女性?うるさいですね
よく考えたら明日の七時に投稿したら一話飛ばしてしまう方もいると思うので、明日の七時はなしにします。
誤字は十一話ほどまで修正しました。
「君達にやってもらうのは、仮想空間で行う『迷路』の攻略だよ! 第三競技は迷路から脱出するだけの簡単な物さ!」
何故ここまで声を張る必要があるのか、というほど元気な声でルール説明を行う女性。だが、謎だ。何故VRを使ってまでゲームを行うのか。
「今何故VR使ってこんなことするんだろって思った人いるでしょ! それは今からこちらのお姉さんが説明する内容からよく聞いておくように!」
それにしても、本当に声が響く。
何か意図があるとしか思えないほど声が大きい。
それはもう、不快に感じるほどだ。
何人かの生徒が顔をしかめるなか、お姉さんと呼ばれた後方からついてきていた女性が男性研究員を二人つれて現れた。
その後ろからVR機二台が男性合計八人によって運ばれており、何かが室内を明るく照らした。
光源は世論達から見て真後ろ。
振り返ってみると、そこには大きなモニターが何処か二ヶ所を映し出していた。
そして、マイクで拡張された女性の声が室内に響く、
「それでは、今からデモンストレーションという形でルール説明を行います。迷路の難易度は1から25まであり、D組は二十四人のため2から25の難易度となります。数字が大きくなるにつれて難しくなりますが、その分ポイントが高くなります。カウントは『0』から取り、ポイントがより多い方のクラスの勝利です。デモンストレーションでは難易度0を使用します」
そのタイミングで男性研究員がカプセル型のVR機の中へと入り、椅子に座って椅子に備え付けられている装置を付けてカプセルを閉じた。
しばらくすると、映し出されている画面にVR機の椅子の上にいるはずの二人の男性が映し出された。
手には鍵みたいな物が握られている。
「今回のゲームは完全没入型のVRゲーム。今映っているのは仮想空間の映像です。詳しいことは後で。まずはルール説明としましょう」
ざわめきが起きる。
完全没入型のVRゲーム自体が最近の技術なのに、映像を現実に映すレベルにまで技術力が上がっているのだ。
その光景に女性二人はニヤリと笑う。
その笑顔と同じタイミングで、男性二人が迷路の攻略を始めだした。見た感じ閉鎖空間なのだろう。映像にはずっと一本道が続いている。
「これはデモンストレーションのため迷路は一本道。鍵は最初から手に入っていますが、この鍵も難易度によっては探して貰います。それでは画面右側をご覧ください」
指示を受けて画面右側を見てみる。
すると、一人の男性が扉に鍵を差し込んで中へと入っていくところが映し出された。
「鍵が使える扉が一つだけありますので、それを見つけ出し、開ければゴールとなります。そしてここからがこの迷路の重大な鍵となる部分ですので、左側の映像をよくご覧ください」
今度は左の映像を見る。
男性は歩いているだけだが、突如として部屋全体に赤い光が点滅しだし、訪れた揺れにその身を壁へと預けた。
まるで部屋全体が動いているかのような揺れだ。
その光景に数人が感嘆の声をあげる。
「見てわかる通り、ゴールすると相手側に『ペナルティ』が課せられます。今回の場合は『迷路の再構築』です。今の機能はまだ未公開のものですが、安全面や機能面は保証されていますのでご安心ください。ここで改めてルールの確認をします」
モニターが切り替わり、ルールが一覧として見られる画面となった。そのタイミングで後ろのカプセルが一つ開く。中からはゴールした男性が出てきていた。
それを確認したあと、視線を再び画面へと戻す。
一、クリア条件はゴールすること
二、数字が大きいほど、難易度が高い
三、難易度とポイントの高さは等しい
四、ポイントの多いクラスが勝利
五、ゴールをすれば同難易度の相手に『ペナルティ』を課すことができる。
六、競技時間は開始から二時間とする
とにかくクリアしろ。確かに単純明快なルールだ。
だがここで大事になってくるのは、誰をどの難易度に振り分けるか、というところだ。
「痛覚は遮断されていますが、他の感覚は働いています。それにより、プレイ中に精神に異常をきたす場合がありますが、その場合はこちらから強制終了させてもらいます。当然ですがリタイアということになりますのでご注意下さい」
精神に異常きたす。
いくら仮想空間とはいえ、同じ景色を何度も見せられては確かに精神的にくるものがあるかもしれない。
