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帰郷

 明里は貴文達と別れ、地元の知り合いを見つけしだい車に乗せてもらいここを離れるつもりだったが、貴文達が離れるのを待っていたかのように様々な人々に捕まりなかなか離れられずにいた。


 「天生峠のワルキューレ、握手して下さい!」

 「一緒に写真をお願いします」

 「戦いのコツを教えて下さい」


 等々、明里は最初は丁寧に対応をしていたがあまりに数が多いのとさやかの事が気になり、威圧して逃げようかと考えていた所に双子が現れ明里と群衆の間に割ってはいった。


 「「はいはい、それまで、それまでよ!朝から敵中突破をしてきて疲れている上に、小さな子供連れの人を捕まえて自分勝手に要求を言うのは、常識ある行動と言えるのかしら?」」


 双子が群衆に睨みを効かせると、人々は少々バツが悪そうになり押し黙った。

 そこにもう一人長身の青年が現れ、人々に声をかけた。


 「みなさん、休戦までまだまだ時間はあります。銀河連盟は一日に一つの自治体しか攻めない、とは言っていません。みなさんも見たアシガロイドの大軍が、ここに攻めてこないとも限らない中で騒ぎすぎではないでしょうか?それに県からは順次、引き上げるように指示が出ています。今はまだ秩序ある行動を取らなければいけないと思います」


 青年の言葉に人々は明里に謝罪の言葉を口にすると、それぞれする事をすべく散っていった。


 「三人共助かったわ。河合君も久しぶりね」


 河合と呼ばれた男は、少し照れくさそうに笑うと明里に挨拶をした。


 「お久しぶりです太田先輩、って今は牛丸でしたよね?」

 「そうよ。そしてこの子が娘のさやか。しかし、河合君かっこよくなったわね~。高校の時もそれなりにだったけど、今とじゃ比べ物にならないわ。まぁ私の好みではないけど」

 「先輩・・・相変わらずですね。先輩の好みってどういう人なんですか?」

 「ん?今の旦那に決まってるじゃない」

 「「「ですよね~」」」


 三人の声がハモったところで、明里が河合に質問した。


 「二人を乗せてきたのは河合君?席が空いてたら私達も乗せてほしいんだけど、どう?」

 「大丈夫ですよ。家まで送ります。それと後日でいいので時間を作ってもらえますか?今、牛丸先輩に関係してる人達は、騒ぎにならないようにと近づかないようにしてまして・・・できれば経験談なんかを、みんなに聞かせてもらえると助かります」

 「そうねぇ、ここでまた人だかりが出来ると他の人も寄ってきちゃうし、来てくれた人達にもお礼が言いたいからいいわよ」

 「それじゃその事をみんなに伝えてくるので、ここで少し待ってて下さい。遠藤さん達しっかり先輩をガードしておいてね」


 河合はそう言うと明里から離れていった。


 「ねぇ、ひなちゃん。どれくらいの人達がこの救出部隊に集まってくれたのかしら?」

 「正確な人数は解りません。私達も昨日電話をもらって、その時に明里先輩が白川村にいて脱出してくる事を知りました。それで参加を決めたので、いろんな人達が知り合いを助けようと集まったんだと思います」

 「ここ1、2時間で集まって来たのは、テレビでの知事の呼びかけに答えた人や明里先輩の活躍を見た人達で、そういう人も多いですよ」


 陽向に続いて陽和が答えた。


 「知事の呼びかけ?」

 「はい。明里先輩達が敵中突破を始めてから、明里先輩の映像と一緒に知事がテレビで救出を手助けしてほしいと呼びかけました」

 「敵中突破を始めてからなのは、事前に敵に情報を与える必要はないって事らしいです。そう機動隊の人が言ってましたけど、携帯電話の電波を傍受されてたら意味がない事だけどとも言ってました」

 「「明里先輩はどう思います?」」


 双子の問いかけに明里は暫く考えたが答えは出なかった。


 「どうなのかしら?脱出の情報は知ってても知らないふりなのかもしれないしわ。銀河連盟は自分達が不利になる条件を、自らに科しているもの。それに私達の道中の敵の配置も、元からなのか脱出を阻止する為の配置だったのかはよく解らないし」

 「「そうですかぁ。解らない事だらけですね」」


 双子はその後さやかと遊び始め、明里は人々の様子を眺めていてある事に気が付いた。

 双子に声をかけようとしたところで河合が戻って来た。


 「お待たせしました。さあ帰りましょう」

 「河合君ちょっと待って。見てると全員が引き上げようとしてるみたいなんだけど・・・」

 「はい、その通りです。念の為、機動隊が最後に引き上げます」

 「郡上市は放棄する事になったの?」

 「え~と、完全には放棄はしません。ただ、戦力は隣りの下呂市に重点的に割り振るようです。あちらの方が高山市街には近いですから。ただその戦力もまだ、編制中という有様みたいです。集まっても烏合の衆じゃ役に立ちませんし、その人集めもまだまだこれからという感じですね」


