第二章:茶会で宣言する、結婚拒否
王都の貴族令嬢たちが集まる茶会。
華やかなドレス、笑い声、そして、どこか皮肉めいた視線。
「あら、ベアトリクス様。今日もお美しいですね。王太子殿下も、きっとお喜びになるでしょう」
声をかけてきたのは、ダリラの親友にして、貴族の娘のナターシャ。
──王太子との婚約話が、そろそろ持ち上がる時期だ。
前世の記憶によれば、王太子ヴァレンティン・ルイ・シュタインバッハは、ベアトリクスに求婚する。
形式的なものだが、貴族の義務として。
そして、ベアトリクスはそれを喜んで受け入れる。
だが、王太子はダリラを愛しているため、断る。
それが屈辱となり、ベアトリクスの暴走の始まりとなる。
なら、最初から断ればいい。
私は立ち上がり、全員の前で宣言した。
「皆様、失礼いたします。本日、王太子殿下より婚約の申し入れがあると聞いておりますが──私は、それを断ることをここに宣言いたします」
その場一体が凍りつく。
「な、何をおっしゃっているのですか、ベアトリクス様!」
「貴族の娘として、国のために結婚するのは当然のことではありませんか!」
「王太子殿下の求婚を断るなど、前代未聞です!」
口々と言う貴族たちに、私は静かに微笑んだ。
「私の人生は、国や形式のためではありません。私は、自分の意志で生きたい。結婚は、愛する人とするもの。王太子殿下を愛していない以上、お断りするのは当然でしょう」
──そして、私はこう付け加えた。
「それに、王太子殿下には、すでに心を寄せる方がいらっしゃる。それを無視してまで結婚するなど、愚かこの上ありません」
その場が、さらに静まり返る。
そのとき、扉が開き、王太子ヴァレンティンが現れた。
彼は驚いたように私を見つめ、やがて、小さく笑う。
「……驚きました。誰一人として、そうは言わないだろうと思っていた」




