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騎士志望の伯爵令嬢ですが、小さな紳士の公爵令息のもとで恋と仕事に邁進します!  作者: 風見ゆうみ


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48  間違えたくないんです!

「心が綺麗であれば見た目にも自然と現れるが」と前置きしてから、ルイス様は続ける。


「今までのフィリアは可愛い系だったが、最近は綺麗になった。それは俺だけじゃなくて、他の者もそう思ってる。恋をしてるから、と知っているのは、俺やお前の家族だけだ。キーファはお前が綺麗になっていることに気付いてはいるが、誰に恋をしているかはわかっていない」

「えっ? えっ?」


 一気に恥ずかしさが襲ってきて、熱くなった頬を押さえながら尋ねる。


「わ、私、そんなにわかりやすい態度を取ってますか?」

「俺ならわかる。フィリアと知り合ってから、まだ1年ほどだ。期間は短いが、一緒にいる時間は長いからな」


 胸を張って言うルイス様が可愛らしい。そんな彼に質問してみる。


「……やっぱり、やめたほうがいいですよね?」

「何がだ?」

「アットン卿のことです。たぶん、好きになったきっかけって、池に落ちたのを助けてもらった時なんだと思うんです。もちろん、思ったよりも良い奴だったということもありますけど、きっかけがそれじゃ違うんじゃないかなと……」


 この気持ちは吊り橋効果なのではないかとゔ疑ってしまう。


「危ないところを助けてくれたから、キーファがよく見えて好きになってしまったんじゃないかと言いたいのか?」

「それは、まあ、そうです」


 頷くと、ルイス様は苦笑しながら頭を振る。


「きっと、それだけじゃないと思うぞ」

「……どうしてそう思うんですか?」


 自信ありげに答えたルイス様に聞き返す。すると、彼は胸の前で腕を組んで難しい顔をする。


「まあ、それは俺がどうこう言う話でもないと思う。それに、助けてもらったから好きになることの何が駄目なんだ?」

「駄目に決まってますよ! 今度こそ間違えたくないんです! 恋愛で悲しむのはもう嫌なんです!」


 ルイス様に向かって声を荒らげてしまった。すぐに冷静に戻った私は、慌てて立ち上がって頭を下げる。


「申し訳ございませんでした」

「気にするな。誰だって心が乱れる時はある。もちろん、人前では我慢しろよ? 一応、俺はお前の主人なのだからな」

「今後、気を付けます」

「そうしてくれ。……というか、今の発言よりも酷いことをフィリアはいつも言っている気がするのだが……、改めて聞く。細かいことを言うのはここまでにして、どうして間違えたらいけないんだ?」


 ルイス様は納得いかないのか不思議そうだ。


「だ、だって、一度、婚約破棄されてるんですよ? これ以上間違えたら、私は立ち直れないような気がして……」

「間違いなんかじゃない」

「……え?」

「自分の好きになった相手だろう? 間違いだなんて言うな」


 ルイス様は真剣な表情で続ける。


「過去の恋愛に対して悔いることは必要かもしれないが、付き合ってもいない相手のことを最初から間違いと疑うなんて、相手に失礼だろう。婚約破棄した男のことだって、元々は婚約者だったんだし、それでも、好きになったんだろう?」

「……はい」

「お前にとって、彼がのどこかが良いと思えたから、そんな気持ちになったんだ。それが間違いだったと思うのは、お前の自由だが、キーファについては、まだ始まってもいないだろう。初めから、そんなに尻込みするな。自分の目を信じろ」

「自分の目を信じて失敗ばかりしてますので……」

「辛い思いをした分、人を見る目も養われているはずだ。俺もそうだからな!」


 ルイス様が胸を張って得意げに言うので、笑ってうなずく。


「そうですね。ルイス様の場合は、相手に自分を好きになってもらえるかというだけですね」

「そ、それは努力している! それよりもだな。別に好きな人がいようとも、付き合っている相手がいないのなら、新しい出会いを探してもいいんだ。もちろん、俺だってお前にこれ以上、傷付いて欲しくはないが、同窓会に行って、昔好きだった人に会うのは、キーファへの気持ちを確認できる、いい機会かもしれないぞ」

「……ありがとうございます、ルイス様」


 モヤモヤしていた気持ちが一気にスッキリした気がして、私はその日の晩、同窓会に出席するという返事を返したのだった。



 その日の晩、また私は、あの少年の夢を見た。


『約束はちゃんと守ってよ』


 アットンによく似た少年は、今のアットンを思い出させるような笑顔で、そう言った。




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