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IFかもしれない世界で綴る物語(あるかもしれないみらいで生きるライフ・ストーリア)  作者: きちだ しんゆう
理想と幻想の間~ミックスド・リアリティ
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アオバ・オアヤと老紳士






「全身同じ色なんて凄い格好ですよね」

「僕のイメージデザインってそんなに良くないですか?」

「イメージでデザインをしたんですね。イメージデザインをする人はよく偏

ったデザインになるんです。もしかして朝倉君は蒼色が好きなんですか?」

「…好きですね」

「成程、まあ朝倉君の住人登録も見届けましたし私もここで一度別れましょ

う…」

「あの副会長。僕、ここでどうしたらいいのか解らないんですけど?」

「まあ、自分から勝負を挑んでみたりしてみるのもいいんじゃないですか?」

「いや、いきなり見ず知らずの人に戦いを挑む事なんて出来ませんよ…」

「私が教える事も出来ますが…でも、自分で見て知る事が重要ですよ朝倉君

…仮に死んでも現実で死ぬ訳ではありませんし」

「っきも同じ様な事を言われました…」

「では自分で頑張らないといけませんね。大丈夫です時間が来たら連絡は入

れますから頑張って下さいね…」

「ええ!?副会長!?」

「うふふ。それでは頑張って下さいね。後あの黒いのに勝負を吹っかけられ

ない様に気をつけてくださいね…あ!そうでしたそういえば名前はどうしまし

た?」

「名前…ですか?」

「住人としての名前ですよ…まさかそのまま本名ですか?」

「ああ!アオヤです。アオバ・アオヤ」

「そうですか…ではアオヤ君一つゲームをする際に一つアドバイスがあります

ゲームは最初は一人で手探りでやってみるものですよ」


そういってシアは駅を出てしまった。

まさか本当に置いて行かれるとは思わなかった。

生徒会副会長は意外にスパルタなのだろうかと思ってしまった。

しばしここにいても何も進展しないのでとにかくアオヤは外に出て見る事にし

た。

外を見てみると街は先程まであった破壊の後などまるで最初から無かったか

の様に賑やかだった。

先程まであのような事が起こっていたのが夢みたいだと思うくらいだった。

それに良く歩く人々を見てみると初めてこの街を訪れた時に見た物語に出て

きそうな服装の人々が大半だった。

中には外見すら人間ではない人も居たので本当にここが現実の世界なのか夢

を見ているのではないかと思えてしまう程だった。

今思えばそれは彼らがイリュシオンの幻想住人だったという事だったのだと

アオヤは理解した。

暫く周りを見ていたがそれ所ではないと現実と向き合わなければならない。

まさかゲーム初心者にいきなり自分でやってみろというスパルタ方式とも言

われるは思いもしなかった。

アイディアルでも自己流でやってきたがそれでも何からやっていいのか解ら

なくなる。

ましてやゲームは未経験で初めてなのだ。

ならば誰かに聞くのが一番だと思い案内の人に話を聞いてみる為に駅に戻る

事にした。


「失礼…そこの少年」

「?」


駅に戻る前に声をかけられたアオヤが声の方を向くとそこには老人が立って

いた。

穏やかな顔立ちに背筋は確りしており服装もかつて住んでいた国の衣装と相

まって正に老紳士と言う言葉形作った人物だった。


「あのー」

「ははは…出口から出てきてから二十分以上も駅から動かないままだったの

で初心者と思い声を掛けさせて貰いました」

「あぁ…」


アオヤは自分がまるで田舎から出てきた人はこんな風になると聞いた事があ

るが今の自分は正にそれなのかと思い少し気恥ずかしくなった。


「朝倉 綴也君ですね?」

「はい、そうですけど貴方は…」

「……」

「?」


名前を聞かれて答えた瞬間老紳士は手を額にやり沈黙してしまった。


「申し訳ないがそれは貴方の本名ですよね?」

「そうですけど何か?」

「ここでは違う名前をつけなかったのですか?」

「違う名前…あ!?…って!?」

「…申し訳ありません。少し意地悪が過ぎましたな」


言い終えても老紳士は笑いを堪えている余程可笑しかったらしいがアオヤは

今一番の疑問を口にした。


「すいません、僕はアオバ・アオヤっていいます。あの貴方は…?」

「これは失礼、私は今日貴方と一緒に此処に来た生徒会の者ですよ。こう見

えてもですが…此処では桜羽 思命 (さくらば しめい)と名乗っており

ます」

「え?ええ!?」

「この姿では解らないかも知れませんが」

「いや、解りませんよ絶対。だって…」

「いや大変でしたな…本当なら貴方が何も知らなければサプライズで貴方を驚

かすはずでしたのに逆に我々の方が驚かされるとは思いませんでしたよ。…ま

あこれが証拠という事で信じていただけませんか?」

「は、はい…」


如何やら本当に生徒会のメンバーらしいがもしかしたら他のメンバーもこん

