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第36話 陽架琉の心の波

第35話の続きです。同じ日です。

陽架琉の心は、毎年やってくるあのひのままになる。

 陽架琉(ひかる)は、毎年のあの()になると数日間の記憶がおぼろげになる。


 家族がいなくなって、とてつもなくつらくて悲しくなるから。脳が無意識に、防御するのだ。


 心と身体が追いつかなくて、身体はあの頃より大きいはずなのに、陽架琉の心は不安定なままだった。


 魂蔵(ごんぞう)たちは、自分の心もつらいけど。それでも、陽架琉の心に寄り添わないと、壊れてしまわないか怖くてたまらない。


 陽架琉の身体は大きくても、命日とその数日はいつもよりも子供で良い。

 みんなは陽架琉が生きてくれたら、どんなことがあっても許せた。


 そう、生きてさえいれば。どんな苦しみがあっても何か合っても良いんだ。


2


 毎年やってくる命日(あのひ)のこと。


 陽架琉がトイレに失敗して、お風呂に連行された。

 そして、知永生(ちとせ)と一緒にお風呂に入って、みんなに着替えを手伝ってもらった。


 知永生たちが気を利かして、途中で寝てしまった陽架琉と一緒に魂蔵に寝ることを進めた。

 そして、魂蔵と陽架琉は、晩ごはんまでの間に昼寝をすることにした。

 

 時々、知永生たちは二人の様子を見に行った。

 陽架琉が少し苦しそうにしてたら、手を握って大丈夫と伝えた。

 そうすると、陽架琉は安心したのか落ち着いて寝息をたてる。

 魂蔵は、二人が部屋に来たことには気づいたが、陽架琉への対応を任せることにした。


3


 陽架琉たちが昼寝をして、一時間半ぐらい経った頃。


「陽架琉、おはよう」


 魂蔵は、目が覚めて泣いてる陽架琉に言った。


「陽架琉、大丈夫。じいちゃんはここにいるよ」


 魂蔵は、目の前にいる陽架琉にタオルで目元を拭きながら言った。それでも、陽架琉の涙は止まらない。


 廊下からバタバタと足音が聞こえたらと思ったら、部屋のドアを遠慮なしに開けられた。


「陽架琉」


 知永生は、出来る限り優しく名前を呼んだ。そして、陽架琉は後ろを振りかえって、三才の子供のように泣きながら手を広げた。


「陽架琉、大丈夫」


 知永生は、小さいな子供をあやすように抱きしめて、優しく背中をポンポンと撫でた。

 

 陽架琉は、必死に知永生にしがみついた。彼の力は同世代よりも弱くても、知永生は痛く感じた。


 知永生は、不安定な陽架琉に見えないように顔を歪めた。

 陽架琉の心の苦しみを、知永生は必死に受け止めるしか出来なくてつらくてたまらなかった。


「知永生」


 魂蔵は、陽架琉の心を受け止める彼の名前を呼んだ。


「ん? 」


 知永生は、魂蔵が差し出したモノを見た。


「陽架琉、寝起きで喉が渇いてると思うから。水を飲ましてやってくれ」


「了解」


 知永生は、既にキャップが外されたペットボトルに入った水を陽架琉に持たせて飲ませた。


「陽架琉、ゆっくり飲んだらいいからな」


 陽架琉が、勢いよく飲まないように誘導する。


 知永生は、陽架琉が水分補給をして少し落ち着いたのを見て安心した。


「陽架琉、トイレに行こう」


 陽架琉は、もうされるがままになった。知永生は、陽架琉を抱き上げて、トイレに連れて行った。


4


 魂蔵は、寝ていた部屋を少し片付けてから半分戸が開いた居間に行った。

 半分開いている戸が、まるで自分の心のように魂蔵は思った。

 居間に入ると、たけしが本を片手に座っていた。

 

