それは…ただそれだけのため
どうしてこうしようと思ったかと聞かれれば本人は解らないと言うしかなか
った。
大剣を振り下ろされる瞬間綴也はサクラと幼い子供の前に立っていた。
目の前に降りかかる意思を持った理解不能の前にである。
それで何か結末が変わるとは彼も思っていない。
しかし、何もしないままでは彼女達も自分と一緒に死ぬ。
何故にこんな事になってしまったのか彼は理解が出来ないしする事は出来な
いだろうと思った。
だがそれでも二人が目の前の怪物に自分と一緒に殺されなければ事は受け入
れられないと思った彼は彼女達の前に出た。
二人の前に立った彼は自らの宝物である玩具の光剣を取り出しスイッチを入
れる。
その宝物は光る柱いや剣を形作る。
色は大好きな空の様な海の様な蒼色。
その光の剣で迫る厄災放つ大剣を受け止めようとする。
しかしこの光剣は玩具それであの現実を受け止める事など出来ない事等火を
見ようとするまでも無い。
例えではなくこれは只の足掻き。
人間が死の直前に自分の人生の最後に自分のやりたいと思った事をやって死
んでいくという人間がどのような運にめぐり合えればそんなめぐり合いを与
えられるか与えられないか神様にも解らないかもしれない機会。
それが今、朝倉綴也という人間に与えられたのかも知れない。
その機会を実行しているだけかもしれない。
それでも彼はやろうと思った。
玩具の光剣であの大剣を受け止めようと思った。
サクラもこの子も何とかして護ろうと思ったからだ。
大剣が近づくが人生が終わりに近づくと見る事になると言う走馬灯というも
のは見る事は無かった。
自分の最後がこんな所であるとしてもそれでも此処で何もしないのだけは嫌
だと思った。
受け止めて少しでも彼女達が逃げる時間を作ろうと思った。
人生の最後の瞬間に彼は黒い怪物の大剣に向かって蒼く光る玩具の光剣の刃
を振るった。
そこには静寂があった。
そこに大きな剣がもたらすであろう大きな音は鳴らなかった。
「…え!?」
「何!?」
その結果はその場にいた誰もが予想していなかった。
サクラも大きな怪物もそして…綴也自身も。
「……………え?」
受け止めたのだ。
自分の玩具の光剣があの黒い怪物の大剣を受け止めている。
「貴様…その剣は…」
怪物の声でその事実を改めて認識したとき思わず間抜けた声を発していた。
何故にこんな事が起ったのかはわからない。
それでも綴也は声を全力でサクラに上げた。
「先輩!!その子を連れて逃げて!!」
「…え!?」
「早く!!急いで!!」
「う、うん…」
「逃がすか!!」
二人を逃がそうとした瞬間に怪物が動いた。
大剣を振り下ろした体勢のまま口を大きく開き何かを吐き出そうとしている
のが解った。
「がぁああああああああああああああ!!」
綴也は全身にに力をこめて自ら受け止めている大剣を振り払おうとした。
その時、光剣から発せられた蒼い何かが怪物に向かいは怪物の股下から胸部
に傷を与えた。
「がッ!?」
その痛みからか怪物の顔は空を仰ぎ吐き出されるはずだった光は狙いを大き
くそらして空へと消えていった。
その間に二人の少女は少なくとも綴也の目の見える所にはいなかった。
彼女達を逃がす事が出来た事に綴也は何が起こったのかわからない状況が更
に解らなくなった中で不思議と安堵した。
「フ、フフッ…よもやこのような者と出会う事になるとは…この遊戯の世界
もこれがあるから辞められぬ…」
立ち上がった黒い怪物もその眼を自分に向けてくれた様だ。
この奇跡呼んで良いのか解らない状況がどのくらい続くか解らないが彼女達
が安全な所まで逃げてくれればいいと思っていた。
今更だがこの黒い怪物が自分達と同じく言葉を発する事に驚くべき事かも知
れないが不思議と驚きは無かった。
いや驚く余裕が無くなった。
