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IFかもしれない世界で綴る物語(あるかもしれないみらいで生きるライフ・ストーリア)  作者: きちだ しんゆう
理想と幻想の間~ミックスド・リアリティ
19/178

生徒会なので仕事は当然の事






月曜日。

自分の第一志望校ではないとはいえ高校で今度こそ大好きなアイディアルを

やれると思っていたのにこんな事になるとは彼自身

思っていなかった。

生徒会に入るにはイリュシオンの幻想住人になってあのゲームをプレイする

事だった。

問題はあのイリュシオンというゲームは現実を飛び越えている事あの世界の

中で自分はやれるのか?その自信が綴也には無かった。

しかし、生徒会以外の選択は職業訓練以外には無くアイディアルに使える時

間が生徒会活動以上に限られる可能性がある。

故にアイディアルをやりたいのならば綴也は生徒会活動とイリュシオンの三

つも掛け持ちしなくてはならなくなる。

さらに昨日のミフルからの自分がイリュシオンに適応できてないという難題

に加え綴也には重要な問題があった。


「はあ…どうしてこうなってるんだろ?」


お昼休みの昼食。

綴也は屋上にいた。

一人で…。

休憩中もやはりクラスメイト達との会話は皆無だった。

話しかけようと用事がと断られるか行く前に避けられるかだった。

特に女性陣は避け方は特に解りやすかった。

サクラが言っていた昔の悪評が伝わっているという事を毎日実感していた。


「このままでは…まずい」


中学時代には三人の親友がいたが自分だけ高校が別々になってしまった為一

人ぼっちに逆戻りしてしまった。

入学して今日に至るまでクラスメイト達との会話はゼロという学校生活にお

いて最悪の一歩手前。


「イジメられていないだけマシなんだろうけど…」


過去の事を知っていても接してくれる知り合いとして三年生の恵理香がいる

が彼女の所に行くのも躊躇われた。


「さて…どうやって友達を作ったら良いんだろうか?いや…友達になったら

良いのか?と考えるべきか…」


友達を得る、友達になる。

朝倉 綴也の生涯においてそれは中学時代に三人のみで幼稚園、小学校と友

達は出来なかった。

といっても朝倉 綴也が当時不良行為や問題行動をしていた悪童だったわけ

ではない。

しかし色々な事が重なった結果今彼は一人ぼっちだった。


「うーん…どうしよう」

「こんな所で何を考え込んでるの?」

「いや、友達の作り方?いやなり方について…って!?」

「こんにちは、綴也君?」

「サクラ会長!?」


声のした方を振り向くそこには生徒会長サクラ・レノンフォードが座ってに

こやかに手を振っていた。


「何で此処に!?その前に何で隣にいるんですか!?」

「あら?上から声を掛けようとも思ったけど綴也君には危ないかな?と思っ

てね」

「…お心使い感謝します」


眼を閉じて心からの感謝と礼を述べる綴也。

女性の胸を見ると吐きそうになり接触してしまったら嘔吐するという体質の

持ち主である自分にこうやって気を使ってもらえるとありがたい綴也だった。


「ちょっと話があってね…でもその前に…」

「…その前に?」

「イリュシオン、そんなにキツかった?昨日はイリュシオンはお休みさせて

