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最弱属性の俺、空気を圧縮したら一撃で最強になった~空気魔法から始まる異世界魔法革命~  作者: 百花繚乱


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第98話 最弱属性の逆転

再編された戦線は、まるで巨大な弓の弦のようだった。

縦穴を取り囲む五つの要所に、部隊が分かれて布陣する。

中央上部の騎士隊、右翼岩棚の魔導士隊、左下退路の支援隊、中央縦軸の精鋭部隊、そして核前通路の突破班。

それぞれが孤立しているようでいて、今は違う。繋ぐ。

そのための準備は、もう整っていた。

「中央上部、配置完了!」

「右翼、魔力供給線確認!」

「左下、退路確保!」

各所から、短い報告が飛ぶ。

縦穴全体に、緊張が満ちていた。

だが、その緊張は今までの“怯え”じゃない。これから仕掛ける側の、張り詰めた集中だ。

「……やれるか」

前衛が隣で低く聞く。その声には、珍しく少しだけ本音が混じっていた。

不安じゃない。確認だ。

「分からない」

正直に答える。前衛が、少しだけ呆れたように鼻を鳴らす。

「そういう時くらい、できるって言え」

「でも」

視線を前へ向ける。縦穴の奥。

核前通路の先、巨大な守護体がまだ動かずにいる。その複眼が、ずっとこちらを見ていた。

待っている。こちらの出方を。

「今までで、一番届く気がしてる」

そう言うと、前衛は少しだけ口元を上げた。

「なら十分だ」

短い。だが、それでよかった。

「感知」

「読めてる」

「補助」

「いつでも」

全員、揃っている。

深く息を吸う。空気が入る。肺が満たされる。

当たり前の感覚。でも今は、それが少し違って感じる。

空気は、ただそこにあるんじゃない。

流れ。圧。温度。伝播。

無数の条件が噛み合って、初めて成立する。

なら、その条件を、こちらで定義する。

「……始める」

静かに言う。

魔力を巡らせる。

一点目。中央上部。局所圧力場を置く。

二点目。右翼岩棚。

三点目。左下退路。

四点目。中央縦軸。

五点目。核前通路。

「っ……!」

一気に魔力を流し込む。今までの局所場とは比べ物にならない負荷。

だが、違う。今回は、一点ごとに全部を制御しようとしていない。

“基準”だけを置く。そこから先は「繋ぐ」感知役の声。

揺れが浅い層。空気の残滓。裂け目の薄い縁。全部を拾って、繋げる。

補助役の魔力が重なる。

「外縁、固定!」

五つの点が、少しずつ輪郭を持つ。

そして、その間に薄い膜のような感覚が生まれた。

「……きた」

思わず、息が漏れる。

見えない。

だが、分かる。

縦穴全体に、薄く。

確かに。

“空気が成立する側”の基準が、広がっている。広域圧力場。

まだ不完全だ。全部を覆えてるわけじゃない。

でも、十分だ。

「……うそ」

補助役が小さく呟く。

「本当に、繋がってる」

感知役の声も、わずかに震えていた。

「縦穴全体の揺れが、浅くなってる」

守護体が、初めて明確に反応した。

巨大な頭部が、わずかに持ち上がる。複眼の光が強くなる。

空間が、再び歪む。核の脈動。異常波。守護体の一撃。

全部が、一気に来る。

「来るぞ!」

責任者の声。

次の瞬間。縦穴全体に、衝撃が走った。

空気が消える。いや、消そうとしてくる。

だが、今度は違う。

五つの局所場が、揺れながらも残る。点が、杭になる。

その間の基準が、完全には崩れない。

「……耐えた」

自然と笑みが漏れる。

守護体が、初めてこちらのルールを崩し切れなかった。

「今だ!」

叫ぶ。

前衛が飛び出す。今までで、一番速い。

広域圧力場の中。踏み込みが、軽い。

深い。空気そのものが、前へ押し出している。

「っ、らあ!」

剣が走る。守護体の前脚を斬る。甲殻に、初めて明確な傷が入る。

「通った!」

前衛の声。

いける。届く。

「右翼、撃て!」

責任者の号令。

魔導士隊が、一斉に術式を放つ。

火球。雷撃。氷槍。今までなら、異常領域で逸れていた攻撃。

だが今は違う。広域圧力場の中では、伝播が安定している。

術式が、まっすぐ届く。守護体の側面を撃ち抜く。

巨体が、初めてわずかに揺らいだ。

「中央、押せ!」

騎士隊が踏み込む。槍が届く。盾が崩れない。

戦線全体が、一歩前へ出る。

「これ……」

補助役が、息を呑む。

「戦場が、戻ってる」

違う。戻ってるんじゃない。奪い返してる。守護体のルールを。この戦場を。

「まだ終わってない!」

叫ぶ。

気を抜けば、一瞬で崩れる。広域圧力場も、まだ不安定だ。

でも、今までの技が、全部ここで繋がる。

手を上げる。空気が、応える。

いや、応えられる条件が、今ここにある。

「エアショット」

低く呟く。

今までの、ただの圧縮弾じゃない。

広域圧力場の中で、圧力差を一点に収束させる。

超高密度の衝撃弾。撃つ。轟音。

いや、今までより澄んだ破裂音。衝撃弾が守護体の側頭部を撃ち抜く。

複眼の一つが砕ける。守護体が、初めて大きく身体を揺らした。

「……っ!」

核の脈動が乱れる。

「効いてる!」

感知役の声。

「なら、次だ!」

前衛が叫ぶ。

剣を構え直す。補助役が魔力を重ねる。

責任者が前線を押し上げる。全員が、一歩ずつ前へ出る。

今まで、“最弱”と笑われた空気魔法。

火力も、派手さも、見栄えもないと言われた属性。

でも、条件が揃った時、戦場そのものを握れるのは、この魔法だ。

胸の奥が熱い。怖さはある。負荷も限界に近い。

それでも、、この瞬間だけは自分たちが戦場を支配していた。

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