2話「病弱であっても大切にされ」
私はそこそこ裕福な家の娘ローズ・リベリアとして生を受けた。両親は第一子である私を大切に育ててくれた。ローズは少しばかり身体が弱くて風邪をわりとよく引くのだけれど、母親はそのたびに看病してくれて。おかげで今回の私は穏やかに育つことができた。
――そして十九歳にして婚約者ができる。
「ローズ、紅茶を買ってきたよ!」
「ありがとうございます、ロロさん」
婚約者である彼ロロ・ガーディは二歳年上の心優しい男性だ。
「先日は申し訳ありませんでした。急な風邪で約束を駄目にしてしまい……本当に申し訳なかったと思っています」
「いいよいいよ! 君の体調が一番重要なことだからね!」
「……いつも本当にありがとうございます」
「じゃあさじゃあさ! 早速飲もうよ! ローズと一緒にお茶するのをずーっと楽しみにしてたんだ」
ロロとならずっと幸せでいられる。私は迷いなくそう信じている。
なぜなら彼はとても善良な人だから。
どんな時も優しくて。
こちらが約束を守れなくても怒らなくて。
そんな素敵なロロだから、結ばれて不幸になんてなるはずもない。
「あ、ごめん。ちょっとだけ出てきてもいいかな」
「外へですか?」
「うん! そうそう! 急で悪いんだけど」
「もちろん大丈夫ですよ。いつも迷惑を掛けてしまっているのはこちらですし。気を遣わずどうぞ」
「じゃあごめんだけどちょっと待っててね!」
「はい」
「冷めちゃったら惜しいから先に飲んでていいよ」
「ありがとうございます、分かりました」
ロロが部屋から出ていくのを見送って、目の前に置かれたティーカップへと口づけた。落ち着いた熱が唇に伝わる。そして数秒後柔らかな良い香りが鼻をくすぐった。少々濃いめの花のような匂いである。何だか心地よい感じがする香り。そして嗅いでいると心なしか眠くなってくるような香りでもある。
(あれ……何だろう、この、感じ……)
紅茶を飲んでから数分が経った頃、急激な眠気に襲われて、私はそのまま深い眠りに落ちてしまったのだった。
ローズ・リベリアは亡くなった。
というのもロロが買ってきてくれた紅茶が毒入りのものだったのだ。
しかも事故的な毒の混入ではなく。
ローズとの婚約を破棄したかったロロが意図して毒入りの紅茶を用意したというのが答えであった。
単なる不幸ではなかった。
他に結婚したい女性がいたロロがローズを意図的に毒殺したのだ。
彼はローズを裏切っていた。婚約している身で他の女性に手を出していたのだ。しかも。それだけでも罪だというのに、それだけではとどまらず、邪魔だったローズを身勝手な理由で殺めた。
ただ、その後ロロは罰を受け、幸せにはなれなかったようだ。
ロロが浮気していた相手女性はちょっとした出来事から魔女であるという疑いをかけられ理不尽に処刑された。
そしてそれにより心を病んだロロは正気を失い極端に幼児退行してしまい路上で通行人に噛み付いたために逮捕された。
……一応、ローズを傷つけた者たちには天罰が下ったようである。




