第一話 Card Age
入鹿は自分の過去のことについて思い返していた。
今まで様々な事件に巻き込まれ、人生を変えるような出来事も多々あった。
だがあの日、あの出来事がなければ、俺の運命は別の方に向いていたのかもしれない。
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「いやーさすがに疲れたなー」
今日は日曜日。快晴の空の下、街を歩く人たちがいつもより多く見える曜日。
人混みの苦手な入鹿からするとそこそこに苦手な曜日。
だが、今日ばかりは来たる苦しみの月曜日を乗り越えるためにとクラスメイトと2人でカラオケに来ている。
「さすがにあれだけ歌ったらな...ん、次は俺の曲か」
この金髪マジメガネは豹頭虎春。成績優秀かつ歌とゲームを愛する入鹿のカラオケ仲間。
最近は入鹿の懐が寒々しい季節になってきたからかあまり行っていないが、入鹿はよくカラオケに来ている。
「ふう…そろそろ歌い疲れたし、もう帰らね?」
好みのボカロを歌い終わった虎春がそう言った。
虎春の好きな曲は激しいものが多いから、その分早く疲れるのだろう。
「おし、帰るか。」
そして入鹿たちはカラオケ店を出た。
カラオケからの帰り道には大したものがない。
この街は元から人口が少なく、娯楽施設も入鹿のお気に入りのカラオケとパチンコ店くらいで、廃墟や空き家も少なくない。娯楽施設がカラオケとパチンコだけなので住民に歌好きとパチンカスが多いのは言うまでもない。
「最近いい曲見つけたんだよね~」
「おぉ、今度カラオケで歌ってくれよ。」
虎春と入鹿は曲の好みもそこそこ合う。
なぜなら入鹿はあまりメディアに詳しくないため、殆どの曲を虎春に教えてもらっているからだ。
そんな他愛もない話をしていると、虎春の家に着いた。
ドアに手を掛けた虎春が振り向く。
「じゃあな。」
「おう、じゃあな。」
がちゃん と無機物的な音が鳴り虎春が視界から消える。
入鹿が友人宅に背を向け、おもむろに空を見上げると、鮮やかな橙色から紫になりかかって
いた。
「よし、じゃあ俺もそろそろ帰ろうか…ん?」
自宅に足を向けたその時、
入鹿は薄暗くなった夕日を受けて輝くそれを見つけた。
「カードデッキ?」
その時、入鹿は何も警戒していなかった。
ただそこにあるものを拾おうとしただけだった。
だがこの時、もしも彼がカードデッキを拾わなければ、こんなことは…
グサッ
起きなかったのかもしれない。




