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美味しそうな名前

 

 彼らの会話から察するに最後に出てきた男が花弦No.5で、兄様の上司(仮)の半裸金棒男がNo.9の様だ。

 そしてレティーシャがNo.15で、ハイドの妹であるグロキシニアがNo.7……以上が今、戦っている花弦4名の順位である。今まで花弦との戦いは下位のナンバーばかりだったが、ここからは順位が上の上位者との戦闘になるらしい。しかも上位者纏めて来たんだが! いきなり難易度上がり過ぎ! せめて単体で来いよ! 

 まぁ、六花とか言う飛び抜けた奴らよりマシかな。アイツらマジでヤバいから。色んな意味で! いや、纏めてこられるより、六花単体の方がまだマシか? どっこいどっこいだな……



「ほらほら!」


 最後に出て来た男の殊技は【触れた物を鋭利な刃にする】能力らしく、その辺に有った鉄パイプや釘なんかが鋭利な刃になり、これをこちらに飛ばしたり、そのまま剣として攻撃したりして来る。基本的には接近戦タイプの様だ。

 それを避けたり、受け止めたりしながらNo.9の金棒による猛攻をいなし、グロキシニアの4本の鞭を反射で避け、レティーシャの溶かす能力を殊技を使い回避する


「つらっ……」


 金棒の男の殊技は【怪力】らしく、振り上げるのさえ一苦労な巨大な金棒を軽々と振り回す。この男の攻撃を真っ向から受け止めれば、力で押し負けて飛ばされたので基本は避けるか往なすだけにしている。

 グロキシニア=ベルナールの4本の鞭は鋼鉄製なのか何かは知らないが、鞭が当たった場所が悉く壊れて行っているので当たればタダでは済まなさそうである。そして高笑いがとても似合っている。まさに女王様!

 レティーシャの殊技【見たモノを溶かす】能力だが、観察した所、これは【見たモノを溶かす】のではなく【見た場所一帯に有る物を溶かす】能力だと推測する。能力発動には一定の時間が必要な様で、見られても直ぐにその場から離れれば攻撃は受けない。


「レティーシャは見てから発動するのにタイムラグが有るから何とか避けれるな……」


 私は階段をひょいひょいと移動しながら相手4人を観察する。4人纏めて戦えてるって、私凄くない? 帰ったら師匠に自慢しよう!


「っあべし!!??」


 ドヤって居ると背中にグロキシニアの鞭が炸裂! 奇声が出た。きっと背中は真っ赤になっている事だろう

 めちゃくちゃ痛いな、この鞭!! 一回、当たっただけで服が破れた。それだけ威力が有ると言う事だろう。


「オホホホ! どうです! 私の鞭の味は!」


 痛みに喘いでいるとグロキシニアから女王様みたいなセリフが聴こえて来た。マジで似合うな。さすがハイドの妹。イカれてるわ!


「かなり痛いです……」


 調子に乗ると碌な事が無い。痛感させられました


 戦闘続行! 今度は油断せず、隙を与えず4人を相手にする。遠距離組が厄介なので先に仕留めたいが、近接2人が交互に攻撃してきて仕留めに行けない。なので遠距離組には魔法等で牽制しつつ、先に近接2人を倒そうと思う。

 近接2人には刀で戦いつつ、遠距離からの2人には銃と魔法、殊技で応戦する。少しずつ押して来て居る。このまま押し切りたい所だ。


「やはり生け捕りは無理では? 久遠様に言われているとはいえ……」


 突然グロキシニアが動きを止め、No.5の男に向かって言う。それを聞いたNo.5も動きを止め、私から距離を取り止まる。どうやらグロキシニアの話を聞くつもりらしい


「……あの兄が認める程の腕前ですし生け捕りは難しいでしょう」


 グロキシニアが私を見つめながらいう。それに従いNo.5も私を見つめる。いつの間にか他の花弦も動きを止め、私を見つめるだけになって居た。私はそれを上段から見下ろす。強者の余裕だ! ドヤァ!


「確か、君の兄 【ハイド】は強者しか認めない筈だったな」

「えぇ。なので純菜と、愚弟のアスターは兄様は認めて居ない。特に純菜に対しての当たりはキツイと報告が上がって居ますが……この者には普通に接している事から兄が認める存在である事が推測できる」


 初知りだ。ハイドは認めた奴以外は当たりがキツイらしい。別にどうでも良い情報を知ってしまった。ハイドと純菜の2人が話している所を見た事がなかったので、特に何にもないのかと思って居たのだが違った様だ。


「そりゃ、純菜も悩むわな」


 師匠もかなり純菜に対してキツ目だ。ギースはあまり興味無しだった。いや、突入前に純菜を切り捨てる作戦を立てている辺り、ギースもハイド達と同じなのかもしれない


 これ、パーティーとして大丈夫なのだろうか? 纏まり無いぞ?


