月明かりに照らされる狂気
創作お題bot(@asama_sousaku)より
『月明かりに照らされる狂気』
「ねぇ、君は水かジュースどっちがいい?」
おじゃましますと部屋に入った時に聞かれた。
「間のお茶っていう選択肢はないの?」
私はお茶が飲みたかった。
「すまないね。僕はお茶は作らないんだよ。面倒だからね」
そうなのか。今日、私は始めて貴女の家に入った。しかもお泊まり。両親はどうなのかというと彼女は一人暮らしなのだ。だから全てのことを自分でしているといっていた。そのなかでもお茶は面倒だから作らない。貴女らしい答だ。
「そうなんだ。それじゃあ水をもらってもいい?」
それなら水を飲もう。
「ああ。分かった。少しだけ待っててくれ。そこのソファにでも掛けてくれ」
そうして貴女は台所に入って行った。
なんだか貴女の部屋はシンプルだった。クローゼットなど必要最低限の物しか置かれていない。もう一つ部屋があってそこが寝室らしい。二人で家に向かっている時に聞いたことだからあんまりあやふやだけれど。
そうして考えていると貴女が二つ水を持ってきた。
「はい、どうぞ。氷はいるかい?」
「ありがとう。いいや。いらないよ」
水を口に含みながら思う。
こうして貴女を見てみると可愛い。なんか悔しく成る程に。学校ではどうなのかとか噂でも聞くけどことごとく告白されても断っているらしい。好きな人がいるからと、自分の事が同性愛だということを言ったらすぐ離れていってしまうらしい。クラスの女子から聞いた事だけれど。
...好きな人は私の事なんだろうけれど。クラスの女子から聞いた時もみんな苦笑いをしていた。貴女が私の事を好きだということは女子からすれば分かるらしい。私も分からないから『らしい』になってしまうけれど。
「...どうした?なんか不機嫌そうな顔して?」
不機嫌は八割、貴女のせいなのになぁ。
「なんでもないよ。ところでさ、貴女はお泊まりは始めてなの?」
気になっていたことを聞く。貴女からいきなり「お泊まりしないか?」なんか言われた時何でなんだろう?と思ってしまったから。
「ん?始めてだよ。君が始めてさ。今まで実家でも誰も泊まりには呼ばなかったからな。呼ぶような余力も忍耐力も友達もいなかったからな」
...なんか悲しい事言わせたかな?余力は分かる。忍耐力は...?ん?よく分からない。友達は...なんかごめん。
「なんかごめん。嫌な事言わせた?」
謝っておこう。なんか聞いている私が悲しくなってくるよ。
「いいや。大丈夫だよ。その時は友達がいなくても悲しくなかったからな。悲しくなったのは君に恋してからさ」
...ん?また恥ずかしい事言ったな!
理解した私は顔が自然と俯く。
「...また恥ずかしい事言ったね。なんで、その恋の台詞を日常会話によく入れられるね...」
それも前々から思っていた事だ。よく入れられるなぁ...
「君に愛の言葉を囁くためさ。このぐらい意識的にしないと君は傾いていってしまうだろう?」
...あながち...否定は...出来ないわけじゃない。
最近は貴女の方に傾いていっているけれど始めの方は貴女がそんな事言わなかったら意識していなかったかもしれない。
「...うん。私は何も言わないよ」
言わない方がいいかな...なんか言ったら物凄い言われそうだから。
「そうか。話は変わるんだがお風呂入るか?」
...お風呂?
「それは湯船に?」
「ああ。入るか?」
...どうしようかな...よし!
「入るよ。もしかして洗うの?」
「ああ。久しぶりに使うから取り敢えず洗わないといけないからな。もしかして洗うのを手伝うとか言わないでおくれよ。泊まりに来てもらっているのに悪いさ」
うっ...言われてしまった...まぁ仕方ないか。
「言われてしまったから、私は手伝わないよ」
貴女は立ち上がりながら言う。
「お風呂は先に入ってくれ。僕は君が入っている間寝る準備をしているからさ」
うん。効率がいいね。あれっ、それじゃあ料理は...?
「ねぇ、料理はどうするの」
貴女は少しニヤリとしながら言う。
「二人ともお風呂に入ったら二人で作ろう。きょうはパスタにするからな」
...うん。準備がいいですな。そうだね。貴女のいう通りにしよう。
「洗ってくるよ。さっさと入って二人で料理しようか」
うん!楽しみだな!
~*~*~*~
お風呂が洗い終わり、二人ともさっさとお風呂に入った。私はシャンプーなど持って来たはずが忘れていたので貴女のシャンプーを借りた。後から言っても大丈夫だったから良かったけれど。今は貴女と同じ匂いだ。なんかこれだけでも恥ずかしい感じがする。
「それじゃあ料理をしようか。流石に作り方は分かるよな?」
「うん。大丈夫だよ」
料理は分かる。だから大丈夫。
そうして二人で料理をしていく。
水の分量間違えたとか、パスタの入れる量を間違えたとかは割愛させていただきたい。
~*~*~*~
「まったく...君はおっちょこちょいだな。分量を間違いすぎだろう?」
...さっきから気にしていることを...掘り返さないで...
「うん。分かっているわよ。私が料理を出来ないって言いたいんでしょう?」
私はそこでむくれる。
二人で取り敢えずできたパスタを食べている。
「いやいや。そこまで言っていないじゃないか。間違える君も可愛いと思ってさ」
...うっ!
「がはっ!げほっ、げほっ!」
「おいおい。大丈夫か?パスタを喉に詰めるなんてな」
貴女は立ち上がって私の背中をさする。
今のは貴女のせいでしょう?!
