イリュシオン~それは幻想という名の
「君、綴也君…起きて綴也君」
「自分で気絶させておいて自分で起こすか…」
「うるさい!!大黒蜥蜴!!」
「誰が蜥蜴だ!!我はドラゴンだ!!」
誰かが自分を呼んでいた。
その後その誰かは誰かと言い争いをしていた。
その内一人の声の主がサクラのだと綴也は気が付いた。
先程の少女の言っていた事は本当だった様だった事に安堵を覚えた。
彼女がいるという事はあの小さい子も一緒のはずとそんな事を思いながら彼は目を開けた。
「…ん…え!?」
しかしそこにいるのはサクラではなく自分を気絶させた謎の少女だった。
その少女が何故かあの黒い怪物何だか何のたわいも無い口げんかをしている
様に見えた。
「何であなたが…?」
「…ようやく目覚めた?」
「…え!?」
少女からサクラの声が発せられている事に驚いて上手く思考がまとまらなかっ
た。
一体何がどうなっているのか?
「私が…解る?」
「え!?その声…」
「…」
「貴女は…まさか!?」
「…」
「…サクラ会…長!?」
「…正解よ」
自分の答が正解だと解かっても安心よりも驚きで整理が追いつかなかった。
「一体何が!?それに何で会長が!?」
「待って待って説明するから…」
「説明って…それにあの子は!?」
「先ずは周りを見て…」
「周りって…え!!?」
外見が全く別人なサクラに促されて周りを見るとそこには建物や道路が立っ
ていた。
そう先程まであった破壊の惨状など無かったかの様だった。
自分は先程まであの黒い怪物から逃げていたでも見つかり殺されそうになっ
て自分が自暴自棄でサクラとあの少女を守ろうと戦った。
でも今街は元通りになり自分と怪物との戦いに乱入した少女はサクラで何が
どうなっているのか綴也はまた頭が混乱しそうになる。
「あの…会…長?これは一体?」
「うん…これはね…」
「言ったであろう…これは遊戯であると…」
「!!?」
第三の声のする方向に顔を向けるとそこにはあの黒い怪物が何事も無かった
ように立っていた。
「大丈夫よ。この大黒蜥蜴は今は何もしないから…」
「え!?黒蜥蜴?」
「何が大黒蜥蜴だ!!ドラゴンたる私に向かって!!」
「ハイハイ…」
先程彼女は黒い怪物を敵だと言っていたのに仲良くお喋りをしているように
見える。
一体自分が気絶している間に何があったのか。
そして何よりあの黒い怪物から街を破壊していた時の今の雰囲気の違いに思
考がまとまらなかった。
「いい綴也君?…君が先程まで体験していたもの…アレはねゲームなのよ」
「……え?」
説明を聞いて綴也は思考が暫し停止した。
ゲームとう言葉を聞いて綴也の頭は混乱は更に深まった。
綴也はゲームと言う経験が無いがゲームと言うものがどういうものかは解っ
ているつもりだ。
だからそこから考え始めた。
これがゲームつまり遊びという事なのか?。
本当にゲームだったという事か?
先程の光景を見てとても信じる事が出来そうになかった。
むしろあれが実は現実だと言われた方が信じてしまいそうだった。
「そんな反応になるのも無理も無いな…今の今まで貴様はこの女に騙されて
いた訳だからな…」
「騙してないわよ!!何でアンタはそんなに無関係装っているのよ!?何割
かは絶対アンタの所為なんだから…」
「騙す?騙すってどういう?」
「此処は複合現実を利用したゲーム…イリュシオンの中だ」
「イリュ…シオン?…それって一体?」
「知らなかったの?本当に?」
黒い怪物がまるで信じられないと言う様子で綴也に問い掛けてくる。
「?…はい」
綴也も素直に答えた。
「本当に?」
「…はい」
「……」
すると黒い怪物は唸るように腕を組んで考えている。
「大雑把に言ってしまえば同じく複合現実を利用したアイディアルと言うス
ポーツがあるだろう。あれを遊戯にした物と言えば解りやすいか?」
「アイディアルを遊戯?」
「そうだ…」
「でも…何だか解るような気がする。えっと…ありがとう…ございます」
「フッ気にする事は無い…」
どうやら自分に解かりやすいように説明を考えてくれたと理解し綴也は頭を
下げた。
「いや、説明するのは私よ!?何でアンタが説明しているのよ!?」
「じゃあ…もう一ついいですか?」
「何だ?」
「何?」
「あの…ドラゴンて何なんですか?」
「「……え?」」
そう綴也には気になる事があった。
この怪物の事だ。
ドラゴンと言う生き物が綴也は聞いた覚えが無い言葉だった。
この質問で綴也にドラゴンとは何かと言う事を説明するのに更に時間を費や
す事となった。
「という事だ…」
「つまり、ドラゴンっていうのは空想上の生き物なんですね…」
