゲームで初めて優勝できました
難しすぎだろ




