7 数学者、測定への一歩を踏み出す
・ガイアの天体について
ガイアは地球と同じく球体の天体であると考えられている。実際にガイアの天体を一周した人物はまだ確認されていないが、短時間で長距離を移動することで時差が生じることは確認されているため、そう考えられる。また、ガイアを球体の天体と仮定した場合、球体の半径、質量は地球とほぼ同じである。測定機器が発達していないので細かい数値まで測定することはできないが、ガイアの重力加速度も9.8±0.01 m/s^2と、地球とほぼ同じである。
―大神学 (カール・レオン)『地球とは異なる異世界について』p.7
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Side レオン・カール 6歳
立てるようになってから、自分の背がぐんぐん伸びているのを実感している。日本であれば、柱の背の高さに傷をつけて成長具合を確認したのだが、この立派な屋敷では柱に傷をつけるのははばかれる。そういえば地球で最後に測った身長は168cmだったっけなあ。と、そういえば、
この世界の長さの単位ってなんだ?重さ、時間の単位はどうなっているんだ?
1m、1g、1秒。これら基本単位が地球のそれと同じでないと色々と面倒になる。ライナーに聞いて確認しよう。
「お父様、定規ってありますか」
「ああ、あるぞ、自分の身長でも測るのか?巻き尺もあるぞ」
「ありがとうございます」
書斎で書類とにらめっこをしているライナーから巻き尺を借りてきた。巻き尺は発明されていたようだ。さてさて、目盛りを見てみると…うん。どうやらこの世界でも1cmは1cmのようだな。よし。自分の身長を測ってみるか…って、一人じゃうまく測れないな。
「あらレオ。お母さんが身長測ってあげようか」
「あ、おねがいします」
「はい、じっとしてね…1m3cmね。1m超えたわね!レオがここまで大きくなって感動だわ」
「3cmと何ミリですか」
「えっ、とね…4ミリかしら。細かいところまで気にするのね」
「ありがとうございました」
クレアのおかげで正確な身長が分かったし、ガイアでもミリ単位で長さが測れることもわかった。さて次は1秒が同じか調べたいところだが、そもそもガイアに時間を計る道具があるかが問題だ。もしなかったら、自分でぴったり1秒で往復する振り子でも作ってしまおう。重力加速度が地球の値と同じと仮定すれば、計算で振り子の紐の長さを求められるし。
「お父様、この屋敷に時計はないんですか」
「ん、そこにあるじゃねーか」
「えっ、あ、ほんとだ。ゼンマイ時計だ」
今まで屋敷を結構探索していたのに1度も時計を見たことがなかったのは、自分の背が低くてうまく見えない位置にあったからだった。なんか悔しい。
「おうよく知ってるな。いくつも歯車が使われているらしいから、下手に触ってばらばらにするなよ」
「時計って高いんですか」
「べらぼうに高いぞ。それこそ貴族レベルじゃないと家に置けないからな。」
「そうなんですね」
「この時計は2ヵ月で1時間ぐらいずれるから定期的にツマミで調整しないといけないんだよなあ」
「それは大変ですね」
「それでも俺のおやじが持ってた時計よりずいぶんとマシだぜ?なんせおやじの時計は1週間で1時間ずれてたからなあ」
「てことは、この時計はとても正確なんですね」
「そうだぜ」
なるほど。地球でも昔は時計の誤差をいかに小さくするかに苦労したと聞く。2ヵ月で1時間ずれる時計は、今のガイアの人々にとっては「とても正確な時計」なんだな。現代の地球レベルは無理にしても、今のガイアよりは格段に正確な時計は作れるかもしれないな。いつか研究しよう。そして重要な発見がもう一つ。この時計は長針しかなかった。ガイアの人々は分単位の時間を気にしないで生活しているんだな。
さて、これからの予定をおおまかに立てよう。地球の知識があまり通用しそうにない、魔力関係を考えるのはいったん後回しにして、まずは地球の科学の知識で測れるものを考えていこう。
・長さ
巻き尺があったし、既製品を手に入れればよい。魔法をどこまで飛ばせるのかといったことを測ることにもなるだろう。
・重さ
分銅のようなものがすでにあるならばそれでよし。もしないならば、1リットルの水が1kgなのを使って1kgの重りを作って、あとはどうにかなるか。1リットルの水は10cm×10cm×10cmの水槽を作ればよい。10cmは巻き尺で測れるから、水槽を作ってくれる人を探すか自分で作ればOKだな。ただ、重さはしばらく必要ないかもしれない。
・時間
重力加速度が地球と同じであると仮定して計算によって、振り子の振れる時間も好きに調整できる。それで(ほぼ)1秒の振り子が作れる。ただ、振り子をつかうから0.1秒以下の細かい時間は難しそうだ。工夫すればできるかもしれないが、0.1秒ほど短い時間の測定は断念するかもしれない。使いやすさを考慮して砂時計も作っておきたい。時間は魔法の維持がどれくらい続くかを調べる時などに使いそうだ。
・電流
電気の強さはどうやって計ればよいのか分からない。電気の単位はアンペア、ボルトなどがあるが、測定機器の仕組みはさっぱりだ。これはパスだ。
・温度
地球では少し前まで水銀を用いた温度計があった。暖められた水銀が膨張し、ガラスの細い筒の中を水銀面が上下することで温度が分かる仕組みだ。水銀温度計を作れるかどうかはガラス加工技術があるかどうかにかかっているかもしれない。いや、そもそもガイアに水銀はあるのか。
うん。まずは「長さ、重さ、時間を測定できるようになる」を目指そう。これで最も重要な単位3つ、MKS単位系が完成する。