カプセルの上に何かランプみたいなものがあったため、それが精神に異常をきたしたときに光るのだろう。
再びカプセルが開く音が聞こえ振り返ってみると、ゴールした男性がカプセルの横で何かをしており、中からはペナルティを受けていた男性が出てきていた。
「身体能力についてですが、基本的に今の自分と同じと考えてもらっても結構です。なお、ゲーム時間は最長二時間のため、割り振りをする時間も含めて今から三十分ほどトイレ休憩の時間として与えます。トイレはあちら側にありますのでご利用ください。大丈夫という方はこの場にいてもいいのですが、もし惨事が起きてもこちらで対処することはできませんのでご了承下さい。それではどうぞ」
それからデモンストレーションを行った男性研究員二人と、ここまで引率してきていた女性二人は一礼をして部屋から出ていく。
休憩時間となり、流れるようにC組とD組は離れて集まった。
C組の中心には例の双子と東雲達をオセロで圧倒した二人の女子生徒がいる。
D組の中心には当然坂田だ。だが、坂田は作戦や割り振りを決める前にC組に話しかけた。
「おーい! トイレ混むの嫌だから俺らさっき使っても良いかー!?」
確かに、二クラスが同時にトイレの時間を被らせるのは効率的に悪い。そのことを理解しているC組は二つ返事で了承する。
「という訳で、俺らは先にトイレ行っておこう。そうだな……十分後を目処にしよう」
D組は一足先にトイレ休憩。
実験室にトイレがあるというのは何とも想像がしにくいものだが、実験をする前にすぐトイレができるようにということなのだろうか。だとしても、無駄に広かった。
これならC組とトイレの時間が被っても問題なかっただろう。
トイレを済ましたものから、D組の集合場所へと向かう。
途中でCクラスの横を通るが、聞き耳を立てても今回のルールで作戦があるとは思えないため、D組のものはそのまま通りすぎる。
トイレ休憩となってから約十分後。
D組は全員トイレを済まして戻ってきていた。
坂田はC組にトイレを済ませた合図を送り、今度こそ割り振りを決める。
「さて、まずは最高難易度である25をやる人を選ぶわけだけど……俺的には櫻井さんが良いと思う。どうかな」
第二競技から考えれば当然の人選と言えるだろう。
全員が一様に頷く中、二人ほど反対の意を示すものがいた。
二人とも世論も坂田もよく知っている人物だ。
「私は24をやる。25はもっと適任者がいる」
「25は別の適任者がいるだろ」
一人は指名された櫻井。
本人曰く、彼女よりも適任者がいると言う。
そしてもう一人は八乙女だ。
「……俺も考えてはいたが、一応確認のために――その適任者って誰だ?」
坂田の質問に、無言で指を差す櫻井とその人物の背中を叩く八乙女。二人が選んだのは、石田だった。
「行けるか? 石田」
「問題無い」
八乙女だけならともかく、櫻井からの指名となれば全員が納得せざるを得ない。本人も問題ないと言っている。
難易度25は石田となり、24は本人の意思とクラスの総意で櫻井となった。
「それで次は23だけど、誰がいく?」
上から決めていく流れになっていったため、次は23を決めることになる。そしてある意味当然と言えば当然なのだが、全員の視線は――坂田を向いている。
「……俺でいいなら俺が23をやるが、クリアできない可能性もある。それでもいいか?」
坂田の確認に、各々が了解の意を示す。
その後も第二競技の内容から次々と選んでいく。
22は八乙女。21は天沢。20は東雲。19は倉科と分けられていき、世論は本来一桁台をやりたいところだったのだが、オセロの成績から難易度10となった。
下の方は基本的に適当に決められていった。
残り時間は約五分。
そろそろ先程の場所に集まらなければいけない時間だ。
そこで、坂田が一つクラスにお願いをする。
「とりあえず振り分けはこれで終わりだけど、一つだけ言わせてくれ。これは皆で決めた順番だ。だから例えクリアができない人が出ても、リタイアする人が出たとしても絶対にその人を責めないでくれ」
全員が頷く。
これは競技終了後のことを考えての言葉だろう。退学がかかっているこの行事で負けると言うことは、先程のA組のように必然的に犯人探しが行われる。
しかも今回のように誰が原因か分かる競技ではなおさらそういうことが起きる。
坂田はその可能性を予め潰しておいたのだ。
後は集合場所へ移動して待つのみ。
世論が坂田達と喋りながら集合場所で待っていると、C組の方からあからさまに攻撃的な視線を感知した。しかし、反応しなければじきに収まるだろうと踏んで無視をする。
