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ドミノの時代

 レとファとラとシの音が出ない世の中になって、どれくらい経つだろう。

 はじめはレの音だった。それはほんのちょっとした変化で。耳聡い幾人かが、何だか不便になったな、と。そう思うくらいのものだった。

 そのうちファの音を耳にしなくなり。ラもシも次々閉じられて。

 気付いてみればいつの間にやら。いくら耳を澄ましてみても、ドとミとソの音しか聞こえてこない。

 昔は一冊にまとまっていた楽譜も今では三分冊され、なのにどこを開いてみても、同じに見える。目に留まるのは二つの記号。

「あなたはこれをしてはいけない」

「あなたはこうしなければいけない」

 三音しか発音できない人々の言葉は平坦になり、聞き取れず、すれ違い、些細なことでの殴り合いがはじまる。

 耐えられなくなった一人が、ぱたりと倒れる。それを目にした次の一人が、ぱたり。

 ぱたりぱたりと倒れていって。最後はどこに、たどり着くのか。

 人々はただ順番を待ち、列を成す。屍を誰も、越えてはいかない。


(完)

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