「じっちゃん、眠れましたか? 」


「少しな」


「良かったです」


 たけしは、ホッとため息をついた。


「二人に、世話をかける」


「僕らは、好きでしてますから」


 たけしは、何度も聞いていた魂蔵の言葉に、ニコリとして言った。


「もし、ワシが死んだら」


「じっちゃんは、長生きしますよ」


 たけしは、魂蔵の低く鋭い言葉をさえぎるように、いつもよりも大きい声で言った。


「まぁ、そう言わずに聞け」


「はい」


「ワシが死んだら、陽架琉はもっと大変になると思うだ。陽架琉には、ワシ以外の親戚は海外にいる椿一家になる。もしもの時は、宮本家と秋原家が陽架琉のことで福祉機関を利用が出来るようにする予定だ」


 魂蔵は、今日の陽架琉の様子を見て、改めて覚悟を決めていた。


「福祉機関や病院や役所の手続きは、何かと親族が本人の代わりをしないといけないから。いちいち、海外にいる椿に一筆をもらうのも面倒だからな」


 たけしは、一度うつむいてから頭をあげた。


「僕は……。陽架琉くんのことに関しては、どんなことでも大歓迎ですが。椿さんは、なんて言ってますか? 」


「椿は、ワシのその時が来る前に日本で暮らすと言っている」


「えっ? 」


「ワシが、ふざけたことを抜かすなと怒った」


「えっ? 」


「ワシが何とか説得したら、椿は諦めたわ」


 魂蔵は、心の底では椿が良いなら日本に住んでも良かった。

 でも、長く海外に住んで働いていたら日本に住むのは大変だと思った。


 椿の子供はハーフで、見た目は外国人だ。今は昔よりも、外国人差別はないとは言ってもだ。

 誰かに差別をされるのは、悲しくてたまらないのをよく知っているから。

 

 椿たちが、陽架琉のために家族総出で日本に移住をしたり、別々で暮らしたりにということなって欲しくなかった。


 それは、陽架琉ために苦労をかけたくないし、椿の父親代わりとしての魂蔵なりの優しさと気遣いだった。


「陽架琉を海外に呼ぶのは得策でないのは、椿も分かってるからな。出来る限りの協力をするのは、続けてくれる」


「協力をしてくれるのは、助かりますね」


「金が足りなくなりそうなら、椿にたかれば良い」


 魂蔵は、ケラケラと笑った。


「じっちゃん、そういう冗談は言わないでください」


 魂蔵は、「すまなかった」と謝った。


「あとは、そうだな。椿は、日本で陽架琉の隣にいる人たちの存在がすごく助かるし、心強いって言ってた」


「そう言ってくれると、嬉しいです。椿さんは、毎年僕たちの誕生日にプレゼントをくれますから」


「椿、賄賂を渡してるな」


「下心は、少しあるとは思いますけど……」


「えっ? 」


「外国製の文房具や雑貨を送ってるのですが」


『陽架琉くんとこれからも仲良くしてほしい』

『魂蔵さんが、無理をしないように見張ってほしい』『魂蔵が何かやらかしたら、俺がいつでも説教をするので言って欲しい』


「って、いう内容のポストカード付きで送られるので」


「椿…… 」


 魂蔵は、頭を抱えた。


「じっちゃんは、長生きをすると思います」


 たけしは、涙をためて深呼吸をしてから、また話し出した。


「もしも、じっちゃんが目を覚まさなくなっても、僕たちは陽架琉くんの隣にいることは変わらないです」


「助かるよ」


 魂蔵は、安心したようにホッとため息をつく。そして、涙を流すのをグッと堪えているたけしの頭を撫でた。


 たけしは持っていたハンカチで涙を拭いながら、「へへっ」と笑った。


5


「どっちか来て〜 」


 トイレの方から、知永生の声が聞こえた。


「はーい」


 たけしが、返事をした。二人は、立ち上がって居間を出た。


 たけしが、トイレのドアをノックした。


「どうしたのですか? 」


「たけしか」


 知永生は、ドア越しで言った。


「はい」


「陽架琉が、未使用のオムツを奪い取って床に投げつけた」


「えっ? 」


「はぁ〜? 」

 