恐らく犯人は愛衣だろう。
そして今視線を感じなくなったということは、継美が止めてくれたといったところだ。
「それじゃあ私についてきて!」
あの女性のうるさい声が聞こえる。
考え事をしていると時間が早く過ぎるもので、視線のことを考えていたら五分が経ってしまっていた。女性が階段を下り始めたため、ゾロゾロと後ろをついていく。
下の階には右側に二十四個、左側に二十五個の完全没入型VR機が置いており、左右の壁には『0』と表示されている。
「それでは各自椅子に座ってください! 椅子に座ったら装置を頭に付けて指示通りに動かし、スタート地点についたらその迷路の『名前』を知ることができるので、スタートする前までによく意味を考えておくように!」
さて、ここでまた一つ問題ができた。
どの媒体がどの難易度なのかが分からないのだ。
説明はされていない。
Cクラスの女性二人は階段側の二台に入ったため、恐らくだがそこが難易度25と24なのだろう。それと同時に石田と櫻井、八乙女が順番に入っていったため、世論の中でも順番が確定した。
どうやって理解したのかは分からないが、とてもありがたいことだ。
そして世論は自分の難易度10の媒体である階段側から十五番目の位置へ向かう。その途中で、見覚えのある背中が突っ立っているのが見えた。
「どうした天沢」
「キャッ! な、なんだ。世論君かぁ。ビックリしたなぁ」
「俺で悪かったな」
何にそんなにビックリしたのか分からないが、かなり女の子な声のオプション付きでリアクションをくれた。
だが、余程驚いたのか少し顔色が悪い気もする。
「大丈夫か? 坂田のが移ったか?」
「え? あ、うん! 見ての通り平気だよ♪ 世論君こそ人の心配するよりも自分の心配した方がいいんじゃない?」
違和感。
初めて天沢と会ったときと同じ感じ。
その場はお互いに激励を飛ばして解散となったが、世論には再び何かが引っ掛かる形となった。
カプセルに向かい、中へ入って椅子に座る――というよりも、寝る。
備え付けてある装置を被ると目の前が真っ暗となって、耳も覆っているために何も聞こえなくなってしまった。するとすぐに耳元で機械音声が流れ始める。
『難易度を設定します。口で難易度を指定してください』
「10で」
『分かりました。それではゲームへと移ります。目を閉じてしばらくお待ち下さい』
指示された通りにやっていくと、世論はいきなり浮遊感を感じた。空を飛んだことがないから分からないが、ジェットコースターで上から落ちるときに感じるフワッというのが継続的に続いている感じだ。
やがて、椅子で寝ていたはずの世論の足に地面を感じるようになった。
『目を開けても大丈夫です。扉が開いたらスタートとなります。それでは迷路のクリアを目指して頑張ってください』
そう言われて、ゆっくりと目を開ける。
ゆっくりと姿が露になっていく部屋は、思ったよりもしっかりとしているものだった。デモンストレーションから考えて、もっと何もないものだと思っていたがそうでもないようだ。
部屋の中を見渡していくと、しっかりと内装が施されている一角に扉を見つける。
その上には、今回行う迷路の名前が書いてあった。
――即ち、『見極めの迷路』と。
◆◆◆
全員がゲームに入ったであろうタイミングで、あのうるさい声を出していた女性が盛大にため息を吐きながら床に座り込んだ。
「ハァァァァァ……本当に疲れた。本来こんなキャラじゃないのに、なんでこんなことしなければいけないのかなぁ……」
さっきまでのキンキンとした声は何処へやら。
女性らしく優しい声色で愚痴を吐いている。
「仕方ないですよ。彼にこのゲームの本筋を最大限見極められないようにするためなのですから」
「全く……この学校の生徒って本当にどうかしてるよ……でも、思ったよりも好青年だったね」
二人が思い出しているのは、ある男子生徒。
話には聞いていたが、予想以上に好青年だったのだ。
「さて、お手並み拝見といきましょうか」
「難易度25は私達でもクリアできないものですからね。是非とも見てみたいものです」
生徒達に期待を寄せてスクリーン見る二人。
そこでいきなりカプセルが開く音が聞こえたことにより、二人とも勢いよく振り返った。
そこにいたのは、まさしく話題に上がった人物。
「すみません。俺はリタイアします」
坂田だった。
新作についてですが、三作品ほど書きました。
二作品目はどれがいいのか、そちらの方の作品で感想をいただけるとありがたいです。




