たった一度きりの口付けを
創作お題bot(@asama_sousaku)より
『たった一度きりの口付けを』
「今日の放課後、話があるから教室に残っておいてね。絶対だよ?」
いきなり君はお昼休みに言ってきた。
「ん?いいけれどさ...?どうしたんだい?」
僕は聞く。分からなかったから。
「それは秘密ね?放課後に言うから!」
...うん。わかった...取り敢えず残れば良いんだろうね。
~*~*~*~
そうして放課後。僕は君に言われた通りに教室に残った。
僕は机を叩いてしまう。コンコンコンと。...君が言ったのに遅い...!もう30分はたっている。
君とは一緒に帰りたいが、こんなに遅いと流石に僕が帰りたくなってしまうぞ...!
そんなことを考えていたら廊下からタッタッタッと走ってくる音がした。そうして教室の扉が開かれる。
「はぁっ、はぁっ...ごめんね!遅くなっちゃった!」
「遅いぞ!何があったんだ?」
君が約束をすれば今まで遅れる事なんてなかったのに。
「数学の担当の先生に呼び止められちゃって...ごめんね...遅くなっちゃって...」
...そうか...あの先生は遅くなるな...話がいちいち長いからな...
「わかったよ。で、話ってなんだい?」
「...話はね...えっと...」
なぜか君はいきなり口ごもり始める。
...何故に口ごもる?
「どうしたんだい?」
話を遮るのは悪いが、どうしても僕は聞いてしまう。
「えっと...聞きたい事があるの。貴女は私の事が好き?それは何故?」
...何故いきなり聞くんだろう...?取り敢えず答えよう。
「一番大きかったのは一目惚れだね。君を見て惚れてしまったんだ。そこから君と関わってどんどん好きになっていったんだ」
今、話した事は事実だ。君に伝わっているかは分からないが。
君はなにか考え込んだようになった。
どうしたんだ...?そう思い君を覗きこむ。
君は僕に顔を隠すように反らしていく。
何で反らすんだよ。君の顔が見れないじゃないか!
「顔を上げてくれないか?君の顔が見れないよ」
「嫌だよ。今は上げたくないよ」
...上げてくれないか...まぁ、今はいいよ。
「そのままでいいから聞いてくれ。君の事は大好きだよ。さっき言った一目惚れは本当さ。信じないかは君次第だよ」
僕は思っている事だけを言う。
「...そうなの?本当?」
何故疑うんだ?疑っていないかもしれないが。
「そっか...ありがとう。これで気負いなく言えるよ」
...何をだ?君は何を言いたいんだ?
君は頭を上げる。
「私...貴女の事......だ...大好きだよ」
.........ん?.......今、君はなんと言った......?
...んん?...んん?...えっ!?
*~*~*~*
やっと言えた言えたよ。
ありがとう...
でも貴女は困惑している。私が急に言ったからかな?
「ごめんね...急にで...」
貴女はこちらを見たまま硬直している。
「ねえ、君は今、なんと言ったんだ?」
そうとう困惑しているようだ...なんかごめんね...
それでも私は貴女に言おう。
「私は...貴女の事が大好きなのよ!」
貴女に伝わっただろうか?
「...そうか...そうなのか...アハハ!嘘だろう?君が僕を好きだなんて!」
...混乱しすぎてる...ヤバい止めないと...
「だーかーらー私は貴女が大好きなのよ!!」
アハハと言って貴女は聞いてくれない。
ちょっと強硬手段でいくかな...嫌がられるかもしれないけれど...
「ねえ、私を見て。こっちを見て」
貴女は私の言葉を聞いていない。こうなったら私は貴女の頬を両手で挟んだ。貴女は少し落ち着いた。
私はそのまま貴女にキスをした。
貴女の唇が柔らかい。貴女を感じる事が出来る...
一分はしていただろうか。貴女が、わたしから無理矢理離れた。
貴女の顔は真っ赤になっている。
「...き、君は...本当に僕の事が...好きなのか...?」
さっきからそう言っているじゃない...
「ええ。そうよ。貴女の事が好きじゃなかったらこんな事なんてしてないよ」
そりゃあまあ、好きでもない人にキスなんかするだろうか。
「なんで貴女はいつも私を攻めるくせにこういう時は受けに回ってしまうの?」
さっきからの貴女の混乱のしよう...どうしてなのだろう?
「...そりゃあ君に告白されるだなんて僕は微塵にもおもっていなかったから...」
えっ?貴女は私の事が好きで私を落とすためにアプローチをかけていたんじゃないの?
「おいおい...言葉が出ているぞ...」
...まぁいいか。
「確かに君の事は大好きさ。でもね、今まで好きになった人告白して玉砕したこともあるから僕は君に好きだと言っても僕からは告白しないと決めたんだ。しかも君にどれだけアプローチをしても僕は不安で仕方がなかった。いつか絶対君が離れていくような気がして怖かったんだ」
...そんな事を貴女は思っていたのか...
「大丈夫だよ!私はどこにもいかないよ!私は貴女が大好きだから!ずっと一緒にいたいんだよ!」
貴女は俯いてしまった。俯きながら貴女は言葉を吐く。
「そうか...それは嬉しいな...ありがとう。でもね僕は不安なんだ。もしかしたら君を襲うかもしれない。急に君を殺したくなるかもしれない...それでもこんな僕でいいのかい?エゴまみれの僕で?」
...貴女は不安で仕方がないんだろう。言っている事が矛盾しかけている。
「ねぇ、貴女の終末思想は?」
貴女はバッと顔を上げる。
私は前に聞かれた質問をする。これが貴女を物語っているから。
「...ぼ、僕は...」
貴女は戸惑う。
「何故貴女はそこで立ち止まるの?貴女はそんな人だった?もう一度聞くわ。貴女の終末思想は?」
「ぼ、僕は...君と...君と一緒に死にたい!」
そう。貴女はそうでしょう?『私と一緒に死にたい』それが貴女の終末思想でしょう?
私はそれを聞いてから変わっていったのだから。
それから私は貴女と死んでもいいと思っているのだから。
「ありがとう...目を覚まさせてくれて。君がしっかり言ってくれたから僕も誠意を持って返すよ」
貴女は大きく息を吸い込んで言い放った。
「僕も君の事が大好きだよ。むしろ愛してるよ。こんな僕に力をくれてありがとう。感謝しきれないよ」
「ありがとうね。これからよろしくお願いします!」
良かった...貴女に私の気持ちが通じたよ。これからよろしくね。
「それじゃあ帰ろうか。また君に色々してもらわないとな」
...なんかヤバそうなんだけど逃げてもいいかな?いいかな?
私が逃げようとした時を見計らって貴女は私の手を掴んで来た。
「おおっと何処へいくんだい?逃がさないよ...」
...ねぇ!貴女の事が好きだけどなんかヤバかったら逃げるからね!逃げるからね!
私たちはぎゃあぎゃあ言いながら教室を後にした。
私たちは知らなかった。二人の気持ちは通じてもまわりの人たちの気持ちが合わないということを...
私たちは分からなかった。これが私たちの運命を決めていたということを...