予定外がダブル?ブッキング
「何でここに!?」
綴也の口から出たのは当然の疑問だ。
何せ彼女は絶交した旧友達もいる東京の学校に通うここは福岡だからいくら
交通が発展したこの時代の都市日本でも途轍もない距離がある。
「そんなの少し高い電車に乗れば東京から此処なんて一時間も掛からないわ
…」
「少し?いや…だけど…」
彼女の言う通りだがその料金は学生の身では出せるかどうか怪しい。
綴也の頭脳が覚え間違いしていないのなら彼女はその電車を使わなければこ
の時間に此処に来る事なんて出来ない。
「パパに頼んだら泣いて喜んでお代は出してくれたわ…」
「いやお父さん泣いてるよ!!」
「良いのよ。そうでもしないとここに来れないし往復で帰れないもの…」
「いや…だけど…」
「年間パスの定期券だからお金がかかるのは最初だけよ…」
「年間!?」
年間定期券の詳細な料金は覚えていないが唯でさえ高い通常の往復料金より
も高いのは覚えていた。
定期的にここに来るのならば確かに便利かもしれないがそれでもここに来る
理由でもあるのだろうかと疑問が浮かぶ。
ちなみに綴也が電車料金について知識があるのはイリュシオンに男性専用車
両で来る為に電車の事を調べていた途中で他にはどんな電車があるのか見て
みたら出てきたのがその高額であるが長距離を一時間掛けずに着く電車を見
たからだ。
料金を見た時綴也は自分のPDが壊れた時に使った修理料金で一番高いのを
思い返し驚いた。
「ってこんな話しに来たんじゃなくて私は…アンタに用があって此処に来た
のよ…」
「僕に?恵理香先輩じゃなくて?もしかして…勝負しに来たの?」
フィアナの言葉を聞いて我に返り即思い至ったのは昨日の夕方にした約束の
事だ。
「アホ!!そんな訳ないでしょう!!」
「イッ!?」
だがフィアナは即否定してデコピンをしてきた。
「昨日の今日でそんな事出来る訳無いでしょ!!」
「じゃあ…僕に…」
「勝負じゃないけど話したい事があって来たのよ…だからちょっと来なさい」
「「「え!?」」」
フィアナの言葉を聞こえた周囲が驚きの声を上げる。
周囲の生徒や下校中の生徒の中で彼女の言葉が聞こえた者達か足を止めてフ
ィアナの方ヘ騒ぎ出し駆け寄って来る。
「待った君一人で危ないよ!!」
「そうよ!!その男は貴女みたいな人を何人も…」
フィアナに周囲にいた生徒達が詰め寄って来た。
綴也を連れて行こうとする彼女を制止する為だ。
「大丈夫よ。私はこいつの事はそれなりに知っているのよ…」
「え!?だけど…」
「そもそもこの男とどんな関係なの?」
周囲の生徒の一人からそんないや当然の疑問が投下された。
その声に周囲もフィアナを見る。
「昔こいつにアホな告白されて男が嫌いになった女よ…」
「うっ!?ごめんなさい…」
「「「「「!?」」」」」
フィアナの答えは関係性を語ると正解で綴也も否定する事はしないしできな
い。
フィアナとの告白は関して綴也が悪いので許してもらえなくとも謝るしか無
い。
「ほら、行くからどいてどいて…」
周囲が行こうとするフィアナを引き留めようとする。
彼女は気にしていない。
綴也は昨日の今日でまた会えるとは思わなかった。
今日の彼女は昨日の彼女とは態度が明らかに変わっていた。
その顔は敵を見るよりも友達を見る様に見えた。
離れていった旧友達が過ぎった程だった。
その原因は自分にあるのだが昨日の今日で彼女とこんな風に話せるなんて思
いもしなかった。
「ごめんフィアナ!!今用事があって…今すぐ家に戻らないと…」
「へ?」
「急ぎの用事なんだ!!ごめん!!」
高額の電車に乗って東京からここまで来てくれたフィアナには申し訳ないが
今綴也は忘れ物を取りに戻るという優先しないといけない事がある。
「ちょっと待て待て!!」
「!?」
「ちょっと昨日の今日でまた何やったのよ!?説明しなさい!!」
走ろうとする綴也はフィアナに肩を捕まれ迫られていた。
「フィ…アナ…」
「何よ?さっさと説明しなさい…」
「その前に…離れて…」
「何?…離れて…って…あ!」
正直綴也はフィアナの胸部が接触しそうで説明をするにはいささか状況が良
くなかった。
「あー…そうだったわね…」
「はふぅ…」
「再会した時にもかかったし…」
「ごめんなさい…」
「じゃなくて説明説明…」