「あっ。じっちゃんも、いたのか」


「知永生、どうしてそうなった? 」


「分からない。なんか、気に触ったみたい」


 陽架琉がトイレを失敗して床を汚したあとは、サイズが合ったオムツを履かせている。予想通りに、オムツは少しぬれていた。


 お風呂に入ったあとは、陽架琉が寝てた隙にオムツを履かせていたので抵抗をされなかった。


 また新しいオムツに履き替える時に、陽架琉は知永生の手から奪って床に投げ捨てたようだ。

 

「陽架琉にも、プライドがあるからな」


「下着をとってきますね」  


「助かる」


 たけしは、またルンルンで陽架琉の下着を取りに行った。


「たけし、ブレねぇーな」


「ハハッ、そうだな」


 陽架琉は調子が悪いとき、無口になってされるが甘えたにもなる。

 でも、何か気に食わないとモノに当たることがあった。


「陽架琉、大丈夫」


 知永生は、陽架琉を支えながら言った。


「陽架琉、聞こえるか? 」


 魂蔵が、頑張っている陽架琉に向けてドア越しに言った。


「どんだけ失敗しても、投げ出しても良い。じいちゃんたちが、隣で受け止めてやるからな。大丈夫だからな」


「あっ! 」


 知永生は、驚いた。


「陽架琉が頷いた」


 二人は、陽架琉の頷きを喜んだ。今日初めて、陽架琉の意思で受け答えをしたからだ。


「知永生くん。陽架琉くんの下着を持ってきました」


 たけしが戻ってきて、トイレのドアをノックして言った。


「おう、助かる。鍵は開いてるから、そこの上に置いてくれ」


「分かりました」


 知永生が指示をした場所は、陽架琉のトイレ用グッズが入ってるカバンの上だった。


「知永生、俺たち先に居間に戻ってるからな」


「おう」


6


 少し時が経って、トイレの水を流す音が聞こえた。 

 そして、歩いている音が聞こえて、知永生たちが居間に戻ってきた。


「お待たせ」


 知永生が、背中を向けて座って窓から空を見ている二人に言った。

 彼らは、知永生たちの方に身体を向けた。


「遅かったな」


「陽架琉が、数歩だけ歩いてたからな」


「えっ!? 」 


 今は知永生に抱っこされた陽架琉を見て、たけしが驚いた。


「たけし? 」


 魂蔵は、首を傾げた。


「陽架琉くんが歩くところを、僕も観たかったです! 」


「そんなにキラキラした顔をしなくて良いから、陽架琉が座れるように座椅子の準備をしてくれ」


「分かりました」


「たけし、ブレねぇーな」


 魂蔵は、ため息を着いた。


7


 外がだんだん暗くなった頃。倉西家では、晩ごはんをみんなで食べていた。


「陽架琉くん、あ〜ん」


「知永生」


 魂蔵が横に座ってる知永生に耳打ちをする。


「どうした? 」


「たけしは、色々大丈夫か? 」


 知永生は、吹き出した。


「じっちゃん、何を急に言い出すんだよ」


 知永生は、近くにあったティッシュで顔を拭いた。


「たけしが、異様に陽架琉をかわいがってるからな。疲れや体調が、普段より悪いのかと思って」


 魂蔵は、また小さな声で言った。


「なるほどな。確かに、普段よりもおかしいとこはあるよ」


 知永生も、それにならった。


「そうだろう」


「あれは、竜輝(りゅうき)を意識してんだ」


「はぁ? 」


「竜輝は、じっちゃんの前でも陽架琉をかわいがってたけど。俺たちのまえでは、少し違ってたんだ」


 二人は、居間から廊下に出て話をすることにした。 

 たけしがやけどや怪我をしないかと陽架琉の見守りのことも考えたからだ。


8


 知永生は、竜輝のことを懐かしそうに話しだした。


『知永生くん。俺、学校やめたい』


『はぁ〜? 』 

 

