第2王子と御対面
夜になり、いざ出発!
「佳月、ちょっと来い」
出発前に師匠にお呼ばれしたので側に寄ると、彼は私の髪の一部を取り、編み始めた。そして、一部を三つ編みにすると自身の髪飾りを外し、その三つ編み部分に装着。私は師匠の長いバージョンの髪型になった。
「行って来い」
ちょっと、感極まった。髪、結ってもらえた! 髪飾り付けてもらえた! これはご利益ありそうだ
「行くぞ。うん? お前、その髪型……」
「師匠にしてもらいました!」
「そうか」
そうして、私達はコルネリア様のお兄様が滞在して居る屋敷に、師匠とコルネリア様と向かう。師匠は屋敷から少し離れた所で待機予定だ。
3人でゆっくりと屋敷に向かう途中、私は思った。『王子は何故この国に居るの?』っと。まるで私達の居場所を把握して居て、先回りされたようなぁ。もしや、居場所がバレて居るのだろうか?
「あー、師匠か」
私は閃いた!
黒の宝具持ちには黒の宝具の場所が分かるらしいし、師匠の黒の宝具の所為で常に居場所バレてんじゃね? ならば逃亡とか難しくないか? 行き先とか筒抜けじゃん! どうするのこれ
私はそっと溜息を付いた。
◆
「来ました」
悶々と悩んで居ると、とうとう着いてしまった。ここからは敵地だ。気持ちを切り替えなければ! 師匠は早急に屋敷から離れた。
「お入り下さい。おや? 後ろの人は……」
「私の侍女です」
私が門兵に身分証を見せると門兵は態度を一変、下に見る様な態度を取ってきた。この感じ、久しぶりだな
「コルネリア様はこの様な愚鈍で愚図な侍女をお持ちなのですね。いやー、心が広いというか、なんと言うか」
相変わらず、ウィークトゥスは下に見られるな。下に見られ過ぎて、この感覚がクセになりそうだよ
「まぁ、ウィークトゥス風情ならスタニスラス様もお許しになるか……いいでしょう」
かなり上からだな。まぁ、兄で慣れてるからいいけど。
門兵に案内され、とても長い廊下を歩かされる。暫く歩くと何やら仰々しい扉を発見。門兵がそこの扉をノックし、中に居るであろうコルネリア様のお兄様にお伺いをたてて了承を得た後、中に入れられる
「おぉ! よく来た妹よ! さぁ、座れ。おい、お茶を持って来い!」
中に居た人の外見は、かなり残念だった。コルネリア様と同じく金髪だが、肥え太っていて見るに堪えない姿だ。痩せていればイケメンだっただろうに……太っていて油ギトギトな感じで、正直に言うと触りたくない。スタニスラス(もう、様は付けない)はコルネリア様を座らせた後、私を値踏みする様に見て来た。
「ふんっ。ウィークトゥスが侍女をしとるとわな……コルネリアも落ちたものよ。侍女は優秀でなければならんぞ? ウィークトゥスの女なんぞ娼婦としてしか機能せん。まぁ、コヤツは中々の顔立ちだしな……1回遊んでも……」
「それには娼婦業はさせていないんです。まだ、何も知らない生娘なのでお兄様のお相手はさせられません」
そうだぞ! 私の体は新品なのだ。来世はきっと妖精になるんだ!
「ふん。お前には、もっと良い侍女を当ててやる! 本来ならウィークトゥスなんぞ相手にしないが、今回は特別だ。感謝しろ! さぁ……何処から触ろうか」
近づいて来た。かなり近い。本当に辞めて欲しい。思わず真顔になりかけたが、気合いで笑顔を作り続けた。頑張れ、私の表情筋!
「お兄様、そんな事をしに来た訳では有りません。話をするのでしょ?」
「……仕方ない。では、まず何から話すかな」
コルネリア様のお陰で、私から第2王子が離れた。私は安堵の溜息を吐く。控えめに言って、生理的に無理。
コルネリア様が話し始める。私も後ろに控えながら、2人の話に耳を傾けて居たのだが……スタニスラスの後ろに控えて居る男が私をかなり警戒して居るのが分かった。先程、私達を連れて来た兵は扉付近で欠伸したり、ぼんやりしたりして呑気なのに、後ろの男だけが私を警戒している。もしかして花弦か?
「ならば、お姉様は無事なのですね! よかった……」
「そうだぞ! 【ディーデリヒ】も寂しがっていたしな! どうだ? 帰って来ないか? 安心しろ! 私が口添えしておいてやる」
【ディーデリヒ】とは現王の名前だ。その王様が寂しがっていた? そんな筈は無いだろう。あの王様は行く先々に刺客を置きコルネリア様を亡き者にしようと企んでいるのだ。その王様が寂しがる筈はない。いい加減な事を言う王子だな
「そうだ、このお菓子は美味いぞ? どうだ?」
「いえ、夕食を食べて来たので」
「遠慮せずに食べよ!」
さっきからやたらとお菓子を勧めてくるスタニスラス。怪しい……これは何か入っているな
「ほら、【ザルゾ】も言ってやれ」
「それよりスタニスラス様、私の忠告は無視されるので?」
「……あのウィークトゥスの事か? ウィークトゥスだぞ? 六花と戦えるウィークトゥスなんぞ居らんわ」
おおっと! これは! 伝わってた!
この後ろの男は間違えなく久遠と私が対峙した事を知っている様だ。だから警戒されて居るのだろう。
そして、何処となく見た事ある気がする。もしかして久遠戦の時に近くに居たのだろうか? あの時は六花の久遠の他に花弦も居た様だし、その中に紛れて居たのかもしれない。
「……私の忠告が聞けないならば、私は知りませんよ?」
「えぇい! 黙れ! 貴様は私の言う事を聞いて居れば良いのだ! 口答えはするな!」
「王に言われ、貴方に着いて居るのです。貴方の身を守る様にと……。それが分からない様ならば私は王の元に戻るまで」
「……待ってくれ! すまなかった!」
成る程。この後ろの男は王の駒の1人の様だ。スタニスラスの従者ではないのだな
「佳月、あの男は花弦だ。花弦No.19【ザルゾ】。殊技は確か鞭の様にしなる剣を自在に動かせる能力だった気がする」
「随分、パッとしない殊技ですね」
鞭の様にしなる剣を自在に操るって……殊技じゃなくても普通に出来るんじゃね? わざわざ殊技の意味有るの? てか、本当に殊技?