っていってたから…」

「はい…自分の認識している現実から離れ過ぎててまだ旨く受け止め切れな

くて…でも、一日休んだら少しはリフレッシュ出来たんですけど…」

「そう、あれだけの動きが初めてで出来るのなら私やアイツともやり合えそ

うなのにね…」

「…どうしたらいいんですか?あれは?」

「…アレはもう慣れて克服するしかないわ…あれはイリュシオンをやり始めた

人間が大なり小なり通る道よ…」

「そうなんですか…」

「そうなのよ…私も大変だったわ…本当に」


これは慣れるまではあそこで吐き気と戦わねばならぬという事かと思うと何

で自分がこんなにも吐き気と戦わねばならないのかと溜息が何気に漏れて来

た。


「あの、会長は何時からイリュシオンを?」

「中学の頃にイリュシオンを人に勧められて始めたの…」

「へぇ…」

「お陰でハマって今では大きな黒蜥蜴相手に剣を振るっているわ」

「その結果が…街がマッ平らですか…」

「いや、しょうがないのよ。あの黒ドラは自分と戦う奴が現れるまでああや

って街を破壊しまくる奴だから誰か戦わないと街があっという間にまっ平ら

になっちゃんだもの」

「あんなに凄く人(?)が良さそうなのに何であの人(?)は街を破壊なん

て…」

「いや、あいつはそういうキャラで人気博しているのよ」

「でも、街が真ッ平らになるのは会長と戦ったらですよね!?」

「それは…ごめん。で、でもまっ平らになってもあそこはすぐ直してもらえ

るのよ綴也くんも見てるでしょ!?」

「そうですけどだからって街をまっ平らにして良いわけじゃないと思います

!!それに止めようとしている人達をあんなにボロボロにして地面に突き刺

して…」

「言っておくけど、私は手加減してるわよ!!アイツはどうか知らないけど

…って!そうじゃなくて私は君に話があるのよ!」

「話ですか?」

「ええ、なんでこんなに話が脱線しちゃうのかしら…」

「す、すみません。学校で会話するって久しぶりだからちょっと…盛り上が

ってきちゃって…」

「そ、そう…」


学校での日常会話がゼロの綴也にとって半ば彼女にとっては生徒会長として

の義務的な会話でも綴屋は話せる事になんとなく充足を感じていた。

いや感じるくらい会話がゼロだった。

そんな事に心の中でサクラにお詫びと感謝をしながら本題に入った。


「悪いのだけど今日生徒会の仕事手伝ってくれる?」

「え!?手伝う?」

「いや、生徒会の仕事が溜まっててもう今日はイリュシオンに行く事も出来

ない位なのよ…緋途美先輩も今日は用事があって頼めなくて…」

「え!?手伝うって!?僕、生徒会の仕事なんてわかりませんよ!?それに

僕まだ部外者なんじゃ…」

「中学の頃、生徒会の雑用やってたって話を聞いたんだけど?」

「え!?誰からそれを聞いたって…恵理香先輩ですね」

「お願い!!解らないところは教えるから!!」

「は、はあ…出来る限りの事はしますけど…」

「ありがとう綴也君!!言っておくけど仕事が溜まっているのとイリュシオ

ンには何の因果関係は無いから…」

「え!?」

「この学園の生徒会役員はイリュシオンをやって且つ学業と生徒会の仕事が

出来る人だからこれはこの学校の生徒会の仕事が多いだけの話だからね!!

良いわね!!勘違いしないでよね!!」

「え!?は、はい…」

(そんな事考えてないんだけど…)

