第22話 ちよちゃんが描く家族写真
じいちゃんは妻のちよこが亡くなり、かなり落ち込んだ。
二人で陽架琉が成人式を迎えるまで生きようと約束をしていた。
でも、ばあちゃんは息子と孫たちのもとに逝ってしまった。
じいちゃんは、昔から言っていた「誰かをとてつもなく悲しませる死にかたをするな」をばあちゃんは実行した。
誰かや自分で死なずに、眠るようにこの世を去った。
複雑だけど、息子たちのような死にかたをしなくて良かったとも思った。
でも、じいちゃんの家には自分と陽架琉だけが取り残された。それが、じいちゃんには苦しかった。
一緒に喜びや悲しみを分かち合って、あのひを乗り越えた生涯の伴侶を突然永遠に失った。
小学二年生になった陽架琉を年をとった自分が、今以上に頑張って育てなくてはならない。
でも、この悲しみをどうすれば良いのか分からなかった。
誰かが支えてくれると分かっても、今はほっといて欲しかった。悲しみに沈みたかった。
「あぁ、ばあちゃんもあの時に、そう思ってたのか」
じいちゃんは、そう言って仏壇に置いてるばあちゃんの遺影を見た。
じいちゃんの心は、壊れそうになった。
大切な人を失っても、時は残酷にすすむ。
「じっちゃん、来たぞ〜! 」
ドタドタと足音を立てて、聞き慣れた声が聞こえた。
「じっちゃん、夕方だから電気つけろよ」
「じっちゃん、ご飯を作って持ってきましたよ」
せがれとたけしが、家にやって来た。そして、薄暗くなった部屋の電気をつけた。
じいちゃんは、二人に背中を向けたままだった。
「じっちゃん、陽架琉が泣いて俺の家に来たよ」
「えっ? 」
じいちゃんは、せがれの言葉に振り返った。
そして、いつも横や近くにいた陽架琉がそこにはいなかったのに気がついた。
「「じいちゃんを助けて」って、泣いてた」
「じっちゃんに気づかれないように、一人で助けを呼びに来たんだって」
「今は、俺の家でみんなと一緒にいる。安全だ」
「僕は、ちょうどせっちゃんの家に遊びに行ってたんです。それで、一緒にこの家に来ました」
じいちゃんは、何も言わなかった。
「「じっちゃん、大丈夫? 」」
じいちゃんは、何も言わなかった。
せがれたちが、ばあちゃんの死後に時々様子を見に来ては陽架琉の世話や家事をして帰っていた。
その時も、じいちゃんはほとんど言葉を発さなかった。
それほど、妻の死に心が疲弊しているのだ。出来るだけじいちゃんをそっとしておいた。
「じっちゃん。このまま数日、陽架琉を俺の家で預かるよ」
じいちゃんは、驚いたあとにすぐに睨んだ。
「このまま、この家にいるのはやっぱり陽架琉には酷だよ。大好きなばあちゃんが亡くなって、大好きなじっちゃんが死にそうな顔をして会話をしない。それって、陽架琉にとって良い環境って言えない」
「僕は、せっちゃんの言い方はキツイと思うけど。賛成してるんです。だから、本当は陽架琉くんの荷物を取りに来ました」
「ワシから、陽架琉まで奪うんか!! 」
じいちゃんは黙って聞いてから、突然低くて怖くなるぐらいの大声を出した。
そして、机を思いっきり叩いた。
せがれたちは、一瞬恐怖に感じだ。
「じっちゃん、陽架琉を奪うわけじゃないんだ。陽架琉が、「じいちゃんを助けて」って頼んでくれたから。俺たちは、心を鬼にしてじいちゃんを助けようとしてんだ」
せがれは、今までじいちゃんのそういう感じのを見たことがなくて怖かった。
でも、陽架琉が助けを求めてくれて、本当に何が何でもじいちゃんを助けようと必死だった。
「じっちゃんの心が少しでも穏やかになれるようにと、僕たちは考えました。ばあちゃんが通っていた病院に掛け合って、すぐに通院やカウンセリングが出来るようにしました。お願いです。ばあちゃんや陽架琉たちが、大好きなじいちゃんに戻ってください」
たけしもせがれと同じように、じいちゃんを助けたかった。
