第21話 ばあちゃんの心との向き合い方
この物語の成人式は、20歳で出席するという世界観です。
陽架琉のばあちゃんであるちよこは、火事で亡くした孫たちのためにあること少しずつしていた。
ばあちゃんは元々手先が器用で、絵をよく描いた。ばあちゃんは、それを家族に絵を見てもらうのが好きだった。
でも、あのひから絵を描く気になれなかった。心の余裕がなくなり、倒れてしまうぐらいに衰弱をしていた。
自分の絵を笑顔でなる家族が減ったと実感するのが辛くなってしまった。
カウンセリングや主治医と夫である魂蔵に、支えられて絵を描くようになった。
「ちよちゃん。ワシは、ちよちゃんが描く絵が好きだよ。無理に描かないとって思わなくていい。描きたい時に描いて、ワシや陽架琉に絵を見せてくれないか」
「分かりました。描けたら見てくださいね」
じいちゃんは、笑顔で頷いた。
ちよこは、竜輝やあおいの行事の服装を想像して描いた。
中学校の卒業式から高校の入学式、高校の卒業式から大学の入学式を時々涙を流しながら、少しずつ筆を進めた。
竜輝やあおいだけのと家族が並んだ絵を描いた。写真に撮られたくない魂蔵と陽架琉も、一緒に笑顔で並んでいた。
行事以外にも、日常の喜怒哀楽や生前の思い出などもだんだんと描けるようになった。
ちよこは、水彩や油彩の色鉛筆やペンなどで、もう写真で記録することが出来ない家族を絵にのこした。
描いた絵を見ると、さびしい気持ちや笑顔でこちらを見る様子に嬉しくもなる。
ちよこは、竜輝の成人式の袴を描くのには少しためらった。
「無理しなくていいからな。描きたくなったら、描けばいい」
じいちゃんは、そう言ってばあちゃんの背中をさする。
「はい。ありがとうございます」
ちよこは、時間をかけながら竜輝の成人式の袴を描いた。
「おぉ、良いじゃないか。これで、純の袴が受け継がれた」
ちよこが袴を描くのにためらった理由は、それだった。
純が成人式に来た袴を、本来なら実際に竜輝が着るはずだったからだ。
「今は、大切にこの家にしまってるから。次、着るのは陽架琉だな。それをみるまでは、長生きしような」
ばあちゃんは、涙を流しながら頷いた。
竜輝の二十歳の成人式は、陽架琉が小学校に入学する年だった。
ばあちゃんが、最期に亡くなった家族のために絵を描いたのはあおいの成人式だった。
嫁のすみれが受け継いた振り袖を、あおいが着て笑っている姿やみんなで並んでるところをを描いた。
そして、もう一枚にはすみれと並んで笑っている姿があった。
その振り袖は、今もじいちゃんの家にあった。
「お義母さん、すみません。この振り袖を預かってくれませんか? 」
「理由を聞かせてもらえるかしら」
「私が、成人式の時に来た振り袖でとても大切なんですが。私、不器用なので手入れが怖くて……。その、お義母さんのもとに預けていたほうがいい気がして。うまく言えないのですが」
すみれの申し訳なさと不器用さなどを考えて、ちよこは振り袖を責任持って預かった。
そして、丁寧に振り袖の手入れをして大切に保管をしてした。
いつか、あおいがその振り袖を着て笑う姿を見れると信じていたのだ。
まさか、すみれから預かった振り袖に袖を通す人もいなくなるとは思わなかった。
もしかしたら、この振り袖を受け継いで袖を通す人がいないかもしれない。
ばあちゃんは、陽架琉が小学二年生の八歳の時に亡くなった。
夜、じいちゃんと陽架琉とばあちゃんで川の字で寝た。
じいちゃんが寝てる途中で、ばあちゃんの異変に気がついて救命処置をできる限りして、起きてきた陽架琉に救命に連絡をかけさせた。
でも、ばあちゃんはそのまま眠ったままこの世をさった。
じいちゃんは、ばあちゃんが亡くなって少ししてあることを思い出した。
その年はあおい生きていたら、十八歳だった。
まだ成人式の年でもないのに、ばあちゃんは「今、描かなきゃ」と言って振り袖の絵を描いた。
その様子に、じいちゃんはうまく言葉に出来ないものがあったという。
『ばあちゃんが、自分なりに純たちのことを想って向き合えて良かった』
じいちゃんは、ばあちゃんの葬儀の時にそう語ったのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。
ばあちゃんは、自分の死を無意識に感じていたのかも知れない。そして、あおいの成人式を描いた。
亡くなった家族のことを想って、出来ることをして想い遺すことのないように空へ逝ったのだ。




