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あの娘は発電機(She Is Electric Generator)  作者: 枕木悠
終章 セレネード
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終章⑤

 ミアの遺体は錦景女子高校の裏山に埋めた。誰にも見つからない濃い緑で一番近い場所って、錦景女子高校の裏山だった。

 裏山の深いところ。

 それを提案したのは、ハルカだった。

 ここならきっと誰にも邪魔されることなく静かに眠ることが出来るだろうって思った。ミヤビだってきっと一人だとこの場所には辿り着けないと思う。十字架も立てていない。目印は何もないのでハルカのエレクトリック・コンパスで案内してもらわないと絶対にこの場所には来れない。

「ミア、また会いに来るよ」

 ミヤビたち、トワイライト・ローラーズは、山に咲いていた白い花を束ねてミアの上に置いて、その場所を後にした。

 八月十五日の錦景市の夏はとても日差しが強く、暑く、錦景は歪んで見えた。

 トワイライト・ローラーズの四人と、それから死神の四条キョウカは錦景第二ビルにあるファミリィ・レストランのディクシーズに来ていた。高校生の四人はチョコレート・パフェを食べている。キョウカはビールを飲み、煙草を吸っている。

「スクリュウが回転を止めたと言っても、まだ第二世界に繋がる綻びは広がったままだ、つまりまだエネルギアはこちら側に過剰に流れて来ている、綻びを直ちに塞ぐ、という方法はない、地球と宇宙の境界のオゾンホールと同じで回復を待つしかないんだ、まあ、オゾンホールよりは回復は早いだろう、規模もオゾンホールよりは小さいし、そうだな、御崎ミヤビと森村ハルカが卒業する頃には元に戻っているんじゃないかな、とにかくそれまではこの錦景市のエネルギアは過剰になる、幽霊が確かな形をもって出る状況はしばらく続くだろう」

 キョウカは話し終えてから煙を吐いた。同じく死神のセンカは普通の夏の衣装を着ていたのに、キョウカは相変わらずこの季節に反抗的なマフラとコートだった。見ているこっちが暑い、とミヤビは思った。

「それってもしかして、」ニシキがうんざりした風に言う。「まだ私たちにゴースト・バスタを続けろってそういうことですか?」

「話が早いな、」キョウカはニッコリと微笑む。「死神として幽霊に絡みついたエネルギアは回収して第二世界に戻したい」

「げぇ」ニシキは露骨に嫌な顔をする。

「その代わり、ちゃんと報酬は出る、パイザ・インダストリィの大森はきちんと状況を把握してくれた、何もかも今まで通りだ、今まで通り十万円だ、もちろん、やってくれるな」

「ええ、もちろん、」ハルカは左右に座るニシキとアイナの肩を抱いて大きく頷いた。「私たち、トワイライト・ローラーズ、幽霊退治、引き受けますっ」

「もぉ、」ニシキは頬を膨らませながらも頷く。「まあ、いいけどさぁ」

「十万円は魅力的ですものね、」アイナが現金な顔をして言う。「もちろんやらせて頂きますよ」

「ミヤビは?」ハルカはキョウカの隣に座る、ミヤビの顔をまっすぐに見た。

「ハルカがそう言うんだったらさ、」ミヤビは頬杖付いて言って笑う。「しょうがねぇなぁ」

「そうだ、しょうがいなことだ、」死神は愉快そうに口を大きく開けて笑う。「この状況をなんとか出来る魔女は、紛れもなく、お前たち四人しかいないんだからなっ、あはははははっ」

 錦景市は夜の七時。

 地下街から階段を上がりロータリーに出ると、空は晴れているのに地面は濡れていた。水たまりもある。夏の夜の七時はまだ太陽が顔を出している。夕立の後のようだ。雲は遠くに微かに見えるだけ。

 錦景山の方角に虹が見えた。

 絵に描いたように緩やかなアーチの七色は鮮明だった。

「おお、虹だ」アイナが目元に手をかざし言う。

「雨のおかげね」ハルカが目を細めて虹を見て言った。

「あれだけ綺麗な虹を見たら、」ニシキが両手を軽く広げながら言った。「絵を描きたくなるわね、ミャアちゃんも、そう思わない?」

 そしていつしか虹は錦景に消えて。

 徐々に黄昏の紫色に染まりゆく。

 私たちの色。

 私たちと、ミアの色。

 ミアの色は私の中にある。

 圧倒的な紫色は。

 いつまでもこの胸に。


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