自分たちができることで、じいちゃんの心を助けて、またいつものじっちゃんに戻って欲しかった。
じいちゃんは、二人の言葉にハッとした。そして、今日初めて二人の顔や言葉がよく見えた。
せがれとたけしは、泣きながら少し肩を震わせていたのが分かった。
彼らは、本当は怖くてたまらない中で、自分のために勇気を出してここにいるのだということを分かってしまった。
彼らは、「もしかしたら、じっちゃんもいなくなってしまうかもしれない」と想ったのもじいちゃんは分かった。
「すまない。二人には、何度も情けねえとこを見せたな」
じいちゃんは怖い顔から時々見せていた顔に戻った。みんなに情けねえと心の底から言った時の顔に戻った。
「本当だよ。俺、マジで怖かったから」
せがれの横で、たけしも賛同をするように頷いた。
「陽架琉を頼む」
「おう」
じいちゃんは、陽架琉をせがれの家に一週間預けることにした。
せがれたちと一緒にせがれの家の宮本工務店に、荷物を持って行った。
「じいちゃん、大丈夫? 」
陽架琉が、少し目を腫らしてじいちゃんを見た。
「少しだけ、大丈夫になった。陽架琉、心配をかけてごめんな。陽架琉がせがれのところに行ってくれたおかげで、助かったよ。ありがとう」
「ひかるは、おこってるよ」
陽架琉は、ほっぺを膨らませる。
「陽架琉、じいちゃんが悪かった。陽架琉も、ばあちゃんがお空に行って悲しいのにな。陽架琉が隣にいてくれてるのに、独りになったように思ってな。本当に申し訳ない」
「ちょっと、ゆるしてあげる。だから、じいちゃんはひかるをひとりにしないでね」
「分かった。じいちゃんは、陽架琉と一緒にいれるようにまたパワーアップしてくるから。陽架琉は、せがれの家でお泊りをして欲しい」
「い〜よ」
「えっ? 」
陽架琉が、思ったよりも簡単に承諾するのでじいちゃんは驚いた。
「陽架琉くんには、既に相談して了承をしてもらってます」
「学校もここから通ってもらうことになってる。学校にも、先に連絡はして許可をもらってるから」
陽架琉の緊急連絡先は、じいちゃんとばあちゃん以外に宮本工務店とたけしの家の秋原家になっている。
陽架琉の事情と倉西家を知る教師たちが、配慮をして特別に許可をしたのだ。
じいちゃんとばあちゃんが亡くなるか何かの事情で、すぐに陽架琉のもとに来れなかった時のためのさらなる緊急連絡先になる。
それになってると、彼らが学校に連絡すると陽架琉への対応がしやすくなるからだ。
「だから、安心してください」
たけしの陽架琉には見せない顔を、じいちゃんは見た。
「お前ら、外堀りを埋めすぎだろ」
じいちゃんは、頭を抱えた。
「まぁ、最終手段を使わなくて済みましたから良かったですよ」
たけしは、じいちゃんにさっきよりも怖い笑顔を向けて言った。
「それ、絶対に陽架琉に向けるなよ」
じいちゃんは、たけしの隣にいる陽架琉を見て言った。
「はい、もちろんです。陽架琉くんは、じっちゃんやせっちゃんと違って、素直で良い子ですから」
「おい、さらっと俺を入れるな〜! 」
急に、せがれにもたけしの怒りが飛び火した。周りは、少し笑う。
「じいちゃんがね」
陽架琉は、突然小さな声で話しだした。みんなは、その声に耳を傾ける。
「じいちゃんがね。つらくて、くるしいかおをしてるのがね。ひかるは、こわかった」
陽架琉は、そう言うと涙を流した。
「だから、おこられるとおもったけど。おうちからでてね。せーくんのおうちにいったの。ひとりで、おうちからでてごめんね」
陽架琉は、泣きながらも一生懸命に謝罪をした。じいちゃんは、陽架琉が一人で家を出てどこかに行くなと言っていたから。
陽架琉は、その約束を破ったことを謝った。
「陽架琉は、確かに一人で外に出た。その約束を破ったのをちゃんと謝ったから良い子だよ。陽架琉が、せがれの家に行ってくれたから、じいちゃんは助かったんだ」
じいちゃんは、また陽架琉に感謝の言葉を伝える。