なにイリュシオン内では別人になっているのだろうかと思った。

そうあまりにも別人過ぎると思いたかった。

学校の生徒会メンバーは全員女性なのにまさかイリュシオンという未体験の

世界で男性になって更にこのような老紳士でいるなど予想など出来る筈も無

かったアオヤは返事以外の言葉が出なかった。


「如何やら無事にイリュシオンへの登録も済み貴方は幻想住人(ファンタジ

スト)の一人になった訳ですね…」

「は、はい」

「それで貴方は何をしていたのですか?出口で何故あんなに呆けていた様に

見えたのですが…」

「え?…周りが皆見たことも無い格好の人ばかりで圧倒されちゃって…」

「おやおや、貴方はこの風景には溶け込めそうな服装で着ていたというのに

おのぼりさんになっていたと…」

「あれは学校の制服だったんで…」

「うちの学校の制服ではないではないですか…あれは」

「うッ!一応東京の学校で支給されてる制服ですけど…」

「そうでしたね話を逸らしてしまいましたね…して貴方は何故ここでおのぼり

さんを?」

「一人でやってみなさいと言われたんですけど僕ゲームは初めてで…何をやっ

ていいのか全然解らなくって…」

「全くでは私がご案内いたしましょうか?」

「ええ!?良いんですか?副会長は…」

「我々自身が教えてはいけないなど彼女も言っていませんしね…」

「え、ええ、まあ…良いんですか?」

「それはお気になさらず。では参りましょうか?」


急遽謎の老紳士と言う同行者が出来てしまった。

だがアオヤ自身イリュシオンでは何をしていいのかも解らないので一先ずこ

の同行者と一緒に行動する方が良いかもしれない。

とゲームの中とはいえ知らない人に付いて行っては行けませんという多くの

子供が親に教えて貰っているはずの事を高校生とはいえ思いっきり無視して

一緒に歩いていくのだった。

蒼い髪の少年と老紳士という組み合わせで綴也はこの老紳士についていく形

で同行していた。

この謎の老紳士が生徒会のメンバーの一人と言うのならば一体何者なのだと

いう当たり前の疑問にぶつかる綴也は直接聞いてみる事にした。


「あのー、聞いてみていいですか?」

「?どうぞ」

「貴方は結局生徒会の誰なんですか?」


と聴いた瞬間歩きを止めた老紳士の顔は苦笑顔になり。


「いけませんね…良いですかアオヤ君、このようなゲームではいきなり現実の

名前を聞くのはマナー違反です」

「え!?」

「このような多人数参加型ゲームにおいてプレイヤーの本名を聞く事がマナ

ー違反なのは基本中の基本なので覚えておいて下さい。皆さん大半は自分で

はない誰かあるいは理想の自分自身というものになりたくて此処に遊びに来

ているのですから…」

「ごめんなさい。このゲームの事も今日始めて知ったしゲームもやるのはこ

のイリュシオンが初めてで…」

「…想像以上に何も知らないようですね。何せドラゴンの事も知らないそう

だったそうじゃないですか?」

「あの…ドラゴンってそんなに有名なんですか?」

「ドラゴンを知らないというのは稀少でしょうね。あれは我々くらいの世代

なら何度か見てしまう事はあるはずなのですが…」

「それは…褒められてはないんですよね…」

「ほら、野球のチームにあるでしょうあれの元になっているのがドラゴンな

んです」

「そ、そうなんですか!?」

「そうですよ。そんなに驚かなくても…」

「あのマスコットとさっきのドラゴンさんは同じモノには見えません」

「ハハハ、それもそうですね」

「じゃあ…何であなたや生徒会の皆は一緒に遊ばないんですか?これってゲ

ームなんですよね?ゲームって一緒に遊ぶ物だって思いますけど…」

「それならばお答えしましょう。それは簡単です…此処では皆敵だからです

よ…」

「敵?敵って…」

「簡単に言うと生徒会メンバーは全員ではありませんが此処ではそれぞれ対

立の立場なのです。お互いが幻想住人である事は知っているんですが対立し

ているのならば一緒に遊ぶというのは中々に難しい、何せ此処では敵ですか

らね…」

「そうなんですか!?」

「まあそんな顔をする必要はありませんよ。敵ではありますが向こうがどん

な人間か知ってるし此処での事を現実にまで持ち込んだりは致しません。こ

こはあくまでゲームなのですから。まあ、対戦ゲームの様なものですからお

互いが好敵手のような関係なのです」

「成程…」

「では、私からも一つ質問させてよろしいですか?」

「はい、答えられる事であれば…」

「何故、姫神殺しの貴方が今もアイディアルの訓練を続けているのですか?」

「?アイディアルが好きだからですけど…」

「…え?い、いや、ごほっ!!ごほっ!!」


老紳士の質問はアオヤにとっては答えられる質問だったので答えたつもりだ

ったのだが老紳士は予想外だったらしくしばし呆けてからむせていた。


「だ、大丈夫ですか?」

「まさか即答で返されるとは思いもしませんでしたよ」

「え?、いやそう言われても…答えられる質問だったから」

「ならば何故貴方は…」