取り敢えず落ち着いたので水を飲む。
「はぁっ。ありがとう。でもいきなり言わないで。貴女といたら命がいくつあっても足りないぐらいだよ」
「意味は違うと思うがありがとう」
...わかっているなら言わないで。
私は軽く睨む。
「おお、怖い怖い。これ以上お姫さまを怒らすのは得策じゃないな。これを食べたら少しだけ体操して寝るか?」
...そうだね。寝た方がいいか...
「うん。そうしようよ」
私達は食べ終わる。
「洗うのは絶対手伝うよ!」
私は意地を張って言う。
「はぁ。分かったよ。手伝ってくれるかい?」
「うん!」
私は一緒に洗う。
料理の時見たいにヘマはしなかった。
~*~*~*~
「お姫さま、一人ご案内~!」
なんか今日ずっと貴女、機嫌いいね。
「今日、ずっと機嫌いいね」
私は聞いてみる。
「そりゃあそうさ!大好きな人と寝るまで一緒にいれるのだから!いろいろ持ちそうにないけれどね...」
...聞かなかった事にした方がいいか。
「まぁ、そんなに楽しみにしてくれてありがとう」
「まぁね」
...少しの沈黙。あまり話さない時になる沈黙。気分がいい...
ガタッ!
急に大きな物音がして意識を失った。
~*~*~*~
ん、んんんっ...
えっと何があった!!私は急に起き上がる。少しだけ頭がクラクラした。
「ごめんねぇ...少し縛らせてもらったよ。もう耐えられない」
私は貴女のベッドの上。腕と足首を紐で縛られている。
そうしてそのまま貴女は私に馬乗りになり私の首を少しずつ絞め始める。
「ごめんね、ごめんね、ごめんね...」
「はっ...なんで...謝る...のよ...がはっ...」
苦しい中私は思う。前から私を殺したいんじゃなかったの?
「取り...敢えず...放...して...」
あっ...みたいな顔をして貴女は放す。
「ごほっ!げほ、げほ、げほ...」
馬乗りの状態はそのままに。私はしゃべり始める。
「ねぇ、前から私の事殺したいって言っていたでしょう?」
貴女はうなずく。
「それじゃあなんで私の首を絞めた時に謝るのよ」
バッサリと私は聞く。
「...いつも寝る前になると僕は君を殺す白昼夢をみるんだ。いつも君を殺して終わりの夢」
おうぅ。すごい白昼夢をみているなぁ...
「それでどうしたの?」
先へ促す。
「その時は君を殺して終わり。それだけなんだ。でもその中では君は僕に抵抗するんだ。けれど今は抵抗しなかった。だから怖かったんだ。本当に君を殺していいのかなって」
...なぁんだそんなこと。私の中では決まっているよ。
「何いっているのよ!」
私は大声で叫ぶ。
「貴女は私を殺すことを躊躇ったらダメじゃない!私は貴女だから前にも言ったけれど私だったら貴女を殺さない。貴女に殺して欲しいから殺さないのよ!この意味分かるの!?」
...まず、他の人にはここまで言わないよ。貴女はそれをわかっているのかな?
「えっ...えっと...うん...?」
なんでそこで疑問系になるのよ。まぁ、いいよ。
「取り敢えずこれ外してくれる?」
私は紐の事を言う。
貴女はニヤリと笑った。
「もう少し縛っていていいかい?」
うん。外してくれないね。これだと。
「分かったから取り敢えず寝ようよ。私眠くなって来ちゃった」
わたしはふわぁぁぁと大あくび。
「そうだね。僕は下の布団で寝るよ。おやすみ」
「おやすみ」
そうして私達は眠った。
~*~*~*~
ピチチ...
私は起きた。ていうか動けん。外して欲しいな。
と思ったので下の布団を見ると貴女はすぴすぴと気持ちよさそうに寝ている。
なんか起こすのも気が悪いから寝顔見とこう...
~*~*~*~
なんかいつの間にか寝てたよ...
あっ、外してあるよ。しかもなんかいい匂い...
私は起き上がる。そうして台所へ行く。
「おはよう。昨日の事は謝らないよ」
朝起きていきなりそれですか...
「まぁ、いいけれど。今日の朝はなにを作っているの?」
私は覗き込む。
「フレンチトーストさ。君は大丈夫だったけ?」
大丈夫だよ。おいしいそうだよ。
「大丈夫。美味しそうだね。昨日から思っていたけれど貴女は料理が上手いね~」
しかも美味しそうだし。
「そりゃあ、一人暮らしで料理が出来なかったらマズイだろう?だから出来る限り自分でするようにしているんだ」
...尊敬したいよ。私には無理だ。
「そこの食器棚からお皿とってくれないか?」
「分かったよ。これでいい?」
ひとつのお皿を持って見せる。
「それでいい。食べて君は帰るか?」
...もう少しだけ一緒にいたいなぁ...
「...もう少しだけ一緒にいてもいい?」
私はしっかりと聞く。
貴女はキョトンとしたような顔で言った。
「いいさ。君がいたいのなら」
「ありがとう」
こうして私は貴女の作った朝食を食べた。見た目通り美味しかったよ。
~*~*~*~
なんだかんだで終わったお泊まり。
貴女がこんなにも揺れているなんて思っていなかった。首を絞められた時私はかっこいいと思ったのに、謝られたらなぁ...
その時はほんのりと月の光が入って来ていた。
貴女を照らしてかっこいいと思ったよ。
月明かりに照らされる狂気。
私達はどちらも狂っているのだろう。
そうでなければこんな事を話していないだろう。私達が殺すなんて言わないだろう。
けれどそれでいい。それが私達の関係性なのだから。
P.S
家に帰ったら手首を見られてどうしたの!って聞かれたから濁すのが大変だったんだよ。
殺すのは私はいいけれど。私の家族の方も課題かなぁ...