「パワーアップしないとね。ひかるは、ゆるさないからね」
陽架琉は涙を拭って、少し怒った顔をして言った。
「おう。パワーアップして、たくさん陽架琉といるからな」
「うん〜! 」
「陽架琉、おいで」
じいちゃんは、陽架琉に向かって腕を広げる。
「わ〜い! 」
陽架琉は、喜んでじいちゃんにひっついた。
「さすがに、抱っこは難しいけど。ぎゅうは出来るからな」
生前のじいちゃん以外の家族は、よく陽架琉をぎゅうしたり抱っこをしたりした。陽架琉は、それが大好きだった。
その日の晩に、じいちゃんはせがれの家でご飯を食べた。
そして、追加の作り置きや病院やカウンセリングについての紙を受け取って、家に帰った。
「陽架琉は、さびしいのを我慢して笑顔で、家に帰るじいちゃんを見送ってた。それが、せつない」
せがれは、そう言ってしゅんとする。
「陽架琉くんが、この家に来てくれて良かったですよ。じゃないと、じっちゃんが寝たタイミングでこっそり車に乗せて病院に直行するはずでしたから」
たけしとせがれが、じいちゃんの家に行った時に飲み物に睡眠薬を仕込む。
そして、寝たタイミングで車に乗せて病院に連れて行こうと冗談半分に計画をしていた。
その時は、陽架琉が家にいないのが前提だ。
「たけし、それを陽架琉の前で言うなよ。そして、その顔を絶対に向けるな」
たけしは、陽架琉には見せない悪い顔をしていた。
「もちろんです」
「本当だよな?陽架琉に嫌われるからな」
陽架琉は、この時はせがれの家のお風呂に入っていた。何度も入ったことがあるので、勝手が分かる。
もちろん、せがれの父親や母親が近くにいて何かあってもすぐに駆けつけるようにはしている。
「はい」
「まぁ、この計画は犯罪になりそうだったからな」
「そうですね。じっちゃんはそれだけ大変な状況でしたから」
じいちゃんの家は、以前よりも片付いてなかった。
せがれの父親の宮本工務店の社長は、じいちゃんに気を使って忌引き休暇と足りない部分は有給扱いにしていた。
じいちゃんは、時々陽架琉のご飯を作ったり買ったお惣菜で用意をした。
せがれたちが持ってくる作り置きは、少し食べるだけだった。
みんなが生前のばあちゃんのように、じいちゃんがまた倒れるのでないかと心配でたまらなかった。
そして、その状態を子どもの陽架琉が見るのは環境的にとても悪いと思った。
だから、強引な手を使いながらじいちゃんのために、みんなが動いた。
「じっちゃんは、この一週間でいくつものミッションをクリアして、パワーアップをしてもらいましょう」
「そうだな。陽架琉が安心してじっちゃんと一緒に暮らせるようにな」
「はい。でも、あの時のじっちゃんの顔が今でも怖くて」
たけしとせがれが、じいちゃんの家に行って陽架琉を預かったという時のことだ。
じいちゃんが二人でも見たことのないぐらいの怖い顔で、怒鳴った。
じいちゃんはご飯をあまり食べずに少し痩せて、目つきが今までと違っている。
時々、様子を見に行っていたが、じいちゃんは背中を向けることが多かったり声を聞かなかったりしていた。
それでじいちゃんの健康状態をよく把握は出来ず、とにかく陽架琉のケアをするしかなった。
自分たちが想像もしたことのないじいちゃんの姿に、恐怖を感じた。
「あぁ、俺だって怖かった。それだけ、じっちゃんも苦しくて、誰かがまたいなくなるのが怖いんだって思った」
「はい。頭ではそうやって分かってるんですけど」
「今は、すぐに受け止めれなくていいよ。ばあちゃんだって、自分に合う受け止め方を見つけたんだから。あっ! 」
せがれはそう言うと、少し考えごとをした。
「せっちゃん? 」
「たけし、ばあちゃんがしてた受け止め方って家族の絵を描くことだったよな? 」
「はい。ばあちゃんは、「もしも、竜輝くんたちが生きていたらと思いながら描いてるのよ」って言ってました」
「そうだよな」
「何を考えてるんですか? 」
