好きだって言えないならなんて言おうか
創作お題bot(@asama_sousaku)より
『好きだって言えないならなんて言おうか』
「ねぇ、君は僕の事『好き』とは言わないのかい?」
「ぶぶぅ!!」
口に含んでいたお茶を盛大に吹き出した。
放課後、ちらほらと人が残っているSHR後のこと。
「...汚いな...」
いやいやいや!!貴女がいきなり『好き』と言わないのかとか聞くからでしょう!?しかもこんな人が残っている時に!
しかも注目されているから!!
「...取り敢えずその話は後からね。今は流石に無理だよ」
今話されたらたまったものじゃない。
「...分かったよ...後からだね」
うん。そうして欲しいの。そう意味を込めてうなずいた。
*~*~*~*~
少し時間がたった。もう教室内は私達二人だけになった。
「よし。もう一度言おうか。君は僕の事『好き』とは言わないのかい?」
...うん。何でいきなりそんな事を聞くのかな?
「何で...いきなり?」
貴女はそれを聞いて少し驚いたような顔をした。貴女の驚いた顔を私はあまり見た事はない。それに私が驚いた。
「...君は僕の事が『親友』として好きなのだろう?」
「うん。そうだよ。まだ貴女の方には傾いていないよ。親友としての天秤に傾いているよ」
とは言っているけれど貴女の事、好きだけどね...絶対に言ってやらないけれど。
「それじゃあ、君に愛の言葉でも言おうか?」
...なんでそうなるの!?
どきどき貴女が何を言いたいのかが分からない時があるよ。貴女のすべてを知っているわけではないけれど。
「君の事が好きだよ」
うん。よく言われている。
「君の事が大好きだよ」
うん。少し言われ慣れていない。
「君の事を...」
うわぁぁぁ!!私はとっさに貴女の口にをふさいだ。
「ふぁんふぁい?(なんだい?)」
「ちょっと待って!恥ずかしいよ!」
私は貴女の口を解く。
「なんだい?前も言った事があるだろう?」
...そういう事じゃないよ。次に言うことが分かっているから恥ずかしいんだよ。
「恥ずかしいからそれ以上言わないで...」
「君を愛しているよ」
即答された。ちょ、ちょっと!
私は恥ずかしくて机に頭をゴガンと言わせながら俯く。
「...言わないでって言ったのに...」
貴女は口を押さえながら笑っている。
「ぷ、ぷくくくく...ああっはははは!!」
しまいに大声で笑い出す。
「なんなんだその反応!?あはは!!前から言っていたのにいきなりそんな反応になるか!?あはは...!」
貴女は机に手を叩きながら笑う。私はその反応が気に入らなくて机に突っ伏したまま言う。
「それだけ笑ったら私だけ先に帰っちゃうよ」
少しふごふご言っていただろうが貴女にはしっかり聞こえたらしい。
少しずつ笑いが収まっていった。
「...ごめん。それだけは止めてくれ。一日の最後の楽しみなんだ。君と帰るのが」
...なにをおっさんみたいな言い方...私と帰るのがそこまでの楽しみなんだ...うん。嬉しいけど貴女がそこまで止めるのが珍しいなぁ...イジワルしようかな...?
「本当に?貴女が私の事を好きだから?一緒に帰りたいのは?」
よし。イジワルするぞ。
「ああ。そうだ。君の事が大好き...いや、愛しているからだよ。君の事を守りたいから。君と一緒にいたいから」
...うぇい?...なんか凄い事言われたような...?いや...前にもこんな事言われたような...
「出来れば前にも結婚したいと言っただろう?」
...あ、はい。そうでしたね。忘れかけてました。あの時衝撃的過ぎて記憶から抹殺されてましたよ。
「そうでしたね...忘れかけてましたよ...はい」
貴女は不機嫌そうな顔になる。
「ヒドイなぁ。一世一代の告白だったのに」
...それじゃあ日々の告白はどうなるの?
「おい。君ってやつは...」
あっ!またか...
「地味に古傷抉ってくるね。それとこれとは別なのさ」
...はい。そうですね。
「悪かったよ~そこまで不機嫌にならないでよ」
私は貴女の頬を突っつく。ぷにぷにだ。...可愛い...
私は貴女に好きだって言えない。だからなんて言おうか私は考えてしまう。この気持ちはまだ封印していても大丈夫だろう。これを聞けば貴女は怒るだろうけれど。それでも私は言えないよ。
「...どうした?気分でも悪いのか?」
私は貴女に心配させてしまった。この時の自分が嫌になる。
「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
私はこの気持ちに少しの間、嘘をつく。
「...大丈夫ならいいんだが...無理するなよ?」
貴女はこんなにもやさしい。
「うん。もうそろそろ帰る?」
私は話題を反らしていく。この気持ちに蓋をするため。
「...そうだな。君は時間大丈夫か?今日早めに帰るとか言っていただろう?」
うん。私は蓋をしたよ。この気持ちに。
「早く帰ろ!お母さんに今日遅かったら怒られるの。その時は一緒に怒られてくれる?」
「...勘弁だな。君のお母さんは怖いよ」
へぇ。私のお母さんが怖いんだ。まぁ私一人だけが怒られるか。
「ありがとう。それじゃ帰ろ?私は走るね」
「ああ。急ぐか」
そうしてバタバタと私達は出ていった。
私達が使っていた机は後から先生によって戻されていた。
それが私達の関係性を示しているだなんて誰が思っただろうか。