老紳士が再び何かを問うとした瞬間二人の近くで大きな音がした。

その音はつい先程まで綴也も聞いていた音。

建物や破壊される音である。


「こ、これって一体!?って、まさか!?」


アオヤは一瞬先程まで一緒にいた赤い髪と眼のの少女と大きな黒い竜の姿が

思い浮かんだ。


「今貴方が想像した二人が戦っている音ではありませんね。あの二人が戦え

ばこんな音ではすみませんから…」

「え!?じゃ、じゃあ…」

「行って見れば解ります」


音のする方へ向かうとあたり一面は崩壊しその中心には老紳士の言うように

見知らぬ二人の少女が対峙していた。

一人はSFに出てくる様なデザインの服装の少女。

もう一人は帽子とローブに身を包みローブの下はファンタジーに出てくる様

な服装の少女だった。


「相変わらず魔法使いって最悪!!」

「超能力者の貴方に言われたくありません!!」

「うるさい!!存在そのものが詐欺とインチキの固まりの癖に!!」

「黙りなさい!!存在そのものが突然変異の怪物の分際で!!」


超能力者と言われた女子が手をかざすとに半壊したビルの大きな破片が手も

使わずに持ち上がる。


「超能力は怪物でも突然変異じゃなくて人間に秘められた力よ!!アンタみ

たいな詐欺と一緒にしないでよ!!」


その手をかざす少女はそのまま魔法使いと呼ばれた少女に向かって手を投げ

る様に振るわれると破片は少女に投げられたかのようにされど物凄い速さで

向かっていく。


「魔法は詐欺でもインチキでは無く人間が昔から持っていた世界とつながる

夢と希望よ!!それを愚弄する事は許さないわ!!」


それに対して魔法使いらしい少女が手を目の前に振るうと風が自身に向かっ

ていく大きな破片を絡め取るように回転しそのまま超能力者と呼ばれる少女

の方へ向かおうとする。

すると超能力者らしいの少女は手を向かって来る破片に掲げ破片を押し留め

ていた。

そこから両者は両手をお互いに掲げ見えない押し合いをしている。

両者の間には大きな渦が柱の様に渦巻いている。

しかしそんな中お互いがお互いの事を罵倒しあっている声がはっきりと聞こ

えていた。


「あれって…所謂魔法使いや超能力者って…言うんですよね…?」

「魔法使いや超能力者は解るんですね…ちょっと安心しました」

「え?いや本物は見た事なんて無いですよ…僕は?」

「まあ誰も見たことは無いんでしょうけど…現実にはいませんし」

「あの、これって…?」

「あの二人はこのイリュシオン内では有名な組織のメンバーですね」

「組織?」

「このようなゲームではギルド、チーム、組織等を組んで集団で遊んだり他

の集団と戦う事が出来るのです」

「あの…ギルドって…?」

「組合のことです。後で自分で復習する様に…」


ゲームに触れてこなかったアオヤはギルドという言葉を知らなかった。


「そしてあの二人の組織の対立はこのゲームでは有名ですね…」

「有名?」

「ええ、お互いの能力の悪口の言い合いながら戦っているので段々注目を集

めましてね…」

「…って止めないと」


老紳士の話に聞き入っていたがゲームの中でとはいえ何もこんな街中でこん

なケンカをしなくても良い筈とアオヤは前に出ようとするのを老紳士は右手

で制してきた。


「およしなさい。これは現実に起きている戦いではなくゲームなのですよ。

彼女達は真剣にこのゲームを楽しんでいるのです」

「どう見ても殺し合いしているしか見えないんですけど!!」

「…そろそろですかね」

「そろそろ?」


老紳士が呟く直後ビルの破片を混ぜた竜巻は風船のように爆ぜて周囲に大き

な衝撃を起こした。

その衝撃に耐え衝撃が止んだアオヤ対峙する二人の少女を見るとそれぞれの

後ろに千人程の集団が集まっていた。


「やっぱり来ましたか…」

「あの…これは?」

「言ったでしょ、彼女達の組織の対立はこのゲームの名物の一つだとこのよ

うに戦うのもこのゲームではこれも遊びの一つなのですよ」


老紳士がそう言った直後には目の前にいる集団がお互いに目掛けて突撃して

いた。



Aヤ…あの…思命さん。


S命…どうしましたアオヤ君?


Aヤ…気になったんだけど僕に声を懸けるまでずっと僕を見てた

   んですか?


S命…ええ、周りを見ておのぼりさんの様になっていた貴方をず

   っと…。


Aヤ…何ですぐに声を懸けてくれなかったんですか?


S命…ある人からおのぼりさんになっている綴也さんを録画する

   まで待ってて下さいと言われてしまいましてな…


Aヤ…ま、まさか…それって…


S命…冗談です。


Aヤ…冗談に聞こえなんですけど…ミフさんならやりかねないっ

   て…。


S命…ははは…確かに。

   (彼の言った通り素直な子のようですね…この子は)


Aヤ…あれ?もしかして本当に冗談だったりします?


S命…さあ、どうでしょう?



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