彼女も綴也の言葉を理解し離れてもらった。
吐いてしまう危険を脱して安堵の息を吐き終えた綴也は簡潔に事情を彼女に
説明をする事にした。
「という訳なんだ…」
「…」
説明を聞いたフィアナは頭痛がしているのか手を頭に当てていた。
「解ったわ…」
「フィアナ?」
「話はあんたがここに戻って来るのを待っててあげるから速く忘れ物を取り
の行きなさい…」
「え!?だけど…」
「ここから遠いの?」
「急いで走れば往復で三十分位かな…」
「それ位待っててあげるから…ほら、行きなさい」
「ありがとう…」
フィアナにお礼を言って綴也は校門を抜けて行った。
「……」
学校の校門に残されたフィアナは。
「はあ…やっちゃったわね…」
とつぶやいた。
「あなた!!」
「ん?」
「この動画だよ…」
この学校の生徒である男女が動画をフィアナに見せて来る。
画面内には綴也と今朝引退発表をした有名人が戦っている映像が映し出され
ている。
「これって…」
「あいつが言っていたのはこの動画の事だよ…」
「こんな作り物の所為で…」
「それ、作り物じゃないわよ…」
「「「「「え?」」」」」
「だって私もあの場にいてこれ動画にして出しちゃったの私だもの…」
「「「「「!?」」」」」
フィアナの言葉に周囲が驚きの声を上げる。
忘れ物を取りに戻るのに集中してるので綴也は忘れているがこの騒動の原因
の一つと言える理想の円卓第一位との対戦動画を撮影して動画に上げたのは
状況的に悪戯と趣味目的で録画しそうな電子製命体を除けば悪意ある盗撮犯
でもない限り一人しかなかった。
「何でそんな事を?」
「あの試合であいつが何か不正でもしてるのかと疑ってたのよ…この時は…
ね」
この試合があった時の彼女はそんな心の状態だった。
だがこの勝負の後に綴也と対話をして彼女は心境の変化があった。
真相を知っても綴也のやらかした事は乙女として一生許す事は無い。
何故なら身体が変わってしまったいや変えてしまった程に心が痛かったから
だ。
だからと言ってもう敵意むき出しで接する心算も無い。
この動画を見ているともしこの勝負の前に自分との会話を先にしていればと
いう思考が浮ぶ位には彼女も心の中で変化があった。
「でもどこで待って…ん?」
フィアナのPDにメールが届いたというアラームが鳴る。
内容を確かめると画面にはこの学校の地図らしきものが載っていた。
「これ?」
この場所に来いと書かれていた。
フィアナは差出人の名前を見る。
「あ!?」
それはこの学校にいる自分の知っている女子のものだった。
「あー…そうだったわ…」
メールの全文は見ていない。
何故なら文の節々込められている感情が読み取れて確信めいた危険を感じた
からだ。
「…行ってみないと…か…ねえ?」
「「「「「?」」」」」
「この場所ってってどう行ったら良いかしら?」
地図に表示されているのが体育館でその場所を近くの生徒に聞いたフィアナ
はこの学校では明らかに浮いているであろう服装であるが学校の奥に進んで
いく。
「あー…ちょっとここに来るの今日じゃなくても良かったかしら…」
傍から見ると歩みは軽やかで快活という風に見えるがその顔はどこかメール
の差出人がどんな顔をしているのか確信があるのでどこか会いに行きたくな
いなというのが顔に出ていた。
「…あ」
という声がフィアナから漏れる。
何故なら目の前に先程のメールの差出人である神条恵理香が待っていた。
自分を見る恵理香の表情を見たフィアナは少し前に過った様々な後悔が後の
祭りなんだなと思った。
(綴也…早く帰ってきて!!)
とフィアナは願うのだった。
Mル…さてフィアナさんが来た理由なんですが…
Dさん…自分のやらかしを詫びに来たのか?
Mル…もう手遅れなんですけど…ね。
Dさん…こうなると後は…
Mル…成り行きを見守るしかありません♡。
Dさん…それで誰があの少女を呼んだのだ?
Mル…もちろん、この学校にいる彼女のアイディアル仲間だった
一昨日彼女の所為で旦那との予定を潰された誰かさんです
よ…
Dさん…我が友がここに戻って来るまでの間にこれはこれで一悶
着の…
Mル…そうとは限りませんよ…フィクションじゃないんですから
…
Dさん…言霊という言葉を知っているか?
Mル…どちらかと言えばフラグというやつですね。