「うまく思い出せないんだけど。ばあちゃんとじっちゃんがその絵を見て言ってたのを思い出したんだよ」
いつものように、せがれたちがじいちゃんの家に遊びに行ったときのこと。
生前のばあちゃんがじいちゃんと仲良くその絵を見て楽しそうに話していて、何か約束をしていた気がする。
せがれは、「そこまでは、覚えてんだ」とたけしに言った。
「たぶん、アレですね」
「思い出したのか!? 」
「はい。でも…… 」
「でも、その約束を果たすためには、じっちゃんの許可が必要です」
たけしは、思い出したことをせがれに伝えた。
「それだ!さすが、たけしだ! 」
せがれは、喜んだ。
数日後、じいちゃんの家にせがれとたけしが家にやってきた。
「じっちゃん、頼み事があるんだけど。いい? 」
「まず、要件を聞こうか」
じいちゃんの家は、数日前に来たよりも片付いていた。
そして、じいちゃんの顔は少し穏やかな表情に戻っている。
「じっちゃんが大切にしている、ばあちゃんが描いた絵を貸してほしいです」
たけしが、そう言った。
「はぁ? 」
「あっ、別にじっちゃんから奪おうとしてるわけじゃないですからね。言っておきますけど」
「分かったから。ワシが悪かった。根に持っていいが、その顔をするな」
じいちゃんは、たけしの怖い顔を見たくなくて目をそらす。
「その絵たちは、大切に取り扱います。そして、じっちゃんとばあちゃんの約束を果たします。せっちゃんのお父さんの知り合いに信用が出来るツテがあるので、協力要請はしてますので」
じいちゃんは、少し考えて頷いた。
「早く返してくれよ」
「あと少しで、パワーアップミッションのクリアと約束の一週間になります。その時に、お返しをしますよ」
「せがれ、たけしってこんな性格だったか? 」
「まぁ、実はそうなんだ」
「二人とも聞こえてますよ」
「「すみません」」
パワーアップ計画の一週間が経った。
「じいちゃん、ただいま〜! 」
「おう、陽架琉! 」
「あっ! 」
「ん? 」
陽架琉は、元気に一週間ぶりに家に帰ったはずだったのだが。
急に何かを思い出したのか、せがれの後にささっと隠れた。
「ひかるは、まだおこってるからね」
「そうだよな。怒ったままで良いから、こっちにおいで。居間で、ちゃんと話そうか」
陽架琉は、一緒に来たせがれとたけしを見た。
「そうですね。陽架琉くん、お言葉にあまえて居間に行きましょうか」
「はい! 」
じいちゃんを先頭に、みんなで居間に行った。その部屋は、陽架琉がお泊りする日よりもかなり片付いてた。
「おへや、きれいだね」
「じいちゃんが、頑張って片付けたんだ。色んな人たちの監視のもとでな」
パワーアップミッションの内容に、部屋の片付けがあった。ばあちゃんが生前の時にも、一応片付けはしていた。
せがれとたけしの母親たちが、家に上がり込んで掃除のレクチャーを徹底して行った。
「陽架琉、晩御飯はじいちゃんが手作りした料理を食べよう」
「じいちゃんのご飯、やった〜! 」
じいちゃんは、ばあちゃんが生前だったときも不器用なりに料理をしていた。
それをさらにパワーアップするべく、たけしの父親とせがれの母親が料理のレクチャーをした。
「パワーアップのミッションを全部クリアしたぞ」
じいちゃんは、パワーアップミッションと題名がある紙をたけしたちに見せた。
そこには、通院やカウンセリングと服薬についてや家事全般を事細かいミッションが書かれていた。
そして、監督にきた人たちからの一言とクリアした証のシールとサインがあった。
まるで、学校の宿題で子どもが親にサインとコメントを貰って教師がチェックするようなものだった。
「陽架琉、じっちゃんのことを許せそう? 」
もうすでに許してそうな陽架琉に、せがれは聞いた。
「うん。ひかるは、ゆるすよ」
陽架琉は、まっすぐとじいちゃんを見て言った。