この理解が追いつかない状況に更に自分のパーソナル・デバイスでもある初
恋の女性が買ってくれた玩具の光剣が今しがた目の前にある大きく黒い何か
の放った大きな剣の一撃を受け止めそして今その何かに一撃を加えた。
最早理解の限界を超えて自分はおかしくなっているのではと思いかけた。
しかし黒い怪物の何気な様子で発した一言が彼を現実と呼んで良いの解らな
い現在に戻した。
「遊…戯…?」
「そう…これは遊戯なのだ。ならば楽しまなければ損と言うものだろう?…そ
うは思わないか?」
「これが…遊び…」
その一言に綴也は驚きを通り越して全身が凍りついた。
黒い怪物は心からそう思っているのが綴也にも解った。
言葉の内容が解れば解る程に綴也の中で先程までの光景が思い出された。
突如として現れ破壊される建物。
大剣が振るわれる事で切り刻まれた街。
あの光景が遊びで作られたなんて思いたくなかった。
でも怪物はこれを遊戯だと言っていた。
綴也は右手に握る宝物の玩具光剣が何故こんな事になっているのか理解は出
来ない。
理解できない事ばかりが連続しすぎてで頭の中の混乱も限界をもう振り切っ
ている。
「…させない」
「?」
「もう、お前には遊ばせてたまるか…」
「何だと?貴様、まさか…」
黒い怪物はその威容からその言動まで何処までも理解不能だった。
だから綴也はこの理解不能の中で何をやりたいか考えた。
それしか考えられなかったのかも知れない。
そして答は自身が思っているより簡単に出た。
逃げる二人の少女を護る。
只それだけしか考えなかった。
「此処でこの場で…お前の遊びを何が何でも止めてやる!!」
綴也は怪物へと翔けて行く。
彼は逃げていった二人の少女を護る為に怪物に向かっていった。
が彼に勝算も作戦も何も無い。
只、気持ちだけで此処に立って怪物に向かっているだけである。
このような現実を超えた動物の倒し方等解る筈もない。
だから彼に勝算も作戦も何も無い。
自分が怪物に殺される事など自棄同然に考えていない。
彼は逃げていった二人の少女を護るその時間を稼ぐ事の為に怪物に翔けてい
る。
「あの女が現れるまでの暇潰しでこのような者と出会うとは…」
向かって来る綴也に怪物は笑いながら大剣を構えた。
二人の少女を逃がした行為に怪物の表情には称賛が宿っている様だった。
あの少年に何が起こっているのは怪物にもわからないがそれでも怪物には彼
が自分に勝てるとは思わない。
「中々勇敢であった…少年!!」
だが自分に傷をつけた少年に自分なりの称賛を込めて。
怪物は大剣を構えこから薙ぎ払いに掛かった。
その速さは今までの破壊行動とは違いその巨体から放たれるであろうスピー
ドとは思えない程に速い。
まるで、怪物の方が小さい動物を標的にして如何にして標的を自分の武器で
斬れるかその鍛錬をしている光景に見えてしまう程の速さである。
その一撃は標的を捉えてそのまま衝撃の波が飲み込んでいく。
彼が翔けていた道に三日月形のクレーターが出来上がっていた。
「さて…ん?」
しかし怪物の耳に走ってくる足音が聞こえた。
先程自ら切り払った場の土煙から切り払った筈の少年が翔けていた。
「何だと!?」
少年は怪物に向かっていた。
その距離では剣が邪魔になりかねない距離まで接近していた。
怪物は即座に剣を横にして大地に突き刺し向かって来る綴也もろとも大剣の
面で薙ぎ払おうとした。
薙ぎ払われた大地には大きな楕円の断崖を作り出した。
しかしそれでも少年は怪物に迫っていた。
「チィ!!ならば!!」
近づかれると大剣は振るいにくいのか怪物は翼を広げ浮遊し少年をその大き
な足で潰しに掛かった。
ただしそのスピードもまたその巨体が出だせるものでは無い。
地面に向かい爆弾の爆撃のように何十秒間に何度も足を落としていく。
それが一分続いた後今度こそ仕留めたと思い怪物は再び地に降り立った。