「そうだ。しかし大昔には恐竜もいたというのだから私のようなドラゴンも
実際に生息していたのかもしれん…」
「成程…てっきりドラゴンさんって言う名前だと思ってました」
「ドラゴンという空想上の生き物を知らないという奴もそれを名前だと思う
奴も私からすればどちらも珍しい…」
「あの二人とも…そろそろいいかしら…」
「ごめんなさい…」
綴也はドラゴンを知らないという事で急遽ドラゴン講座が開始され十分後よ
うやく説明に戻れた。
「このドラゴンがさっき説明したけどイリュシオンは複合現実を利用した対
戦ゲームよ」
「た…い…せん…ゲーム?」
「そう。簡単に言うとこのゲームの中で私も皆も魔法使いや超能力者に扮し
てバトルしているの…私やそこの黒蜥蜴はこのゲームのプレイヤーという訳
なの」
「え?じゃあドラゴンさんも今はそんな姿だけど本当は人間って事?…」
「そういう事よ」
「…」
ほんのつい先程まで現実を越えた災禍に見舞われたと思っていたらそれが実
はゲームの出来事だった言われても頭も心も受け入れる事が出来なかった。
そうあまりにも先程までの体験が現実的過ぎた為かそう言われても信じる事
が困難を極めていた。
「まあ、貴様が私と戦えていたのはある意味ここがゲームだったからだ。こ
こはそういう場所だからな…」
「成程、あの時僕がドラゴンさんと戦えたのも此処がゲームだったお陰だっ
たんですね…」
「まあ、今はそう理解しおいていいだろう…」
「じゃあ…あの破壊の跡も…」
「まあ、ゲームだから直せなくも無い」
「そうか…よかった…という事はさっきの子も」
「もちろん無事だ…あと逃げ惑っていた住人も全員な…」
「本当…ですか?」
「本当よ…逃げ回っていた住人は多くがこのゲームのプレイヤーじゃないけ
ど此処でそういうスリルを味わおうとする観客と呼ばれている人達よ…ゲー
ム中では凄い事になっているけどちゃんと生きてるわよ」
「本当に?」
「本当よ」
「嘘じゃないですよね?」
「嘘じゃないわ」
「本当の本当に本当の本当に本当の本当に本当の本当に本当の本当に本当の
本当に…」
「綴也君…落ち着きなさい。そうなるのも無理は無いけど本当にあの子も無
事よ今はシアちゃんが一緒にいてご両親探してるから大丈夫よ…」
「よっ…よかったー」
何度も何度も確かめて綴也は街の中で大の字になっていた。
ようやく彼女の言葉を信じて安心出来た。
しかし暫くは起き上がれそうも無かった。
「混乱するのも無理は無い。貴様も体験しただろうがこの現実を超えた現実
と呼べるクオリティこそがこのイリュシオンの売りでもあるのだからな…」
「うん。本当にあんな出来事が起こっているんだと思ってました」
「それぐらいここのイリュシオンに使われている複合現実技術は凄いという
事だ。その所為で何の説明もなしにこの中に来た人間はそうやって混乱する
者も珍しくは無い。貴様はまだ良い方だろう」
「ねぇ、あなた達さっきまでゲームの中でとはいえ殺し合いしていたのよ!
?何でそんなに急に仲良くなってるの?」
「!!」
「それにね綴也君、この大黒蜥蜴はゲームとはいえ何時もあんな破壊活動を
している悪者なのよ!!さっきまで君もあんなに怒ってたでしょ!?」
その一言で綴也は思い出した。
これがゲームだとサクラは言っていた。
しかしこの黒い怪物はあんな破壊活動をしていた。
あんなにも惨たらしい破壊を引き起こしていた。
街を壊し自分や街の人達を殺す事を遊戯だと言っていた。
先程までの事が綴也の頭の中で思い返される。
その瞬間綴也は…。
「ごめんなさい!!ドラゴンさん!!サクラ会長!!」
立ち上がり頭を下げていた。
「え!?綴也君!?」
「!?何を謝っている!?」
「いやゲームの中だからって…あの時僕は本当に頭に来てドラゴンさんや会
長に…」
「「…」」
「ゲームなのに僕は…二人をこ…」
綴也は頭を下げたまま顔を上げることが出来なかった。
次の言葉も出す事ができなかった。
実はゲームの中だったという事を知らなかったとはいえ彼はこの最初はドラ
ゴンを何が何でも止めようとした。
ドラゴンが恐ろしくて怖くて二人の少女を護ろうとして…。
だがサクラが乱入して自分を止めに来た時彼女は自分がゲームである事を知
らないから自分を止めに来たのに綴也は止められた事に逆上してサクラにも
怒りいや殺意を抱いてしまった。
そう…本気で殺してやろうと思ったのだ。
あの時から今に至るまでの経緯を思い出し綴也が二人に抱いたのは怒りより
も罪悪感だった。
「気にする事は無い…貴様はむしろ…」
「だけど…」
「此処がゲームであっても悪なのは明らかに私だ。ゲームとはいえ殺意を向