「よし、今日はじゃあよろしくね」


鼻歌を交えてサクラが去る。

この二日間で綴也は生徒会長であるサクラのイメージが確実に変わってきて

いる。

花の様な彼女があのイリュシオンをする人間だとは初めて出会った頃知らなかったし思いもしなかった。

だが今はサクラはまるで早く遊び場に行きたくて我慢している子供の様に綴

也はそんな一面を見て心の何処かが和んだのを感じた。



「猫の手も借りたいって言葉があるけど僕の手を借りるのはいいのかな…」


当たり前の疑問だったが承諾した以上断るのも悪い気がする。

イリュシオンも生徒会の仕事で今日は行く事が出来ないと言っていた。

サクラには悪いが正直に言えばそれは綴也にとって予想外の幸福だった。

ならば代わりにサクラのお手伝いをするのは良い事だと綴也は思った。

先ずはとにかく今日は生徒会のお手伝いでスポーツセンターもイリュシオン

もいけませんと自称自分の専属インストラクターに連絡を入れるのだった。


「やっと、終わった…」


とその一言を発した時に今が何時なのかという疑問を抱き時計を確認してみ

ると。

それは正直に高校生が残って良い時間帯ギリギリだった。


「といっても今日これだけ行けたからこれなら明日からいイリュシオンに行

っても問題はない筈よ。今更だけど部外者の君に仕事手伝わせて悪かったわ

ね…」

「いいえ、でも何時もこんなに生徒会は仕事が?」

「いいえ、この季節と幾つか忙しい時期と必要な時にはどうしてもそうなる

のよでもいつもは遅くてもまあ五時くらいかしら…」

「じゃあ生徒会の仕事が終わったらこの後新天神に?」

「ええ、この生徒会の規則にもなってるんだもの…」

「あの…何でイリュシオンをプレイする事が規則に!?」

「何代か前の生徒会メンバーが全員イリュシオンで有名になったからそれが

切っ掛けで生徒会の入会条件にイリュシオンへの住人登録が条件に入った筈

よ…」


規則になっているとは驚きだった。

生徒会の仕事を終えて新天神に行きイリュシオンであの現実を超える戦いを

やっているのかと思うと綴也はアイディアルで練習をしている自分とどこか

似ているという親近感じみたものを感じた。


「それにしても綴也君が中学時代に生徒会の仕事をしていたのは助かったわ

…お陰で思ったよりも早く帰れるもの」

「い、いえ…僕はお手伝いをしただけで…」

「しかも今年は男女共学になって初めての年だから仕事も多くなりそうだか

ら例年より仕事が多くなりそうなのよ。だから生徒会経験者でもある綴也君

にも生徒会に入ってもらいたいのよ」


そう言いながら彼女は目をやるとそこには…。


「お、終わった…」

「し、死ぬ…死んじぇうよ…」

「じ、地獄の扉が見えたわ…」

「信号機トリオですらこんな状態になっているというのにすごいですね…」

「「「だからその呼び方ヤメテ(よね!!)(下さい!!)

(って!!)」」」


生徒会二年のルージュ、フラウス、シーニィのぐったりした姿があった。

疲れている所為かサクラ達への抗議の声も勢いが無く弱りきっていた。


「なんで会長と副会長は平気なのよ?」

「疲れてるわよ。家に帰ったらゆっくり休むわよ」

「そうですよ。さすがに男子関連の書類を見た瞬間何度切り刻んで燃やして

やりたいと思ったことか…」

「…何だかすみません」


自分が悪い筈ではない筈だが思わず綴也はシアに頭を下げていた。

そんな綴也にシアが苦笑を返していた。


「まさか生徒会メンバーですら根を上げる新年度恒例の仕事ラッシュ共学化

の為例年比三倍を前にして元気だなんて思いもしませんでした。本当に生徒

会役員としても欲しくなってきましたね」

「いえ、僕は言われた事をやってただけですし…」

「サクラ、とにかく先生に報告して帰りましょう。でないと帰りたくても誰

も帰れませんよ」

「そうね。じゃあ皆は待ってて直ぐに戻るから…」


そう言ってサクラとシアが生徒会室から出て行った。


「あのー?」

「どうしましたか?朝倉君?」

「生徒会の顧問って?」

「ああ、紹介し忘れてましたね。いずれ紹介します…」

「念の為に聞きたいんですけど僕が中学時代生徒会の雑用をしていたの話な

んですけど…誰に聞いたんですか?」

「ああ、神条先輩ですよ…」

「やっぱり、恵理香先輩ですか…」

「その経緯も詳しく聞きましたけどね…」

「うっ!」


別に秘密にして欲しいと恵理香には言ってはいない。

自分にその資格も無いだろうと思っていた。

だがそれは綴也の人生において失敗トップ十に入る事だった。


「うん、君の先輩への最初の告白の所から最後まで聞いたよ…」

「…そうですか」

「それにしても朝倉君が恵理香先輩に告白していたとはね…」

「すいません。その話は僕が怒られて終った事なのでこれ以上は…」


綴也の過去の話はサクラとシアがこの生徒会室に戻ってくるまで続いた。

この日はもう遅いので寄り道はしないようにと念を押されて綴也も家路に着

いたのだった。




T也…まさかあの事を先輩が話していたとは…。


Mル…中学の時あの女に告白したら怒れられたと言う話ですか?


T也…はい…。


Mル…その所為で綴也さんは中学時代三年間の生徒会の雑用を命

   じられる訳ですね。


T也…はい。


Mル…何がどうなったらそんな事になるんですか一体?


T也…僕も何でかは分からない!!

   あの熱い生徒会長さんがそんな事を言っちゃったから!!


Mル…熱くて人の話を聞いてくれない生徒会長さんですか…。


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