「がぁああああああああああああああああああああ!!!!」
「何!?」
しかし少年はそれもかわしていた。
必死の形相いや狂相と呼ぶべきかも知れないの少年の光剣の斬撃が怪物の左足
を切り落とした。
「ぎゃぁぁああああああああああああああああ!!??」
怪物はその痛みか今までとは違う叫び声を上げていた。
そう悲鳴である。
その間に少年は右足に接近しその光剣は右足を切断した。
「ぐぅ、おのれぇぇぇぇぇ!!!!」
悲鳴を食いしばった黒い怪物は敵意を顕にしその両翼を羽ばたかせ両足とい
う支えを失った身体を空中へと運び遥か空へと運んだその巨体を急降下させ
少年目掛けて大剣を槍のように構えて突撃していった。
その雄叫びと共に再び大きな衝撃が走り大地が揺れた。
「おぁあああああああああ!!」
そこから大地を壁にした体勢で大剣で何度も大地と言う名の壁を切り刻む。
一振り一振りが嵐の様な一撃が何回も何回も大地を削っていった。
嵐は嵐を重ねて暴れていくそれは先の足による爆撃など生温い物だ。
最後に大剣を両手で持ち雄叫びと共にそのまま叩き付けた。
嵐が爆発となり辺り一体を吹き飛ばし静寂が訪れる。
「はあ…はあ…これは…少々大人気なかった…か?」
息を整えながら怪物はこれで終わったと思った。
「この私がまさか何も知らない子供に手こずるとは…」
「がぁああああああああああああああああああああ!!」
「!?」
怪物は再びあの叫び声を聞いた。
怪物がその声をする方向を向いたときに少年は怪物の大剣からその巨大な右
腕に足を踏み入れていた。
「がぁあああああああああああああああああああああ!!」
その右腕に光剣を突き刺しながら駆け抜けて右肩まで到達し光剣を引き抜き
から斬り降ろす。
その斬撃は怪物の右腕と右の翼を切り離した。
怪物は再び悲鳴を上げる。
「あああああああああああああああああああああああああ!!」
少年はそこから空へんで一撃を叩き付ける。
叩きつけられた光剣は黒い怪物の左の腕と翼を切り落とした。
そうして両手両足両翼を失った怪物は重力に惹かれるように自分が切り刻ん
だ大地に落ちていく。
「だぁああああああああああああああああああああああ!!」
その落ちていく怪物に向かって綴也は叫びを上げてその怪物の顔を目掛けて
光剣を振り下ろした。
その瞬間大地が再び爆発した。
そこには静寂と先程まで猛威を振るった筈だった怪物とその怪物の顔に乗っ
かって呼吸を荒げている少年の図があった。
「はあ…はあ…」
「ふっ…まさか何も知らない少年になどと思いもしなかったぞ。私もまだま
だ修行が足りないと言う事か…だからこの世界は良い」
「はぁ…はぁ…」
「見事だ少年…その武器はもしかしてクオ…」
「あああああああああああああああああああああああああ!!」
「!?」
怪物は何かを言いかけた気がしたが聞く耳など不要と切り捨て綴也は怪物の
顔に剣を見舞う。
怪物の悲鳴が聞こえた気がしたが気のせいだと思った。
この怪物が何を言っているのか解らない。
自分はもう死んでいて怪物を止める事が出来るかどうかなど夢を見ていると
しか思えない。
それでも只あの二人が無事に逃げるまでの時間を稼ぐ。
そのために…。
怪物を止める。
そのために…。
綴也は叫び声を上げながら怪物の顔に斬撃を浴びせ続けた。
何度も、何度も…。
「ぐぁあ!!ぐ!!コイツ!!正気を…チョット…待て…これは…ぐぎゃ
!!」
何度も、何度も、何度も怪物に斬撃を叩きつける。
その度に怪物の顔に傷が刻まれていく。
「おい!!…ちょっと…はな…話…を」
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も…。
怪物の顔を切り刻む。
絶叫と共にその速度も上がっていった。
