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転生した一日目を思い出してみる

30歳の誕生日は20歳の時とは違う感覚だった。20代の頃よりも物理的に所有できるものは多くなって、人間関係もまずまず良かった。男友達とは会う回数は減ったけど、その分趣味のバイクに時間を割いたり、洋書なんかにもチャレンジして1冊読破した。内容は、、たしか、、、「主人公が実は犯人だった!!」的な?感じだったはず、、多分。

「楽しい!」「幸せだな」と思うことはなくなったけど、休日の穏やかな時間を過ごすのは好きだ。子供が欲しいかもしれない。今の収入だと厳しそうだけど。



その日は、たしか火曜日だった。会社から帰宅したのは覚えていて、東京駅から武蔵野線を利用した。俺は満員でぎゅうぎゅうに詰められていた。午後8時ごろだった。舞浜駅で停車して、ディズニー帰りの人たちが乗車してきた。「楽しそうだなぁ」と思った。ただ自分が行っても楽しくないんだろう。そうやって窓ガラス越しに自分の目を見ると虚ろで嫌な感じだった。

東松戸駅で降りた。


角を曲がって細い小道に入ったとき、10mくらい先に妻の姿があった。白いTシャツでラフな格好で信号待ちしていた。普段はもうちょっとオシャレしてる気がした。

「あんまり見ないね、このTシャツ。白とかのイメージないな。」

「あぁびっくりした。コンビニよ、コンビニ行くの」

「食べ物?」

「コーヒー飲みたいの、コンビニにしかないカップのやつ。あとタバコ」

「、、タバコ。タバコ?」 この人タバコ吸ってたっけ?

「吸ったことないわ、初めて買いに行くの」

見透かされたように言われた。表情に出てたかな、、

「またなんで」

「パート先のおばさんが可愛いパッケージのタバコ吸ってたの。黄色いやつ、ラクダの」

「camel?」

「たぶん?そうかな。よく知ってるね」

「そうだよたぶん。可愛いからね」

可愛いからタバコ吸うのか。俺は吸ったことないからわからないけど、そういうもんなのかな。初めて吸う時って、、

もしくはサクラが少し変わっている人なのかもしれない。


信号渡って20メートル先にあるコンビニの店先にある喫煙所。雲がなく月が綺麗に見えるベンチに2人で座った。

「そういえば今日、吉川さんとメシ食いに行ったときテレビで"夢を見るのはなぜ?"っていう番組やっててさ」

「うん」

「フロイト?っていう人が寝ている時に暑いと感じていると悪夢を見やすいとかって言ってたよ、うん」

「うん。 、、ん?それだけ?」

「あとは"無意識"とかなんとか難しくて分かんなかった」

「もう少し長く話してくれないと、1本吸いきれないわよ。すんごい気持ち悪いしクラクラする。」

「えぇと、、夢と現実の状況は繋がってて、でそれが無意識っていうやつで。その無意識が、えぇと、、」何言ってるんだろうという目で見られている。焦ってきた、、

「その無意識が脳が認識すると、、、」

「あなたあんまり賢くないわよね」

仕事帰りの疲れた体に沁みる言葉だ。


12時前にはベッドに入るが、寝付きが悪く全然寝れない。羊を数えるといいらしいけど、個人的には羊を羊毛の中にいれて雲状のナニカにしてから数えると眠くなる。羊をまず用意、ギュって丸めて羊毛の中に入れる。1ブロック完成。2匹目の羊を用意、ギュってして毛に包む。3匹目、、あぁ眠くなってきた。




"、、?"

ムクッと起き上がる。なぜかスーツ姿だ。なんか分かんないけどいつも以上ににノリの効いたシャツで少し動きにくさがある。スーツもなんか上等な感じがする。

どこだここは?誰かの家?少なくとも俺の部屋じゃない。俺の部屋より大きいし、オシャレだ。

"うん、オシャレだね。ニトリのモデルルームを貸してもらったんだよ。夢の中だから貸し借りはないかもしれないけど。"

"、、!"誰だコイツ

"アタシはフロイト。君の夢にお邪魔している。言語は通じるみたいだね、良かった。"

フロイト?フロイトって確かテレビの、、

"いや名前はテキトウだよ。だいたい本人はオッサンだしね。"

オッサンかどうかはいつかによるだろ

"まぁね"

"ん?心読まれてるな"

"遅いね気づくの。初めからそうだったじゃない。まぁ座りなよ、せっかくダイニングテーブルもあるんだし、話がしたいんだよ。アタシは"

"話?"

"君、名前は?"

"晶"

"アキラくんね。アキラくんはコーヒー好きかな?"

頷く

"せっかくだしキッチン使おうかな"

"、、"

夢の中でなんか食ったり飲んだりしたことないかもしれない。てかモデルルームに食料ってあんのか?

"まぁ夢だからね"

フロイトはそう言うと、棚を開けコーヒー豆が入った瓶がいくつも取り出していった。

"夢すごっ!"



