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牧戸交差点制圧戦

 忠良達が進み始めるのに合わせるかのように、アシガロイド達も忠良達に向かって来た。

 両者は急速に接近し激突した。


 「ぐわぁ」


 叫びとも呻きともとれない声が複数あがった。


 忠良は目の前のアシガロイドを斬り捨てながら、周囲を確認した。

 何人かが倒され、それをアシガロイドが連れ去ろうとしていた。しかし、忠良は自分に群がるアシガロイドを捌くのに手を取られ、駆け寄る事もできない。


 ジョージが助けに入ろうとするが、それより早く人は連れ去られ、ならばと人を連れ去る為に乱れた敵の戦列を突き崩そうとしたが、これも数で埋められた。


 「くそ!数が多い」


 忠良は悪態をつくと周りに向かって声をかけた。


 「いいか!孤立しないように気を付けろ。一体一体は強くないぞ!それに敵は無限にいるわけじゃない。焦らずに落ち着いて倒すんだ」


 忠良の声は不思議と喧騒の中でもよく通り、また人を落ち着かせる効果があるようだった。

 敵の数に及び腰になっていた者達や、戦いの喧騒に自分を見失いそうになっていた者達は、忠良の声で覚悟や落ち着きを取り戻した。


 しかし倒しても倒しても空いた所は後続のアシガロイドが埋める為、忠良達はなかなか前に進めずにいた。


 「このままじゃ埒が明かん!ジョージ、仁志さん来てくれ。三人で強引に奴らに割り込むぞ!!貴文、フォローしてくれ!」


 忠良の呼びかけにジョージと仁志が集まり、貴文はその三人をフォローする為に後続の配置の手直しをして、自分自身は指揮をしやすいように三人の少し後ろについた。



 忠良を先頭に三人は敵を突き崩しにかかった。

 忠良は縦横無尽に剣を振るい、傍から見れば孫がいる歳とは思えない精強ぶりを発揮した。

 ジョージと仁志は忠良が自由に剣を振るえるように少し距離をとり、忠良を孤立させようとしてくるアシガロイドを排除していった。

 そして三人が開けた傷口に貴文が人を送り込み、傷口を広げることに成功した。


 切り裂かれた敵の前衛は、貴文の指示で分断、孤立させられ殲滅されていった。


 忠良達は交差点の手前まで、戦線を押し込む事に成功した。


 「家の中にアシガロイドがいないか確認して下さい!」


 貴文が指揮を執っていると、村役場の後輩の女性が声をかけた。


 「貴文さん、村長から連絡がありました。アシガロイドが村に侵攻を始めました」


 貴文は一瞬、後輩に顔を向けると、すぐに厳しい表情で戦場に視線を戻した。


 「村長は他に何か言ってましたか?」

 「出来るだけ粘って敵を引き付けるから、無事の突破を祈る。と・・・」

 「そうですか・・・開戦から約二時間後に侵攻だと、神岡鉱山跡が陥落したのかもしれませんね。これで益々、進むしかなくなりました。引き続き情報収集と県庁との連絡もお願いします」


 その時、忠良達がいる先頭辺りを起点に、騒めきがさざ波のように広がった。



 忠良達が交差点手前から更に敵の集団を斬り開こうと進むと、唐突にアシガロイドの集団が途切れた。


 「おっと」


 いきなり斬るべき相手がいなくなった忠良は、一瞬、態勢を崩しかけたがすぐに持ち直し、開けた視界の先を見て不敵に笑った。

 忠良の目線の先には、交差点の中央で待ち構えている5体の赤い鎧武者タイプのアシガロイドがいた。


 忠良達と戦っていたアシガロイド達は後退を始め、赤武者の後ろの集団に合流した。



 「忠良さん、赤武者タイプだな。どうする?」


 仁志が忠良の隣りに並び問いかけた。


 「そうだなぁ。噂ばかりで初手合わせだから、一騎討ちで実力をみてみたいんだが、そういう訳にはいかんだろうなぁ」

 「イッキウチの状態にはモチコメルかもデス。一体はヒキウケマス」


 ジョージが会話に加わり提案した。

 その提案に仁志が額を押さえた。


 「そうなると一体は俺か・・・ハァ、忠良さんと友達になったばっかりに」

 「そう言うなよ。どうせ倒さなきゃいけない相手なんだ。仁志さんを中心に数人がかりでよろしく!」

 「敵は待ち構えたまま動きませんね。もう一体は僕が受け持ちますよ。強い敵は分散させて各個撃破したほうがいいでしょうから」


 先頭にやって来た貴文が、三人の横に並び言った。


 「もう一体は、数人がかりで防御に徹してもらって時間を稼いでもらいましょう。どうせ後ろの通常タイプも動くでしょうから、他の者で防がなければいけませんし。これで手に負えないほど強かったら、犠牲を無視して倒すしかなくなるので、みなさんよろしくお願いします」


