閑話1
「パパ! ねぇパパ」
幼い頃、ひかりは大好きな父の足に抱きつく癖があった。
「なんだい?」
そんなひかりに決まって父親は優しく離し、目線を娘に合わせる。
「えへへ~」
ひかりは父親が大好きだった。その中でも父親の何が好きかと聞かれたら大きな手で頭を撫でてくれる仕草と答えただろう。
「う~んとねぇ」
特に用事があるわけでもないがスキンシップにことあるごとに話しかけていた。
「うん」
「え~とねぇ」
それを父の暁はイヤな顔一つしない。要領が得ず舌足らずな娘の言葉を笑顔で気を長くして聞く。そんな時間がとても嬉しい。
「……そうだ、ねぇ、パパ!」
「ん? はい、ひかりちゃん」
飛び跳ねながら片手をあげる愛娘に目を細める。
「ファンタジーで一番強いのは何?」
「おやおや」
教育の結果か、はたまた親の趣向を知ってか二人きりの会話の時ひかりはそういった会話を振ってくる。
「そうだなぁ~、ひかりはなんだと思う?」
「え、……えーっと」
首を傾げ少し考え込む。
「やっぱりドラゴン? 大きいし、火吹くし」
「ドラゴンか、確かに強そうだな」
「うん! やっぱり?」
喜ぶひかりを見て暁は目を細める。
「色んなファンタジーでも最強種として登場してるしな。そういっても多分正解だよ」
「やったぁ!」
ピョンピョンと元気よく飛び跳ねる。
「でもね、ひかり」
「……うん?」
優しく頭を撫でる父の手を持つ。そうすることでより父親を近くに感じられる。
「覚えていなさい、ファンタジー最強種はドラゴンでもフェニックスでもヴァンパイアでもないんだよ」
「……じゃぁなんなの?」
「それはね……」