ける者など幾らでいるし貴様の殺意は誰かの為のもの。まだ良い方だ」
「でも…」
黒い怪物いやドラゴンは綴也からすれば殺そうとした被害者だ。
しかし殺されかけたはずなのに綴也に対する怒りが感じられなかった。
「私はむしろ貴様が気に入った」
「…え?」
「貴様は何も知らないのに本気で恐怖を感じた筈なのにこの私に立ち向かった。そこの女を護る為とはいえだ…」
「それは…」
「貴様が何も知らない事は貴様と会話して直ぐに気付いた。しかしこの私に
は知っている者ですら逃げ出すばかりだからな…蛮勇なれど見事と褒めて遣
わす」
「何偉そうに言ってるのよ…」
その一言に綴也は何と言って良いのか解からなかった。
「まあ、両手両足両翼は我慢しても顔を何度も剣で切り刻まれた時は何も知
らない事を差し引いても頭に来て本気でやってやろうと思ったがな…」
「ごめんなさい…」
だがその一言を聞いて其処は怒っているよなと納得と申し訳ないと思い頭を
下げた。
「…優しい男だな…お前は…」
「優しい?僕が?」
「先程まで遊戯とはいえ街で破壊の限りを尽くしていた悪者たる私に謝罪し
たのだ。そんな男は…優しい以外の何者でもない」
「でも僕は此処がゲームだって知らなかったから…それに僕だって…」
「それはお前が気にする事ではない…そうだな?ヴィヴアンヌ?」
「うっ!」
「会長が?何で?」
ドラゴンの一言にヴィヴィアンヌという名で呼ばれたサクラは顔を逸らして
いた。
「この女は恐らく何も知らないお前を此処に連れて来て私の姿を見せて驚か
せてやろうとドッキリというヤツを考えたのだろう。私は大体休日にこのエ
リアにこの女と戦うか修行でこのエリアを破壊する為に来るからな…」
「しないわよ!!そんな事!!」
「じゃあ何が目的だったのだ?」
「それはね…綴也君」
「はい?」
「このイリュシオンやってみない?って誘おうと思ってね」
「え?」
ヴィヴィアンヌの一言は綴也の想像を超えた。
「実はねうちの学校の生徒会は幻想住人になる事つまり
イリュシオンのプレイヤーになる事そしてプレイする事が伝統になっている
のよ。でも君は本当にイリュシオンの事も何も知らないみたいだったから少
しサプライズに出来るとかな思って何も教えないままここに来たっての」
生徒会にそんな伝統がある等全く知らなかった。
まだ入っていないから当然なのだ。
仮にイリュシオンというゲームを知っていたとしても自分はさっきまでのよ
様になってしまうのではないかとも思った。
しかしゲームだと知っていたら自分があの時あの二人に殺意を抱かなかった
かもしれないという自信も湧かない程にこの世界は現実的だと思った。
「でも、様子を見ようと思ったら綴也君私の手握るわお姫様抱っこするわ玩
具振り回してこいつ相手に暴れるわ私の予想の斜め八十九度上を行った事ば
かりしてくれて開いた口が塞がらなくなってたわよ」
「ごめんなさい…」
「全く、知っている人間ですら事によっては二度と行きたくないと上げる者
もいると言うのに…それを知らない人間を何も教えずに連れて来るとはまる
で悪徳企業のやり口だな」
「悪かったわよ!!もう!!本当に知らなかったなんて思わなかったのよ!!とにかく綴也君には生徒会のメンバーに入るの
ならばイリュシオンの幻想住人になってもらわないといけないの」
「え!?」
「どう?やってみない?やってみると面白いわよ?」
赤い髪の少女は綴也に手を差し伸べる。
その笑顔はサクラレノンフォードの花の様な笑顔とは違う猛獣の様なモノに
見えた。
「どう考えても楽しそうと言うよりも恐怖をアピールしているようにしか見えないのにそれで誘うとかまさしく悪徳…」
「うっさい!!これ以上余計な事言うな!!黒蜥蜴!!」
「そもそも誘うのならば最初から普通に誘えばいいだろうに…」
「色々事情があるのよ…私達にも…」
「というか…貴様が現実で生徒会長をしている事も未だ信じられん…」
「アンタには言われたくないわ…その図体で…」
「よし、後で顔をかせ。貴様を我が剣で細かく切り刻んでくれる…」
赤い髪の少女と黒い怪物が互いに言葉で火花を散らしている中突如として訪
れた現実を超えた世界への誘いに綴也はどうしていいか解らなかった。
Mル…と言う訳で答えはゲームの中だからでした。
E香…それだけで納得出来んぞこれは…。
Mル…嘘は言ってませんよ。嘘は…。
E香…それは他にも理由があるという事だな?
Mル…さあ?それはどうでしょう?
E香…それは答を言っているようなものだぞ。
Mル…まあ、コイツの命に懸けて言いますが綴也さんに特別な力
は等はありませんとだけ言っておきましょう。
E香…そこは貴様の命だろが!!