 貴文はここで言葉を切り、振り返り声を張り上げた。


 「村に敵が侵攻を始めたと連絡がありました。最後尾に敵が迫る前に、郡上市へ辿り着かなけらばなりません。今一度気合いを入れなおして下さい!ここで負けるわけにはいきません!!」

 「「「オーーーーー!!」」」


 その場にいる全員が気勢を上げた。


 「それじゃあ行くか」


 忠良はそう言うと、散歩に行くような気軽さで歩みだした。

 その動きにつられるように他の者達も動き出し、赤武者も五体揃って進み始めた。


 忠良を追い抜くようにジョージと貴文が進み、両端の赤武者を剣で挑発して注意を引くとそのまま忠良達から離れていった。


 「仁志さんにそれから他の者も倒そうと思うなよ。時間を稼げば、俺か他の二人が手助けに向かう。生き残れよ!!」 


 忠良のその言葉を合図にしたかのように、赤武者の後ろにいた通常タイプのアシガロイドも動き出した。

 通常タイプは赤武者と戦っている者を包囲するように動いた為、それを防ごうとする人類側とそこかしこで戦闘が始まった。



 忠良は赤武者の下段からの切り上げを剣で受け止めた時に、自分の身体が一瞬浮いたのを感じた。


 「単純な力比べだと負けるな。それに動きも速い。だが・・・」


 忠良は二合ほど打ち合ってから敵の攻撃をいなして、赤武者のバランスを崩すと武器を持っている腕を切断し、そのまま胴を薙ぎ払った。


 「剣技と経験は俺のほうが上だったな・・・あと剣の性能も」


 忠良が赤武者を倒すのに掛かった時間はわずかであったが、周りを見ると仁志は左腕を力なく垂れ下げ、共に赤武者に当たっていた顔ぶれも変わっていた。もう一体は足止めが上手くいかず、人類側の戦列を切り裂こうとしていた。


 忠良は戦列を切り裂こうとしていた赤武者を背後から襲ったが、反応されて初撃はかわされてしまった。


 「癖が一緒なんだよ!!」


 しかし二撃目には赤武者の肩をとらえ、斬り捨てた。

 そしてすぐさま取って返し、仁志の援護に入った。


 忠良が赤武者に斬りかかり、赤武者の意識がそちらに移った瞬間に仁志が渾身の突きを放った。

 仁志の突きは赤武者の胸を貫通して、赤武者は動かなくなった。


 「忠良さん、助かったよ。並大抵の腕じゃ、奴の注意を引くことも出来なくてヤバかった」

 「左腕は大丈夫か?」

 「敵の武器がかすってね。噂じゃ一時間で元通りらしいし、利き腕じゃないから何とかなるだろ」



 二人が残り2体の赤武者がどうなったかと見れば、ジョージの足元には赤武者の残骸が転がり周りの通常タイプを相手にしていた。

 貴文の方はと見れば、丁度、赤武者を頭から両断した所だった。


 「・・・貴文君って強かったんだな」


 仁志の呟きに、忠良が周りのアシガロイドの相手をしながら答えた。


 「貴文が昔好きだった子が滅法強くて、その子より強くなって振り向かせる、と一生懸命に練習してたからな」

 「その女の子って、あか「おっと、それ以上言わないのが男同士の情けってもんだぜ」・・・そうだな」


 そんな会話をしてる二人の下へ、貴文が何か周りを確認しながら走り寄った。


 「仁志さん、何ニヤニヤしてるんですか?」

 「いや、別に~」

 「まぁいいや。それより赤武者を倒してから、敵の連携が悪くなってます。一気に畳みかけましょう!」


 貴文が言った通り、まだアシガロイドの数は多いが組織だった動きはなくなっていた。

 忠良達先頭集団は、次々をアシガロイドに斬りかかり倒していった。アシガロイド達は今までの様に、個々の戦闘力の差を数で補おうとする動きも鈍く、中には棒立ちのまま簡単に斬られる個体もあった。


 しかしアシガロイド達は撤退もしない為、忠良達は牧戸交差点とその集落にいる全てのアシガロイドを破壊するのに時間がかかった。


 貴文達人類側が牧戸交差点の制圧を完了したのは、開戦から3時間後の午前11時であった。


 「忠良サン、オツカレサマデス」

 「おう!ジョージもお疲れ。強いだろうとは思っていたけど、かなりやるね」

 「ワタシ、アメリカのフェンシングの大会でイイトコまでイクネ。軍でも鍛えられタネ」


 話している二人の所に、貴文と仁志が近づいてきた。


 「まだ終わってませんよ。足止めを喰らった後続は不安になってるでしょうし、すぐに移動を始めます。忠良さん、交差点の維持をお願いします」

 「解った。貴文とジョージも先頭を頼むぞ!!」




 貴文とジョージ達先頭が先に進み後続も交差点を通過し始めた頃、国道158号線を見張っていた者から忠良に報告が上がった。


 「忠良さん!敵の集団がこっちに来る。赤武者が2体に通常タイプはいっぱいだ」

 「よーーーし!少しは休憩も取れたし全員、水分補給も済ませたな。交差点を守りぬくぞ!!」

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