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調査は足で

大変お待たせいたしました。

 受付裏のバックヤード。

 職員用の更衣室の前で、跳んでみたり身体を捻ったと動きを確認するフウ。

 その装いは茶色い革の軽鎧一式にロングブーツと、冒険者らしい格好になっている。


「うん、大きさは良さげだね」


 動きが阻害されることは無く、重さも気にならない程度。


「じゃあこれを貰っていくよ」


「えっと、本当にそちらでよろしいので?先程も言った通り、貸付品ですからあまり上等なモノではないですよ。ギルドマスターから紹介状と小切手を預かっていますから、店舗へ行けばどんな品も選び放題ですけど」


 そんなフウに困惑した様子を見せるクーリ。

 

 軽鎧は金銭面に余裕のない冒険者へ貸し付けるためギルドが用意している装備の一つであり、ノアルボアという魔物の革から作られたもの。

 軽く柔軟性に優れるが強度はあまり期待出来ず、借り受けた冒険者も大抵はそれなりに余裕が出来た時点で買い替える。


 が、フウにとってはそれが丁度良い。

 

「うん、とりあえず今はこれで」


 賊のアジトから拝借してきた腰のククリ刀は、見る人が見れば一目でそれなりの質だと分かる品だ。

 そのうえ防具まで上等なものを身に着けていたら、()()()()()やけに良い装備の余所者、と悪目立ちしかねない。


 それなら、鉄級に昇格し張り切って高い武器を買った結果、防具が揃えられなかった間抜けなルーキーと、そう見られる方が何かと都合良い。


 ギルドマスターのエディットから提示された依頼の内容は、例のゴブリンが何故、何処から、どうやって南門に出現したのかの調査。

 明確な期限は設けないが可能な限り早急に、調査に関する情報は決して外部に漏らさないよう、とのこと。


 フウが防具を調達する気になったのも、この調査のため街の外へ出る必要があるためだ。


 報酬はまずギルドからの指名依頼という形で、金貨一枚と多大な貢献値。

 そして、


「それより、例の書類は用意して貰えたのかな」


「はい。こちらがグラナタと周辺の詳細な地図、それから魔物の図譜のゴブリンに関する頁となります。あくまでこれは貸し出し品となりますので、紛失しないようお願いします」


 フウから先払いで要求した街とその周辺の地図と魔物の情報を纏めた図譜。

 

 まぁどちらもギルドの備品をそのまま渡す訳にはいかないため、とりあえず一旦は貸し出し。

 依頼達成後に写しを用意して譲渡、という形になった訳だが。


「了解したよ。それじゃあ失礼するね」


「はい、お気をつけて」


 緊急依頼に張り詰めた空気のギルドを後にし、平穏な大通りを抜けた北門には、明け方とは異なる数人の衛兵が見張りとして立っていた。

 やはり警備態勢からして南門とは大違いだ。

 何せ寝ぼけてる衛兵は一人も見当たらない。


「こんにちは。依頼で街の外へ出たいんだけれど」


「冒険者証の提示を」


 余り感じの良くない不愛想な壮年の衛兵へ、鞄に付けたドッグタグを提示する。


「鉄級冒険者のフウだな。依頼内容は?」


「そんなことまで聞く必要があるのかい?」


「……」


 フウの疑問には答えぬまま、早く話せと催促するように目を細める衛兵。


「まぁ良いけれど、調査だよ。知っているかい?魔領域の近くで竜種が確認されたらしい」


「その件については聞いている。が、鉄級冒険者が一人で竜種の調査か?」


 まるで事情聴取でもするように淡々と質問が重ねられる。


 何かを警戒している?いや探っているのかな?


 エディット曰く、衛兵隊の指揮系統には例の家令とやらの手が及んでいる可能性があり信用ならないとのこと。


「いやいや、まさか。けど竜種の出現で、他の魔物達にも異変が出ているかもしれないだろう」


 目の前の男は装備や態度から見て、おそらく北門の詰め所ではかなり高位の立場だろう。


 はてさて、この衛兵はどちらなのかな。


 とりあえず竜種の出現も、それによって周辺の魔物の行動に異変が生じる可能性も、どちらも事実。


 まぁフウの受けた依頼とは関係の無い世間話だが。


「そろそろ良いかな。なるべく迅速に報告を求められてるんだ」


「ちょっと待て、今日はやけに依頼へ出る冒険者が少ないが、それも竜種の関係か?」


「竜種の討伐で緊急依頼の招集が掛かってるからじゃないかな。まぁ対象は銅級以上の冒険者だから、ボクには関係ないけれど」


「そうか、良いだろう。通れ」


 衛兵の足止めから解放され、明け方ぶりに街の外へと出たフウは大きく伸びをする。


 賊のお宅訪問を敢行する前、フウは二度ゴブリンと遭遇した。


 最初はこの世界で目を覚ましたすぐ後、獣道を辿った先の川。

 二度目は賊の生き残りとお話し合いをしている途中。

 どちらも魔領域とは反対の、街道より西側の森の中だ。

 

 ゴブリン達は群れで行動しており、所謂はぐれの類だったとは考えづらい。

 

 図譜の写しによればゴブリンは群れごとに巣を作り、そこを中心に縄張りを広げる魔物とのこと。

 となると巣の位置は、その街道より西側の森から街の南門までの間の何処かと考えられる。


 そして二度目にゴブリンと遭遇した際、その場にはフウだけでなく賊の生き残りがいた。


 何かしらの手掛かりが残っている可能性は高い。


 され、調べるならそこからだね。

面白かったらブックマークや評価をいただけると幸いです。


短編小説投稿しました。

異世界譚とはかなり異なるテイストとなっていますが、30分程でサクッと読めるのでお時間あればご一読いただけると。

『ティラノサウルスを探しに』

https://ncode.syosetu.com/n9996lw/

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