「あああああああああああああああああああああああああ!!」
怪物に勝てるとは思っていない。
だけど止める。
何をしてでも止める。
彼女達が逃げ切れるならば何としてでも止める。
先ほどの疑問も混乱も知ったことかと言わんばかりにその気持ちでいやその
気持ちでしか綴也は動いていなかった。
「聞けぇえええええええええええええええええ!!」
「あああああああああああああああああああああああ!!」
怪物がとうとう咆哮を上げその大きな口に光が集まる。
これに身をさらしたら綴也はどうなるか考えたがすぐに辞めた。
考えるだけ無駄だと思っただから怪物のそれに呼応するかのように綴也も叫
びその光剣を怪物に叩き込もうとした。
「が!!」
何かが綴也を吹き飛ばした。
黒い怪物の顔から地上に落とされた綴也が立ち上がって見上げるとそこには
金色に装飾されている黒い剣を持った一人の少女が立っていた。
炎の様な紅いの髪と赤い眼に何かの物語に出てくるような女神の様な装束を
黒く染め身に纏い黒い剣を自分の一部のように軽々と携帯していた。
「何なんですか!?あなたは!?」
「このドラゴンの敵ね…味方ではないわ」
「ヴィヴィアンヌ…貴様」
「その敵が何で敵を助けるんですか!?」
「違うわ。どちらかと言うと君を止めるいや助ける為よ」
「僕を止める?助ける?何で!?」
「貴方が何も知らないからよ…」
何も知らない。
この少女の言った事は間違いではない。
それは突然冷や水を掛けられたようだった。
綴也は何も知らない。
何でこうなったのか?何でこんな事が起ったのか?この黒い怪物が何者でこ
の赤い髪の少女が何者なのか?解らない事だらけで誰に何から説明してもら
えれば理解出来るのかすら解らない。
だがそんな綴也でも理解ができた事があった。
それは目の前の少女がこの状況に対して何を思っているのか解らないいや何
と思っているのか表情をみて理解した気がした。
その瞬間綴也の口から感情は吐き出された。
「何を…言ってるんですか?」
「?」
「何でそんな風に平気な顔をしているんですか!?」
「!?」
「一体何でこんな事したんですか!?この街の人達が一体何をしたって言う
ですか!?何でこの人の遊戯とやらで街を滅茶苦茶にされなければいけなか
ったんですか!?どうして街の人達は貴方の遊戯で殺されなくちゃいけなか
ったんですか!?」
もし彼が自分を俯瞰していたらこう思っていたかも知れない。
何でこんなに言葉がすらすら出てくるのか。
何でこんなに怒っているのだろうと。
「貴方もだ!!何をいきなり現れて僕を止めに来たですか!?ふざけるな!
!あなたもその怪物さんと同じだ!!この状況を遊戯としか思っていな
い!!」
「…」
自分はこんなにも怒れる人間だっただろうかと。
今の少年にそんな事を思う事は不可能だった。
不可能なくらい怒っていた。
「あの二人が安全な所に逃げ切るまで僕は此処をどかない!!あなたも邪魔
をするなら…僕は貴方達を…」
「…あの女の子達は無事よ」
「…えっ!?…」
「少し眠ってなさい…」
「!!」
いつの間にか近づいてきた彼女を再び視認した瞬間意識が遠のいていった。
綴也は自分が何もわからずに意識を刈り取られたのだとだけは理解できた。
「か…い…ちょ…」
その意識が途切れるその最後に思った事は逃がした二人の少女の無事を祈る
事だった。
だが意識が完全に失われる寸前に少女の声を聞いた気がした。
E香…おい、答えが解るんじゃなかったのか?
Mル…長すぎるかなと作者が話を分けました。
答えは次の話で解りますとの事です。
E香…しかし、綴也君が凄い事になっているな…アレは…。
アレの中とはいえ怪物の股から胸を斬って両手両足両翼斬
ってその上顔を滅多斬りとは…。
Mル…相手が人間でアレの中でなければ字面が凄い事です。
E香…確かに…




