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公安  作者: 篠川織絵
通夜編
6/12

番外編 仮眠室の上司と部下

本編にはあまり関係ない香山と須崎のショートです。



 香山(かやま)さんは神経質なところがあるのか、普段は仮眠室を使わない。


 ただ、2日徹夜が続くとさすがに堪えたのか仮眠室で休むらしい、目頭を押さえながら、ふらつく足取りで出て行った。


 それから2時間ほどして、眠気と眼精疲労が限界を迎え、自分も仮眠室へと向かった。


 うちの課がの1番近くにある仮眠室は使う人が少なく、今寝ているのは香山さんだけだろう。


 なかに入ると、電気すら消すのが億劫だったのか付けっ放しだった。


 ふと、ベッドで寝ている上司が気になり覗いてみると、衝撃的な姿で横たわっている。ボタンとベルトがすべて外され、スラックスが半分脱げかけ下着が丸見えだった。


 一瞬、頭が真っ白になった。疲れた頭が最悪の結論を導き出す。...事後か?


 いや、さすがに香山さんも2徹目でそんな体力があるとは思わないが、証拠でも探すように自然と部屋を見回してしまう。が、他に誰もいない。


 落ち着け、自分。考えすぎだと思い直そうとするが、目の前の光景が妙に生々しく感じ、喉をゴクリとならした。


 自分も2徹目で疲れているのかもしれない。とりあえず掛布を引っ張り彼にかけようとした瞬間、香山さんが寝返りをうち、目の前にいる自分と目があった。


「ん...須崎(すざき)?」


 寝落きの掠れた声で名前を呼ぶ。


「起きてください、香山さん。状況がちょっと...まずいんで」


 彼は目をこすりながら体を起こした。香山さんのスラックスがさらにずり落ちて、下着が完全に露出する。


 香山さんは寝ぼけた目をこすりながら部屋を見回し、自分が掛布を持っている事に気づくと、眉を寄せて言った。


「須崎...さすがに行動に起こすのは軽蔑するぞ」


「えっ!?」


 一瞬、頭がフリーズした。掛布を持ったまま固まっていると、香山さんの言葉が頭の中でぐるぐると回る。


 完全に自分が脱がせたと勘違いされている。先日の車内での自分の発言が、更にこの状況に信憑性を生み出してしまっていた。


「ち、違います!隠そうとしただけです!」


 と慌てて弁解するが、声が裏返ってしまい、余計怪しさを増してしまった。掛布を落として手を胸の前で横に振ると、香山さんが笑った。


「落ち着けよ、冗談だ。暑苦しくて脱いだだけだ。まあ、須崎がさらに脱がせたいなら構わないぞ」


その言葉に、頭が一瞬熱くなった。香山さんの視線と、少し掠れた声に妙な色気を感じて、目を逸らしながら、


「冗談ならやめてください」


と呟くしかなかった。

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