四つ目のキーホルダー2
「えっとですね、さっきまでジュジュちゃんと話をしていたんですよ。最近友達と遊んだこととか、公園に行ったこととか、しゃべるキーホルダーの話とか……」
ユキが話していると、「あっ」と何かを思い出したように叫んだ。
「これがあなたたちだったんですね!」
「え、今更気づくの?」
「ま、まあいいじゃないですか、細かいことは」
タクのツッコミに、ユキはアハハと笑い流した。
「それで、ジュジュたんは今どうしてるの?」
呆れているタクをよそに、ヒナが尋ねる。
「ジュジュちゃんは今、私のキーホルダーが付いているカバンの近くにいます。マスターが私に見張りをしろって」
「縄で縛られてたりはしないの?」
「はい。私とおしゃべりをしていたからか、連れてこられてから、ずっとおとなしかったですから。特に何もされずに、小さな部屋の椅子に座ってますよ」
「小さな部屋?」
「多分、工場の事務所みたいな所だと思います。いくつか机があって、流し台みたいなところもありますし、古いポットなんかもありました。組の人が昔から使っていたのか、わりときれいに掃除されていますよ」
「へぇ、別荘みたいなものかなぁ」
ヒナがのんきに想像していると、タクが「別荘というよりも隠れ家とか、そういうところでしょ」と突っ込む。
「それで、ユキのマスター以外には誰かいる?」
「うんと、今日来ているのはマスターと組の人が一人ですね。あと、買い出しに一人行ったかなぁ」
それを聞いて、タクたちは若干青ざめた。
「あれ、オギさんの車って、たしか入口に置いてたよね。買い出しに行った人間が戻ってきたらヤバいんじゃない?」
「早く氷点たちに知らせた方がいいんじゃないのか?」
「そうだけど、今からじゃあ間に合いそうにないよ。もう既に建物の中に入ってるかもしれないし」
「うーん、ってことは、そいつが帰ってくる前に、さっさと片付けた方がいいってことか?」
「まあ、それが無難だろうね」
そう言うと、タクは納得したようにうなずいた。
「あ、そうだ。ユキ、マスターはジュジュちゃんを誘拐した理由とか、何か言ってなかったかい?」
「理由、ですか? なんか、上の人から命令されたらしくて、マスターもあんまりやる気が無いみたいなんです。まあでも、いくら命令されたからって、小さい女の子をこんなところに連れてくるなんて、許されないですよね!」
「うん、一応は誘拐がマズイってことは、わかっているみたいだね」
「そ、そりゃ私だって女の子ですから、変なおじさんに連れさらわれたら嫌ですよ!」
「でも、止めはしなかったんだよね?」
「だからキーホルダー状態なのに、止めることなんてできませんって!」
ユキは少しイラついているのか、ほっぺを膨らましている。
「じゃあ、今から僕たちに協力して、ジュジュちゃんを助けるのに協力してくれるよね?」
「そりゃ、できることなら……でも、あなたたちもキーホルダーなのでしょう? どうやって助けるというのですか?」
「僕たちがここに僕たちキーホルダーだけで来ていると思う?」
ユキは「え?」と一瞬思考停止状態になったが、「あ、そうか、そうですよね」と首を縦に振った。
「……ってことは、その、タクさんたちのマスターもここに?」
「もちろん。僕とヒナのマスター、そしてサクのマスターがね。あと、ジュジュちゃんの家の人が一緒に来てる」
「もう中に入っているのですか?」
「もうそろそろ……だと思うけど、どうかな。僕たちが戻るのを待っているかもしれないし」
「中に入るなら気を付けた方がいいですよ。二人とも組では下の方とはいえ、結構喧嘩慣れしてますから」
「なるほど、マスターにも注意するように言っておかないと」
そう言うと、タクはふぅ、と一息ついた。
「あ、ユキたん、その、ユキたんのマスターには、私たちのことは秘密ね。じゃないと、ジュジュたんが殺されちゃうかもしれないから」
ヒナがそう言うと、ユキは「ひぃっ」と声を上げた。
「こ、ここ、殺されるなんて言わないでくださいよ! 私、こんなところで血なんて見たくないですから!」
「うん、だから、ずっとジュジュたんとおしゃべりしててね」
「わ、わかりました」
ユキは怯えながら必死に首を縦に振る。「じゃあ、お願いね」とヒナが言うと、サクとともにタクの所に集まった。
「とりあえず、元に戻ったら、ユキから聞いた情報をマスターに報告しよう。あと、あまり時間がないことも」
「そうだね、急がないと、買い出しから戻ってきた人が、クリスマスパーティー始めるかもしれないからね! そうなったら、何も食べられない私たちは、ただ指をくわえてみているしかなくなるから!」
「ヒナ、まず今は夏だし、それにキーホルダーは指をくわえることはできないよ」
タクは「大丈夫かな」とつぶやきながらため息をついた。
「タク、急ごうぜ。人数が増えたら厄介だ」
「そうだね」
そう言うと、タクはゆっくりと目を閉じた。
「じゃあね、ユキちゃん。また後で」
「うん、ヒナちゃん、待ってるよ」
ヒナはユキに手を振ると、タクと同じようにゆっくり目を閉じた。
「じゃあ行くよ」
慌ててサクも目を閉じると、周囲がだんだん白くなっていく。
「《鍵の平原》、クローズド」