「生け捕りは無理か? 久遠様は出来れば生け捕りにしろっと言っておられたが……」

「手足を捥げば大丈夫でしょう」

「成る程」


 成る程じゃないよ! 手足を捥ぐって、グロいよ! 嫌だよ!


「チィッ!」


 またも動き出した4人。暫しの休憩は終了! 短かったな!


 その4人から逃れるように私は高く跳躍する。思えば、この4人に構っている暇は無いし、別に戦う理由も無い。私は戦線離脱する事に。


 べ、別に勝てないからじゃないから! 時間が無いだけだから!


 っと誰に対してか言い訳をしておく。

 4人を置いて10階まで一気に駆け上がる。10階まで残り僅かとなった時……


「……っ⁉︎」


 急に視界が真っ暗になった。何も見えない


「ホッホッホ。4人共かなり苦戦していらっしゃる様子。この【グリド】がお助けしましょう」


 近くで声が聞こえて来た。誰だ?


「佳月殿。何も見えないでしょう? これは私の殊技【相手の視力を奪う】殊技です。お気に召して頂けたでしょうか?」

「お気に召す訳無いよね?」


 視力を奪うって、それは無いよ……。どうやって戦えば良い? まず、動く事も困難だ


「……あべしっ⁉︎」


 またも背中にグロキシニアの鞭がクリンヒット! 同じ奇声が漏れた


 慌ててその場から跳びのき距離を取るが、背後から凄まじい魔力反応! これはレティーシャの殊技だ

 それを避けると空気を裂く音が聴こえて来る。別の攻撃か!


 それも慌てて回避し別の場所に飛び移る。あぶねー


「ちょっと、グリド! 本当に視界奪ったの? 普通に動いてるんだけど」

「奪った筈なのですが……ほら、あの方の目を見て下さい。濁った色になっているでしょう?」


 ここまで避けられるとは自分でも驚きだ。何故だろう。もしかして私って天才? いや、待てよ? そういえば師匠に視界を閉ざして戦うやり方を習った気がする。それか!


「流石はリンドヴァル殿の弟子ですな。昔、リンドヴァル殿が、まだ花弦だった頃に一度使ってみたのですが、貴女と同じ様に無意味でしたな……」


 ここで納得した。師匠が何故、視界を封じて戦う術を私に教えたかを。師匠はこの男を警戒していたのだろう。確かに師匠は正しかった。ありがとう師匠。流石です師匠。


 しかし、視界が閉ざされた状態では、先程までの様に動き回れない。師匠と目隠し上手の際、ソナーみたいな超音波を発して位置情報やら地形情報を掴む魔法を編み出した。それをフルで使い必死で戦って居るが、その魔法の維持と、回避の両立が辛い。この状態で4人の相手をし続けるのは困難だ。現に先程から回避ばかりで攻撃が出来ていない。ジリジリと削られて行くだけだ。このままでは勝てない! 

 私の動きが鈍くなったのは4人も分かって居るのだろう。先程よりも苛烈に攻めて来る。被弾率も多くなった。流石にキツイ。

 タイムラグの有るレティーシャの攻撃と、大振りな筋肉ダルマの攻撃はまだ避けられる。しかし、小回りの効くNo.5と、鞭を振り回す女王様の攻撃は流石に当たる。まだ掠る程度に止められているが……ここままでは確実に押し切られる。


「どうするかなぁ」


 猛攻を仕掛けて来る4人を相手取りつつ、現状打破を考える。やはり1番はグリルだっけ? なんか美味しそうな名前のヤツを先に倒すのが良いだろう。

 私はソナーの魔法を広範囲に広げて、グリルを探す。


「うーん」


 なんか上階に2人居るが……どっちがグリル? この魔法、改良した方が良いな。


 私は階段を蹴り、一気に最上階に駆け上がった。そして、どっちか分からないので、両方に魔法を放つ。『パリン』と言う音と共に自身の視界が復活した。


 よっしゃ!! 復活した!!



「グリド!!」


 誰かの声が聞こえた。あ、この視界を奪う殊技を持つ男の名前は『グリド』だったのか! 惜しいな

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