『だって、俺が学校行ってなかったら、もっとひーくんと一緒にいれる。保育所の先生が、羨ましいよ。俺が知らないひーくんをたくさん見てるから』


『竜輝、重度のブラコンだな』


 彼の目には、とても笑顔で弟を溺愛する竜輝が映っていた。

 竜輝だけが、陽架琉のことを『ひーくん』と呼んでいる。彼が初めての弟に『ひーくん』と呼んだら、陽架琉がすごく嬉しそうに喜んでいた。

 それをきっかけに、竜輝は重度のブラコンになったという。


 竜輝は、その呼び方を自分と陽架琉以外には、断固として許さなかったらしい。

 


『陽架琉がかわいくてたまらないのに、家族の前では割と控えめにしなくても良いだろ』


『だって、恥ずかしいから』


『俺たちには、恥ずかくないのか』


『うん』


 竜輝は、素直に頷いた。長男である竜輝が自分たちの前では末っ子になっているのが、なんだか嬉しかった。

 自分たちを兄のように慕って素を見せてくれるのが、すごく温かくて居心地が良かったんだ。

 それが、変わらずにずっと続いていくんだと思っていた。


『知永生くん、良いじゃないですか』


『えっ? 』


 黙って話を聞いていた心友の言葉に、知永生は思わず驚いた。


『竜輝くんは、僕たちの前では素直になれてるんです。それに、陽架琉くんはかわいいですから』


 たけしがニコリと笑う。


『たけしも、陽架琉が好きだもんな』


『はい。竜輝くんと全く同じとは言えませんが。かわいい弟のようです』


『たけしも、俺と同じように竜輝の家によく遊びに行って泊まることもあるからな。陽架琉は、人に好かれる才能があるからな。その気持ちが分かるよ』  


『竜輝くん、黙ってますが。嫌でしたか? 』


 たけしたちは、沈黙してる竜輝の様子を見た。


『そうじゃないよ。陽架琉が誰にも好かれる才能で、たけしくんたちにとっても、弟ポジションって良いなと思って』


『ブラコン、すげぇ』


 知永生は少し引いていたが、たけしはニコリと笑顔だった。


9


 魂蔵は、知永生の話を聞いて少し頭を抱えていた。自分の知らない竜輝の素顔を知ったから。キャップオーバーになったのだ。


「たけしは、竜輝がもっと素直に陽架琉にデレることが出来ずにいたのに想うことがあったみたいで。今は、たけし自身のデレの半分と竜輝の本当の素直を半分にしたって感じ」


 二人は、陽架琉にデレデレのたけしを廊下から見た。


「こういう時だけでも、竜輝を意識して陽架琉と接したくなるんだ。俺がさっき、竜輝が嬉しいのに恥ずかしくなっていう口癖を真似たのもそうだよ。確かに、竜輝は生きてたんだって想いたくてな」