「じっちゃん、おめでとうございます。まず、お借りしていたばあちゃんが描いた絵をお返しをします」
じいちゃんは、宝物を嬉しそうに受け取った。
「そして、ばあちゃんと約束してたものを渡します。陽架琉くん、じっちゃんに渡してくれますか? 」
「うん! 」
陽架琉は、ラッピングされた長方形の形をしたものをじいちゃんに渡した。
「じっちゃん、開けてみて」
「おう」
じいちゃんは、ラッピングされたものを丁寧に開けた。
「おい、これって! 」
じいちゃんは、中に入ってたものを見て驚いた。
「そうです。ばあちゃんとじっちゃんが約束をしていた本ですよ」
「何で……」
「俺とたけしが前に、ばあちゃんとじっちゃんが話してるのを聞いてな。ばあちゃんが生きてるときには間に合わなかった約束。でも、じっちゃんがばあちゃんがいなくなったことを向き合える方法があればいいって」
「そして、僕たちはあることも思い出したんです。ばあちゃんが絵を描くことで向き合えたって。だったら、ばあちゃんとの約束を守ることで、じっちゃんも向き合ってこれからも生きてくれるんじゃないかって」
「じっちゃんは、それどころじゃないと思ってな。俺たちが代わりにその約束を守れるようにしたんだ。親父のツテに頼んだら、快く了承してくれたし、色味も原画と同じになるように頑張ってくれたよ」
「そうか」
じいちゃんは、短くそう言って溢れる涙を止めた。本を濡らしたくないからだ。
そして、じいちゃんは本を丁寧に一ページ一ページを丁寧に開いて、絵を見た。
見終わってから、また泣いて落ち着いてから口を開いた。
「ありがとう。ワシの代わりにばあちゃんとの約束を守ってくれて」
「良いんだよ。じっちゃんがいてくれないと陽架琉だけじゃなくて、みんながつらいんだ」
じいちゃんは、頷いた。そして、また本を見た。
「タイトルが良いな」
「僕が考えました」
「さすがだな」
じいちゃんは、感心するように言った。そして、表紙に書かれたタイトルを指でなぞる。
「『ちよちゃんが描く家族写真』。ワシがばあちゃんを「ちよちゃん」って呼んでたのを知ってたんだな」
「はい。実際に見たり、せっちゃんのお父さんにも聞き込みをしました」
「絵と絵の間や最後のページに書いてたりする言葉は? 」
「絵は、箱に入ってましたよね。それと僕はおばあちゃんと話す機会があったので、それをもとに書きました。ばあちゃんが元々書いてたものはそのままで、言ってた言葉は僕が書きました」
「たけしは、小説家の卵なだけあるな」
たけしは、嬉しそうに笑った。
『私は、息子の純とお嫁のすみれさん、その子供で孫の竜輝とあおいを亡くしました。とてつもなくつらくて悲しくてたまらなかった。
それでも、私にはまだ家族が二人います。そして、家族やその周りの縁で今を生きてると思います。
少しずつ、あの子たちが「大好きだ! 」と笑顔で言ってくれた絵をまた描いてみようと思います。
絵の中では、笑顔でいてくれたりそうじゃなかったりするかもしれないけれど。
絵は写真と違って、いなくなってしまった後も増えてのこせる思い出になるかな。
魂蔵さんが、「ちよちゃんの描く絵は写真だな」と嬉しそうに言ってくれたのが、私は忘れられないわ。
いつか、家族写真として私がこれから描くたくさんの思い出をまとめれたらいいな。
そして、魂蔵さんや陽架琉と周りの人にたくさん見て欲しいです。
私の大好きで愛おしい家族を見て欲しい。 』
『ちよちゃんが描く家族写真』には、そう締めくくられていた。
じいちゃんは、妻のちよこの言葉通りにするべく追加でせがれの父親のツテにまた印刷を頼んだ。
じいちゃんの家の保管用と陽架琉と一緒に見る用とせがれとたけしの家ように頼んだ。
じいちゃんも、ばあちゃんの願いを自分も叶えたかったからだ。
じいちゃんは、この『ちよちゃんの描く家族写真』の本を生涯大切にしていたのは、また別の話。
読んでいただきありがとうございます。