フロイトは40代くらいの黒人のおばさんだ。もちろんモノホンのフロイトではなく、今俺の目の前にいるフロイトだ。背は俺と同じくらい、デニムを履いている。あとメガネをかけていてグローバルなテック企業にいそうな印象だ。ユニクロのモデルとかやってそう。

"やってるわけないでしょ"

"はいどうぞ"

2杯のホットコーヒーと、チョコチップクッキーのはいった皿をテーブルに置いた。フロイトは俺の目の前に座った。

"ありがとう“

そう言って飲むと、さっき無理して飲めると言ったコーヒーはかなり美味しかった。

"あなた年の割に表情に出やすいのね、日本人の子ってもっとムスっとしている印象だったわ"

どんな印象持ってんだこの人。そんなに出やすかったかな。

"グアテマラっていうの、この豆は。アタシの国ね"

"うん美味しい、フルーティーで香りが良い"

そう言うとフロイトは嬉しいそうにチョコチップクッキーの皿を俺の目の前に差し出してきた。

"そういえば話ってなんなの"

"あぁそうそう話ね"

自分で言っといて忘れるのかよ。

"悪かったわね、お願いがあるのよアキラくんにね"そう言ってフロイトはメガネを拭き始めた。このおばさん、品があるっていうか、、サマになるなぁ

"あなたにね転生してほしいのよ、アタシ達は"

"、、?"

、、、んぁ?今なんて言った?テンセイ?

"まぁ分かるわ、どうやって転生するか?よね。それはね、、"

"ちょっと待って!"

"どうしたの?"

"クッキー食べて良い?""もちろん"



"転生ってなに?俺はなんかしなきゃいけないの?夢の中で?"

とにかく状況が掴めない。夢なのに意識がすげぇハッキリしてるし、オシャレな場所でスーツ着てコーヒー飲んでて現実みたいだ。

"チョコチップクッキーもね"

このグアテマラ出身のババァが「転生してほしい」と言わなければ、、

"あなた口悪いのね、よく社会人として働けるわね"

"別に関係ないでしょ"なぜか俺の普段を知っているみたいで、恥ずかしくなってくる。

"えぇそうよ、あなたが真面目で一生懸命働いていることも知っているし、それに満足できずに休日はただ身体の回復だけに時間を使って、せっかくの休日を無駄にして後悔していることもね"

"、、"

"趣味もそんなになさそうよね。バイクだけは長続きしているそうだけど。収入も高くないし、とても満足のいく生活はできない。ただそれはみんなもそうだと思っているから、納得はする。あくまで満足はしていないけど"

なんだコイツ、言いたいように言いやがって。それでいえばお前もそんなもんだろうが、、腹立つな、、

"まぁそうね、あなたから見ればあなたもアタシも同じかもしれないわね、客観的に見れば明らか違うけど"

"違う?俺とフロイトが?"

"アタシは神よ"

"、、、"

夢の中でさっきからおかしいのはコイツの発言だけなんだ。転生して欲しいだの、アタシは神だの言いやがって。

"神なら必死に頑張ってる人間に文句言ったらしないんじゃないですか?"

"必死に頑張ってるならね"

"、、、!?"


"話もどすけど、転生はしてほしいのよ、本当に"

"まずさ転生が分からないんだよ、なに転生って?生き返るってこと?俺別に死んでないし"

"そうね、現在アタシ達は色んな人の夢に介入して、転生してほしいってお伺いをたててんのよ"

"俺だけじゃないんだ"

"うんそうよ。あなただけが良かった?"

"まぁどっちでもいいけど、、"

"あなただけにお願いしているのよ"

"、、、で色んな人の夢に出てきて変なこと言って、その順番が俺に回ってきたのね"

"そういうこと"

"みんな嫌がったんだ"

"そういうこと、一応不幸そうな人に尋ねて言ってるんだけど、みんな断っちゃうのよね"

それでいうと俺も不幸そうだと思われたのか、、

"そういうこと"

"俺も行かなくていいかな、あなたから見れば不幸そうかもしれないけど、別に今の生活悪くないんだよね。すげぇ良い!ってわけじゃないだけど。"

"みんなそう言って帰るわ"

"少し聞いてもいい?転生したら何をするわけ?"

"基本的には神の使者になってもらいたいのよ。アタシ達は地球に降り立つことができないから、地球の調査官的なそんな感じの仕事をしてほしいの"

"それは1人で全部やるの?"

"いや、すでに何十人かいるわ"

"十分な人数じゃない?"

"本当は各国に1人ほしいの、詳しいことを一人一人に依頼しているから"

"それは転生させる必要はなくない?別に今の俺が地球でそれをして良いじゃない"

"いや時代と次元が違うのよ、色んな時代の別次元の地球で調査を行うから"

"別次元?"

"神の目線で言うと地球には今数種類の地球があって、似通ったところはあるけど違う地球が存在するの。"

、、、、ヤバい分からなくなってきた。別次元の地球?俺が住んでいるところがその一種類なのか?

"そうよ"

"時代も違うって言ったよね"

"戦国時代の日本とか、江戸とかそう言うことね"

"そんな場所、俺死んじゃうんじゃない?"

"あら行ってくれるの?"

"いや仮に行ったとしたら"

"その通り、でもそれじゃ調査官の仕事はできない。だから神の使者らしく少しアタシ達の力を貸したあげるのよ"

"チカラ?"

"うーん、まぁあなた達の言葉で当てはまるのは魔法かしらね"

"魔法、、"

"もちろんなんでもはできないわ。最低限死なない範囲だから、攻撃の手段ではないし。まぁただ攻撃によって死ぬことはないでしょうね"

"、、"

"手始めに、明治時代の日本にでも行ってみない?"


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