 明里は河合の言葉に更に聞きたい事が出てきたが、とりあえずは後で聞くことにした。


 「そうなの。詳しくは車の中で聞くわ。それじゃあ帰りましょうか」


 明里達は河合の車に乗り込むと、他の車に続いてひるがの高原から東海北陸自動車道にのり南下を始めた。


 「けっこう混んでるわね」

 「引き上げの車も多いですけど、参加しようと向かってきた車もUターンさせてますから」

 「ふ~ん。それで郡上市はどうなるの?」


 明里の質問に河合は困ったように答えた。


 「スキー場での雑談で聞いただけなので、本当かどうかは解らないんですが、北部は放棄して郡上八幡辺りまで下がるみたいです。市境で侵攻を防ぐつもりがないのは確かみたいです」

 「市境から郡上八幡まで30㎞ぐらいかな?何だかもったいないわね。私には市境から徐々に後退して、休戦時間まで粘るほうが南部でいきなり防衛戦をするより確実に思えるけど?」

 「遅滞戦闘ですか?それをやれるだけの指揮官も、練度の高い戦力も足りませんよ。普通の市民ばかりなんですから」


 河合のその答えに明里は疑問をもった。


 「ゴルフ場の南側の戦いはちゃんとやれてたんでしょ?」

 「それは陸上自衛隊の人が指揮を執ってましたから。それを自分達のような武道経験者が力押しでフォローして何とかって感じです。自衛隊も無事な人はそんなに多くないようですし・・・」

 「そうなんだ。じゃあ県としては郡上市は放棄前提で守って、下呂市から国道41号線を北上して高山市役所まで攻めるつもりなのね」

 「県から正式な話が出てないので、まだ噂の段階ですよ。ただ今日会った機動隊の人達は、下呂市に移動の命令が出てるようでした」


 二人の会話に双子が割り込んだ。


 「「でも河合先輩も他の人達も、地元にもどるんですよね?攻めるような戦力はあるんですか?」」

 「その募集が始まったのが、さっきだからねぇ。志願者だけでどこまで集まるか・・・」

 「それじゃあいきなり明日、高山市を攻めるっていうのはないですね~」

 「みんなで戦わなきゃいけない状況で、志願者を集めるって何だか変です」


 河合と双子の会話に明里は、そんな状況でよく救出部隊に人が集まったものだと感心した。


 「救出部隊に人が集まったのは、逃げ場がなくなった家族や友人を助けたい人が周りに声かけしたのもあったし、牛丸先輩の映像の効果も大きかったからねぇ。まだ逃げれる市町村がある状態では志願者を募るしかないし、それに戦いを強制はできないよ」

 「「岐阜県は封鎖されてるんですよ!逃げ場なんてないじゃないですか!!それに戦いは連盟に強制されてるんですよ!!」」

 「いや、解ってるよ。俺は充分解ってる。ただ、直接危険になるまで動かない人や他力本願な考えの人も多いだろなぁとは思う。普通の生活をしていた人達が、いきなり戦えって言われても実感がないだろ?意識が変わるまで時間がかかるかもね」


 河合の言葉に明里は頷いた。


 「そうね。私達は身の危険を肌で感じてたからみんな戦ったけど、離れた所に住んでれば実感はないかもね。でも残っている市町村って30ちょっとぐらいかしら?銀河連盟が一日に一つずつ攻略していったとしても、多くの時間が私達に残されてるわけでもないのに・・・県は下呂市の維持にそこまで固執しなかもしれないわね」

 「牛丸先輩はどうしてそう思うんですか?」

 「郡上市と下呂市が敵の手に落ちれば、一気に隣接する市町村が増えて嫌でも危機感を持つでしょうから。でも下呂市が落ちると、敵のボスには手が届きずらくなるわね。あの知事さんどうするつもりかしら?」

 「「どうするつもりなんでしょうね?」」

 「さあ?」


 少なくともこの車内にその答えを知っている者はいなかった。


 明里達を乗せた車は東海北陸自動車道を岐阜各務原インターで降り、岐阜市内に向かった。

 明里は車内から街の様子を見ていた。そして見かける人々の顔には不安は見て取れるが、戦いを前にした緊張感のような物を感じる事はなかった。



 「河合君、ここでいいわ。ありがとね。ほら、さやかもお礼を言いなさい」

 「河合のお兄ちゃんありがとうございます!ひなたお姉ちゃんとひよりお姉ちゃんもまたね~」

 「さやかちゃん、ちゃんとお礼が言えてえらいね~。それじゃ牛丸先輩、また連絡します」

 「「さやかちゃん、またね~。明里先輩、次は絶対に一緒に戦いますからーーー!!」」


 明里とさやかは三人と別れ、岐阜市内にある明里の実家の玄関前に立っていた。

 ゴールデンウィークの最初に夫の智行と同じようにここに立っていたのが、随分昔のように明里は感じていた。


 「お父さん、お母さんただいま~」

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