 知永生の瞳には、涙が溜まっていた。もう会うことが出来ない、弟のような存在の竜輝のことを想ったからだ。


「ワシが知らない、竜輝の素直な所を知れて良かったよ。まぁ、それでも無理をするなよ」


 魂蔵は、隣で支えてくれる知永生の肩をポンッとした。


「分かってるよ」


「それなら良い」 


 魂蔵は、竜輝が陽架琉のことがすごく大好きなのをより知れて嬉しかった。


「竜輝は、昔からきょうだいが大好きだった。みんなが家族のことが大好き過ぎて、遠慮して不器用で。やっと、本音を伝え合って過ごしていたんだ」


 魂蔵は、亡くした家族のことを想った。


「純は、すみれちゃんや子供たちを救おうとした。竜輝は、あおいを救おうとした。みんな、最期まで必死に生きようとしてたんだ」


 知永生は、魂蔵の本音を黙って受け止めた。


「何も悪くない大切な家族を、あの()が奪ったんだ。陽架琉が苦しんで、実年齢よりも小さい子供に戻ってもいいから。ワシは、陽架琉が生きてくれるだけで嬉しいんだ」


 魂蔵の声は、鋭くて柔らかくなった。


「ワシも知永生たちも。こういう時は、複雑な心になっても良いんだ。亡くなった大切な人たちを想うと、その人たちは生きてるのと一緒だからな」


 魂蔵は、ため息を着いた。


「そうだな、じっちゃん。俺たちも、こういう時は無理せずに過ごすよ」


「おう」


 二人は、深呼吸と伸びをした。


「あっ! 」


 たけしの声と何かが落ちる音が居間から聞こえて、二人は慌ててそっちを見た。


「陽架琉、今度はスープカップに攻撃したな」


 知永生は、「ハハッ」と笑った。


「何かが、気に食わなかったのか? 」  


「味かな。飲みたいのと違ってたんだよ。きっと」


「たぶん、そうだな」


 魂蔵も、「ハハッ」と笑った。


「二人とも、のんびりしてないで助けてくださいよ」


 たけしは少し離れたところで、状況を分析する二人に呆れて言った。


「マットを敷いているから、畳は汚れてないぞ」


「スープはぬるいから。やけどしないと思う」


 二人は、ゆっくりめに歩いた。


「じっちゃん、台所でスープの素を何種類か持ってきてくれませんか」


「おう」


「俺は、片付けをする」


 幸いスープカップは、マットのおかげもあって割れてなかった。

 それと、たけしには中身がかかってないので安心だ。


10


 魂蔵が、台所から何種類かのスープの粉末のパッケージを持ってきた。

 それを陽架琉の前に並べて、指をさしてもらった。


 陽架琉は、どうやらコーンスープじゃなくてコンソメスープが飲みたかったようだ。

 晩ごはんのおまけで付けたスープの味は、陽架琉に聞かずに決めたから気に食わなかったみたいだ。

 

 こういう時の陽架琉は、イヤイヤ期のような動きをすることがあった。


「陽架琉は、コンソメスープが飲みたかったんだ。相談をすれば良かったな。ごめんな」


 知永生は、陽架琉の頭を撫でた。

 

「陽架琉、満足そうだな」


 魂蔵は、ホッとため息をついた。陽架琉は、魂蔵の次に知永生に頭を撫でられると機嫌がよくなる。


11


 この年も家族を失った()から数日間、陽架琉は夜に何度か泣きながら起きた。

 その度に、知永生と魂蔵が必死にあやした。それを、二階の部屋でたけしは独りで聞くしか出来なかった。


 陽架琉は、家族を亡くしたあの()が毎年やってくるたびに、心と身体が不安定になっているのだ。


 この数日間は、みんなが寝不足になって苦しくって、とてつもなく悲しくてつらくてたまらないのだ。


 一刻も早く、心が落ち着くようになることを願うばかりだ。

読んでいただき、ありがとうございます。



補足

福祉的や法律は、よく分からない。この小説の中の福祉や行政や法律の仕組みとしてご理解ください。


9の補足

『俺がさっき、竜輝が嬉しいのに恥ずかしくなっていう口癖を真似たのもそうだよ』

→前話の第35話の12の時に出てきます。

 陽架琉がトイレを失敗して、知永生がお風呂や着替えといった介護をする。

 知永生もたけしも、他人である陽架琉を兄代わりとして汚れ作業といえることを当たり前のようにしていた。

 魂蔵自身はもう年をとって、中学生の陽架琉を抱き上げることが難しくて苦しかった。

 そして、知永生たちにそれをさせてしまうのことを魂蔵はすごく申し訳ない気持ちになる。

 でも、知永生には謝罪よりも感謝を伝えるほうが良いと思った。


 「知永生、助かった」と、魂蔵は感謝の言葉を伝えた。

 知永生は、その返事を竜輝がよく言っていた言葉で返した。

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